2025年の法改正により、建築確認における「4号特例」が縮小されました。本記事では、制度の概要から縮小の背景、建設業者が受ける影響とその対策までを詳しく解説します。
2025年の法改正によって、これまで小規模建築物に適用されてきた「4号特例」が大きく見直されました。この記事では、制度縮小の理由や業務上の変化、今後必要となる対応策を建設業者向けに紹介します。
4号特例とは?
建築業界において「4号特例」とは、建築基準法第6条第1項第4号に基づく制度であり、小規模な建築物に対する建築確認申請の一部審査を省略する特例措置です。この制度は、1983年に導入され、特定の条件を満たす建築物に対して適用されてきました。
4号特例の適用により、省略される審査項目には以下のようなものがあります。
- ・建築設備の構造強度
- ・居室の採光
- ・換気設備の技術基準
- ・地階における住宅等の居室
- ・電気設備
- ・廊下、天井、床高、除湿、遮音など
また、構造計算書の提出が不要とされるため、設計者の負担軽減や申請手続きの簡略化が図られています。
このように、4号特例は小規模建築物に対する建築確認申請の一部審査を省略することで、手続きの効率化を図る制度です。しかし、建築士の責任が増すことから、適切な設計と施工管理が不可欠となります。
4号特例の対象となる建築物
4号特例が適用される建築物(通称「4号建築物」)は、以下の条件を満たすものとされています
- ・木造建築物
2階建て以下、延べ面積500平方メートル以下、高さ13メートル以下または軒高9メートル以下 - ・非木造建築物
平屋建て、延べ面積200平方メートル以下
これらの条件を満たす建築物については、建築確認申請時における構造耐力関係規定等の審査が省略されることとなっています。
建築士の責任と注意点
4号特例の適用においては、建築士が設計を行い、工事監理者が設計図書通りに施工されたことを確認することが前提となっています。省略された審査項目についても、建築基準法の規定を遵守した設計・施工が求められます。そのため、建築士には高い専門性と倫理観が求められる制度であると言えるでしょう。
4号特例の目的
建築基準法における「4号特例」は、建築確認手続きの簡素化を通じて、住宅建築の迅速化と設計の自由度を高めることを目的とした制度です。
まず前提として、建築確認申請は建物を建てる際に法令に適合しているかを行政が審査する仕組みですが、小規模建築物まで一律に厳格な審査を行うと、確認業務の負担が行政にも設計者にも大きくのしかかります。そうした背景から、1983年の法改正で「4号特例」が設けられました。
この制度の狙いは、行政側の審査負担を軽減しつつ、建築士の責任のもとで設計が適切に進められる環境を整備することにあります。特に、戸建て住宅の設計・施工を迅速に行いたい現場にとっては、大きなメリットとなる仕組みだったのです。
たとえば、4号建築物に該当する木造2階建ての戸建て住宅であれば、構造や採光など一部の審査が省略されるため、確認済証の取得までの期間が短縮され、工期全体にも余裕が生まれます。その分、設計者は構造や設備に関して自律的に設計を行い、法令遵守の責任を負うことになります。
しかしこれは裏を返せば、制度の成否は設計者の専門性や倫理観に大きく依存しているということでもあります。4号特例は単なる「手続きの簡略化」ではなく、専門職への信頼を前提とした自己責任型の運用であるという点が制度の根幹です。
このように、4号特例の導入目的は、合理的な業務分担を進め、行政リソースを適切に集中させながらも、現場の自由度とスピードを確保することにありました。2025年の見直しに向けては、この本来の目的を再認識することが重要だといえるでしょう。
4号特例縮小の背景
2025年4月に施行される建築基準法の改正により、「4号特例」が大幅に縮小されました。この見直しの背景には、住宅の省エネルギー化の推進と構造安全性の確保という2つの重要な課題があります。
まず、4号特例縮小の主な背景として、建築物省エネ法の改正が挙げられます。2025年4月から、原則としてすべての新築住宅に省エネルギー基準への適合が義務付けられました。しかし、従来の4号特例では、建築確認申請時に省エネ基準への適合性が審査されないため、制度との整合性が取れない状況となっていました。
さらに、省エネルギー性能を高めるためには、断熱材の追加や高効率な設備の導入が必要となり、結果として建物の重量が増加します。この重量増加に対応するためには、構造的な強度の確保が不可欠であり、従来の4号特例の枠組みでは十分な安全性を担保できないとの懸念が生じていました。
省エネ基準の義務化と制度の整合性
まず、4号特例縮小の主な背景として、建築物省エネ法の改正が挙げられます。2025年4月から、原則としてすべての新築住宅に省エネルギー基準への適合が義務付けられました。しかし、従来の4号特例では、建築確認申請時に省エネ基準への適合性が審査されないため、制度との整合性が取れない状況となっていました。このため、特例の見直しが必要とされました。
さらに、省エネルギー性能を高めるためには、断熱材の追加や高効率な設備の導入が必要となり、結果として建物の重量が増加します。この重量増加に対応するためには、構造的な強度の確保が不可欠であり、従来の4号特例の枠組みでは十分な安全性を担保できないとの懸念が生じていました。
自然災害への備えと構造安全性の強化
近年、地震や台風などの自然災害が頻発しており、住宅の耐震性や耐久性に対する関心が高まっています。従来の4号特例では、構造計算の提出が省略されるため、複雑な形状や重量のある屋根を持つ建物など、構造的に脆弱な住宅が建てられる可能性が指摘されていました。このような背景から、建築物の安全性を確保するために、構造審査の強化が求められるようになりました。
また、過去の建築物の構造偽装問題などを踏まえ、建築確認・検査体制の強化が求められています。このため、小規模な建築物についても、より詳細な審査を行う必要性があるとの共通認識が形成されてきました。
消費者の品質要求と制度の信頼性向上
消費者の住宅に対する品質要求が高まる中で、構造的な安全性をより明確に担保できる仕組みを構築する必要が生じてきました。これまで建築士に一任されてきた構造や防火に関する部分が、しっかりと審査されることで、住宅の安全性の向上にもつながります。このような背景を踏まえ、国土交通省は、建築物の安全性と省エネルギー性能の向上を図るため、4号特例の縮小を決定しました。
4号特例の縮小は、省エネルギー基準の義務化、自然災害への備え、消費者の品質要求の高まりなど、複数の要因が重なった結果として実施されるものです。建設業者にとっては、これらの背景を理解し、適切な対応を行うことが求められます。
縮小で想定される影響
4号特例の縮小により、建設業界では設計・申請業務の複雑化、工期の延長、コストの増加など、さまざまな影響が生じており、これからも縮小による影響が発生することが想定されています。
そこで、それらの影響について解説していきます。
設計・申請業務の増加と専門性の要求
4号特例の縮小により、これまで構造審査が省略されていた小規模な木造住宅でも、構造計算や省エネ基準への適合性を示す図書の提出が求められるようになりました。特に「新2号建築物」に分類される建物では、壁量計算、四分割法、N値計算などの簡易構造計算に加え、省エネ関連の図書も必要となります。これにより、設計者には高度な専門知識と経験が求められるようになり、業務の負担が増加しています。
工期の延長とスケジュール管理の重要性
建築確認申請の審査期間が従来の「7日以内」から「35日以内」に延長されたことで、工期全体の見直しが必要となっています。また、申請前の設計期間も長くなる傾向にあり、特に改正直後は審査機関の混雑が予想されます。これらの要因により、スケジュール管理の重要性が一層高まっています。
建築コストの上昇と予算管理の課題
構造計算や省エネ基準への適合性を示す図書の作成には、追加の時間と費用が必要です。また、建築確認申請の手数料も増加する可能性があり、設計費や建築費の上昇は避けられないでしょう。これにより、予算管理が一層複雑化し、施主との調整が重要となります。
リフォーム業者への影響と対応の必要性
これまで建築確認申請が不要だったリフォーム工事でも、主要構造部の過半を超える修繕や模様替えを行う場合は、確認申請が必要となりました。これにより、リフォーム業者は新たな法規制に対応するための知識や技術の習得が求められ、業務の見直しが必要となっています。
4号特例縮小への対策
2025年4月の建築基準法改正により、4号特例が縮小されました。これに伴い、建設業者は設計・申請業務の増加や工期の延長、コストの上昇など、さまざまな課題に直面しています。これらの変化に対応するための対策として、以下のようなものがあります。
- ・構造設計・省エネ設計の内製化とスキル強化
- ・確認申請のスケジュール管理と前倒し対応
- ・設計・施工体制の見直しとBIM/CADの活用
- ・施主への説明強化とコスト調整の透明化
- ・リフォーム業務における法令対応の強化
これらの対策を実施することで、4号特例の縮小による影響を最小限に抑え、建設業務の円滑な遂行が可能となります。今後も法令の改正や業界の動向に注目し、柔軟な対応を心がけることが重要です。
構造設計・省エネ設計の内製化とスキル強化
4号特例の縮小により、小規模建築物でも構造計算や省エネルギー基準への適合が求められるようになりました。これに対応するためには、設計者自身が構造設計や省エネ設計のスキルを習得し、内製化を進めることが重要です。具体的には、壁量計算やN値計算、断熱性能の評価などの知識を深めることで、外部への依存を減らし、業務の効率化が図れます。
確認申請のスケジュール管理と前倒し対応
建築確認申請の審査期間が延長されたことで、工期全体の見直しが必要となっています。これに対応するためには、設計段階から確認申請までのスケジュールを綿密に計画し、前倒しでの対応を心がけることが求められます。また、申請書類の準備や審査機関との連携を強化することで、スムーズな申請手続きが可能となります。
設計・施工体制の見直しとBIM/CADの活用
設計・施工体制の見直しも重要な対策の一つです。BIM(Building Information Modeling)やCAD(Computer-Aided Design)などのデジタルツールを活用することで、設計の精度向上や情報の共有が容易になります。これにより、設計ミスの削減や施工の効率化が期待できます。
施主への説明強化とコスト調整の透明化
4号特例の縮小に伴い、設計・施工にかかるコストが増加する可能性があります。このため、施主への説明を強化し、コスト調整の透明化を図ることが重要です。具体的には、設計変更や追加工事の理由を明確に伝え、納得のいく形での合意形成を目指すことが求められます。
リフォーム業務における法令対応の強化
リフォーム業務においても、4号特例の縮小により、建築確認申請が必要となるケースが増加しています。これに対応するためには、法令の最新情報を常に把握し、適切な対応を行うことが求められます。また、必要に応じて専門家の意見を取り入れることで、法令遵守を確実にすることができます。
まとめ
以上、建設業における4号特例についてと、その縮小による影響について解説しました。
今回の記事の内容をまとめると以下の通りになります。
- ・4号特例とは小規模建築物に対する建築確認の一部を省略する制度
- ・制度の目的は審査の簡素化と設計の自由度向上にあり、建築士の責任で成り立っている
- ・2025年の法改正により、省エネ基準との整合性や安全性確保の観点から特例が縮小された
- ・縮小により申請業務の増加、工期やコストの負担増など多方面で影響が出ている
- ・対策として設計スキルの強化、体制見直し、施主対応の強化が必要
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