建設業における作業日報とは、作業者が当日の現場作業についてまとめ、現場管理者に報告するための書類です。作業日報は、現場の作業内容を確認できるだけでなく、労務や現場環境の把握などにも活用できる重要な報告書です。
現場で働く方の中には、作業日報を書くにあたって疑問に思うことがあるが、いまさら誰にも聞けずに悩んでいるという方も多いのではないでしょうか。
この記事は、作業日報の目的や作成方法、作成のコツや注意点などをわかりやすく解説しています。また、現場管理に特化したアプリ、「現場ポケット」の日報機能についても紹介していますのでぜひ参考にしてください。
作業日報とは
建設業において、作業日報の作成は義務ではありません。しかし、管理者には作業者の作業状況や安全性について的確に把握しなければならない義務があるので、リアルな現場情報を確認できる作業日報は広く一般化されています。
作業日報には、現場や日付などを特定できる基本事項とともに、作業者の労働時間が明記されているため労務費の算定に活かすことが可能です。また、作業内容を確認する過程で、現場環境や現場の課題を読み取ることもできます。
作業日報も電子化が進んでおり、記入する作業者が、より視認しやすくスピーディーに作成できるようになっています。電子化することで、管理の一元化が進み、業務効率を向上させているのが現状です。
作業日報の目的とは
現場の労務配置や作業内容、施工の進捗状況を確認できる作業日報には、明確な作成目的がいくつかありますので説明します。
現場の情報を共有する
現場管理者は、本来であれば、作業者一人ひとりの動きや安全について配慮する必要があります。しかし、工事の規模が大きく工期も長期にわたる現場では、大人数の作業者全員の動きや安全に気配りすることは難しいです。
こういう場合、作業日報があれば、作業者全体の状況を把握することが可能となります。作業日報は、現場管理者だけでなく、労務管理者や安全衛生責任者にも周知されることが多いです。
作業日報があれば、多くの関係者がリアルな現場情報を共有することができるのです。
生産性の向上を図る
作業日報は、現場の生産性の向上に役立てることができます。どのような作業を何人で、どういう資材や機器を使用して、どのくらいの時間で完成させたかが記載されているからです。
もし、作業が計画していた時間より大幅にかかった場合、どこが要因となったかを検討できます。その検討結果を参考に、以降、同様工種の施工があった場合は施工手順や人員、機器などを変更して対処することが可能です。
これによって、次の施工では、生産性を向上させることができます。
トラブルを未然に防止する
作業日報を確認することで、トラブルや事故を未然に防止できることもあります。
建設現場では、小さなミスやちょっとした気の緩みで発生した事故が、重大災害に繋がることが多いです。また、第三者の通行や近隣住民に対する影響もあります。
作業日報に、足場の手すりが緩んでいたので直したとか、掘削中の開口部に安全対策をして帰社した、現場出入口での大型ダンプによる埃がひどいので水を撒いたなどの記入があったとします。
管理者は直ちに現場内を確認し、他に似たような場所はないかを含めて、これらの対策を講じなければなりません。その結果、以降は同じようなことはなくなるので、事故やトラブルを未然に防ぐことができたといえるのです。
的確なスケジュール管理
作業日報は、的確なスケジュール管理をするためにも重要なツールとなります。当日の作業内容と作業の進捗度が工程表に沿っているか、使用資材の量と在庫を合わせて今後の施工に対して必要量はあるかなどを確認できます。
工程表に沿うために今後の調整は必要か、施工に必要な資材は発注すべきかなどがわかるため、作業日報は的確なスケジュール管理にとっても重要です。
適切な人員配置
作業日報を確認する過程で、作業内容と作業者の人数の対比などから、人員の過不足に気づくこともあります。そこで、人員配置をうまく調整できれば、人件費の削減に繋げることが可能です。
現場管理者は、常に現場の進捗状況と、かかった作業者の累計人数などを日報から把握しておくことで過不足のない適切な人員配置を行うことができます。
労務費用の最適化
ここまで解説してきたように、作業日報に基づいて生産性を向上させ、的確なスケジュール管理や適切な人員配置で得られる最大のメリットは労務費用の最適化です。
しかし、単純に日付や労働時間だけを記入し、ありきたりの定型文だけで作成したような作業内容の作業日報では労務費用の最適化はできません。
そのためには、作業日報を書く側の真剣さも求められます。そして、そのように作業日報に向き合う作業者の方の評価が高まることは間違いないです。
作業日報に記載する項目
作業日報は、第三者が目を通すことを前提とした報告書であり、「読み手が知りたいこと」を書くという意識が必要です。客観的な事実を記録するための日誌や主観的な感情をメインに書く日記とは違います。
一般的な作業日報に記載されることが多い項目の意味とポイントについて解説します。
工事名・現場名・記入者・日付・作業者の出欠
作業日報で最初に記入する基本事項には、以下の項目があります。
- ・工事名
- ・現場名
- ・日付
- ・天気
- ・所属部署
- ・記入作業者名
- ・作業者の出欠
作業者の出欠は、当日現場に入場し作業したメンバーによる自筆サインを数えて、出面数とすることが多いです。
作業の始業・終業の時刻(残業も明記)
次に記入することが多いのは、労働時間に関するものです。
- ・始業時間
- ・休憩時間
- ・終業時間
- ・時間外作業時間
作業日報を労務管理の資料としている建設会社では、正確さが求められる重要な項目となります。休憩時間は所定の時間をきちんととれているか、時間外作業時間は管理者の承認を得たものかなどのチェックが必要です。
最近では、出勤簿アプリを導入している建設会社も増えており、その場合は各作業者のモバイル端末の操作だけで完結できます。
当日の作業内容・進捗状況
ここからは、記入者に内容のまとめ方を任されるパートになります。
当日の作業内容・進捗状況を書くときは、結論を先に書くという習慣をつけましょう。
まず、本日の目標や予定が達成できたかどうかを冒頭に書きます。その後に、具体的な内容を5W1Hに沿ってまとめてください。
作業内容を書くときは、なるべく数値を用いて書くと、より明確に状況が伝わりやすいです。例えば、「配水管工事を15m予定していたが、漏水の発生により10mの施工で終了した」などです。
反省点や課題点
反省点や課題点は、「所感」として捉えるとわかりやすいです。所感とは、作業内容の記載に、自分の経験や知見に基づいた意見を加えたものです。
現場の経験が浅い方にとって、重要なのは、前向きな問題意識をもって現場に向かっている姿勢です。
慣れてきたら、少しずつでもいいので現場作業について前向きに反省点や課題点を見つけるようにしてみてください。そういう姿勢は、必ず評価されるようになるものです。
作業日報の作成方法
作業日報の作成方法について、作成方法のポイント、作成方法のコツと注意点について解説し、最後に作業日報の記載例を3つ紹介します。
作成方法のポイント
作業日報の作成方法を3つポイントに集約して説明します。
結論→具体的内容(5W1H)を意識
作業日報の基本事項及び労働時間に関するパートでは、とにかく正確さが求められます。
記入者にまとめ方が任されるパートの「作業内容・進捗状況」と「反省点・課題点」では、結論→具体的内容(5W1H)の流れで書くことを意識してください。この書き方が一番、こちらの言いたいことが相手に伝わるというのが一般的な認識となっています。
この結論→具体的内容(5W1H)の流れは、他のどんなビジネス文書にもあてはまりますし、口頭で上司に何か報告するケースでも有効です。
仕様・書式を統一する
作業日報も他のビジネス文書同様、仕様や書式の統一感は重要です。見た目の良さだけでなく、記録して後で整理するときのスピード感が違ってきます。
記入者が任意でまとめる部分も、きれいであることは必須ではありませんが、丁寧であることは必要です。文字や数字の大きさや書き方、文末の統一などは配慮しましょう。
簡潔に必要な情報だけを書く
作業日報は作業の報告書であり、複数の関係者が目を通すものです。簡潔に必要な情報だけを書くことを心がけましょう。
書くべきスペースを埋めたくて冗長な文章にするよりは、結論と具体的な理由が書かれた空白の目立つ日報のほうが受け入れられやすいです。書き手も読む側も、余分な時間と手間をかけずに済むことになります。
作成方法のコツと注意点
作業日報の書き手の評価を高めるような作成方法のコツと注意点について説明します。
定量的であることを意識する
文章が定量的であることを意識すると評価を高めやすいです。 定量的というのは、物事を数値や数量に着目して捉えることをいいます。
例えば、「できる限り早く完成させます」と、「1時間以内に完成させます」では受け取る側の印象は大きく違います。
施工品質に直結するような作業で、「測定でも誤差はありませんでした」だけよりは、「測定での誤差は設計図書で認められた2%範囲内の○○です」とするほうが建設現場での評価は高くなります。
起こったことと改善について触れる
建設現場では、想定外のことが日常的に起こり、それを改善していくことで現場が良くなっていくという側面があります。後で大きな課題になりそうなことが見過ごされていたり、課題として上げづらかったりすることがあれば、そのほうが問題です。
最初は、簡単な危険予知や現場清掃、産廃物の分別のことでもいいので、前向きな問題意識で気になったことを記入し改善について触れてみましょう。
最後に必ず見直すこと
作業日報を書き終えたら、最後に必ず見直すことを鉄則としてください。
誤字脱字のチェックの他、基本事項は正確か、結論が最初のほうに書かれていて、その後に具体的な説明が書かれているかなどです。
作成後、時間をおいて読み直すと間違いや足りない部分を発見しやすくなります。
作業日報の3つの記載例
作業日報の記載例を3つ紹介しますので、作成する際の参考にしてください。
基本的な作業日報の記載例
○○工事
○○現場(住所)
○○年〇〇月○○日(〇曜日)
天候(○○)
○○事業部
記入作業者名○○○○
作業者名
○○○○
○○○○
○○○○
1.本日の作業時間
始業時間|○○:○○
休憩時間|○○:○○~○○:○○
終業時間|○○:○○
時間外作業時間○○:○○~○○:○○
2.本日の作業内容・進捗状況
本日の出来高、作業中に発生した問題点、取り組んだ対策など
3.反省点・課題点
問題が発生した課題や対策の報告
本日までの進捗状況や明日以降の作業内容のポイントなど
時系列に重点をおいた作業日報の記載例
○○工事
○○現場(住所)
○○年〇〇月○○日(〇曜日)
天候(○○)
○○事業部
記入作業者名○○○○
作業者名
○○○○
○○○○
○○○○
1.本日の作業時間
8:00~9:00 準備工
9:00~10:00 資材搬入
10:00~12:00 資材配置
12:00~13:00 休憩時間
13:00~15:00 組立
15:00~17:00 仕上げ
17:00~18:00 時間外作業
2.作業内容・反省点・課題点
資材受入搬入の段取りに関する問題点、解決のための対策など
現場全体の作業時間の効率化に関する意見など
概略的な作業日報の記載例
1.基本事項
○○工事
○○現場(住所)
○○年〇〇月○○日(〇曜日)
天候(○○)
○○事業部
記入作業者名○○○○
作業者名
○○○○
○○○○
○○○○
2.作業内容・反省点・課題点
手間取った作業の具体的な内容、それらの対策
今後の作業に活かしたい点などを報告
現場ポケットの紹介

現場管理業務の効率化に特化したアプリ「現場ポケット」は、シンプルな構成で画面デザインやボタン配置が見やすく、操作性も高いことで評価を得ています。
初期費用無料でランニングコストは基本11,880円(税込)/月というお手頃価格なのに、現場作業の日報作成をサポートしてくれるさまざまな機能を備えたアプリです。
オプション費用は一切かからず、アカウント数・データ容量、現場登録数が無制限で使用可能です。リアルな現場状況の把握を容易にし、段取りを組む際にも有効な現場ポケットの日報機能やその他の機能について紹介します。
現場ポケットの日報機能
現場ポケットの日報機能は、現場の勤怠管理を「見える化」できます。
その日の作業開始から終了時間までをトーク画面から簡単に入力できて、入力忘れや間違えの修正や追加が容易で代理入力も可能です。
現場別、職人別の作業人工を個別集計し、ファイルで出力することができます。個別の電話でのやり取りや管理が大変だと感じる方におすすめの機能です。
現場ポケットのその他の機能
現場ポケットのその他の機能について紹介します。
・トーク機能
トーク機能のグループ・チャットを使えば、現場単位で素早い情報交換と共有が可能です。周知したい重要事項は、掲示板にピン留めできるので見落とし防止に繋がります。
・アルバム機能
写真管理を無料トークアプリで行い、工事写真をトークに投稿すると自動でアルバムに保存していきます。独自のタグ付き機能を使えば、作成後の写真検索も簡単です。
・報告書機能
現場ポケットでは、複数のデザインの報告書テンプレートが用意されているので、アルバムから写真をテンプレートにはめ込んでいくだけで見やすい報告書が作成できます。
・工程管理機能
現場ポケットがあれば、テンプレートを活用して工程表作成の時間を大幅に短縮できます。さらに、取引先別などの目的別帳票も簡単に出力可能です。
まとめ
建設業における作業日報について、以下の内容で解説しました。
- ・作業日報を作成する目的
- ・作業日報に記載する項目について
- ・作業日報の作成方法
- ・現場ポケットの日報機能などの紹介
作業日報は、労務状況などの現場情報を共有するだけでなく、作業状況の記録から生産性の向上やトラブル防止のための参考にすることができます。
作業日報をベースとした的確なスケジュール管理と適切な人員配置による労務費用の最適化も可能です。
しかし、現場の数が増えたり規模が大きくなったりすると、的確な対応が難しくなります。さらに、慢性的な人手不足や高齢化の影響は今後も続くでしょう。
現場管理に特化したアプリ「現場ポケット」を導入して、業務の効率化を実現されることをおすすめします。