建設業で使われる工程表にはいくつか種類があります。
今回の記事では「ガントチャート」と「バーチャート」、この2つの違いを徹底比較し、それぞれの特徴や使い分けについてわかりやすく解説します。
ガントチャートの基本概要
ガントチャートは、プロジェクトの進捗状況を視覚的に管理するための工程表の一種です。縦軸に作業項目、横軸に時間を配置し、各作業の開始日と終了日をバーで表現します。これにより、プロジェクト全体のスケジュールや各タスクの進捗状況を一目で把握することが可能です。
建設業においては、複数の作業が同時並行で進行することが多いため、ガントチャートは非常に有用です。各作業の担当者や進行状況を明確に示すことで、誰がどの工程を担当しているのか、各作業の進捗状況が一目で把握できます。
ガントチャートの主な特徴
ガントチャート工程表の特徴をまとめると以下の3つになります。
- 1.視覚的な進捗管理
各作業の開始日、終了日、進捗状況をバーで表現し、プロジェクト全体のスケジュールを直感的に理解できます。 - 2.依存関係の明示
作業間の依存関係を矢印やリンクで示すことで、どのタスクが他のタスクに影響を与えるかを明確にします。 - 3.進捗状況の可視化
進捗率の記入欄が各工程の横に設けられており、一目で各工程の進捗状況がわかります。
ガントチャート工程表のメリットとデメリット
ガントチャート工程表には以下のようなメリットとデメリットが存在します。
ガントチャートのメリット
- ・プロジェクト全体の可視化
全体のスケジュールと進捗状況を視覚的に確認できるため、プロジェクトの現状をすぐに把握可能 - ・リスク管理の強化
作業の遅れやトラブルが発生している箇所を可視化し、迅速な対応が可能となる - ・コミュニケーションの改善
プロジェクトの全体像を共有することで、チームメンバー間の理解が深まる
ガントチャートのデメリット
- ・複雑な依存関係の表現が難しい
作業間の依存関係を示すことは可能だが、複雑な関係性を完全に表現するのは難しい場合がある - ・大規模プロジェクトでの管理が困難
タスク数が多い大規模なプロジェクトでは、工程表が複雑になり、全体を把握しにくくなることがある
バーチャートの基本概要
バーチャートは、建設業における工程管理で広く用いられる視覚的なツールです。縦軸に作業項目、横軸に日付を配置し、各作業の開始日と終了日を横棒(バー)で示します。これにより、各作業のスケジュールや全体の進捗状況を一目で把握することが可能です。
バーチャートの特徴
バーチャート工程表の特徴は下記のようなものがあります。
- ・作成が簡単
バーチャートはシンプルな構造をしており、専用ソフトや高度なスキルがなくても、手書きやExcelなどを使って手軽に作成できる - ・直感的に理解しやすい
作業の進行が棒グラフとして表されるため、初めて見る人でも視覚的に内容を把握しやすく、関係者との情報共有にも適している
バーチャート工程表のメリットとデメリット
バーチャート工程表のメリットとデメリットには以下のようなものがあります。
バーチャートのメリット
- ・全体像の把握が容易
プロジェクト全体のスケジュールや各作業のタイミングを直感的に確認できる - ・柔軟な修正が可能
変更が発生した場合も、各バーを延長・短縮するだけで簡単に対応できるため、計画の修正がスムーズに行える
バーチャートのデメリット
- ・作業同士の関係性が見えにくい
バーチャートでは、各作業が単独で表示されるため、どの作業がどれに影響を与えるのかといった依存関係を把握しにくい傾向があり、作業の遅延が他にどう波及するか判断しづらい - ・工程が複雑な場合には管理しづらい
バーチャートは構成がシンプルなため、作業の数が多く複雑に絡み合うような大規模プロジェクトでは、全体像の把握や進行管理が難しくなるケースがある
ガントチャートとバーチャートの違いを比較
上記で解説したように、「ガントチャート」と「バーチャート」は一見似ていますが、目的や表現方法に明確な違いがあります。
ガントチャートとバーチャートの違いは主に以下の3つの部分で比較できます。
表現方法の違い
- ・バーチャート
縦軸に作業項目、横軸に日時を配置し、各作業の開始日と終了日を横棒(バー)で示します。これにより、各作業のスケジュールや全体の進捗状況を直感的に把握できます。 - ・ガントチャート
縦軸に作業項目、横軸に進捗率を配置し、各作業の進行状況をバーで示します。これにより、各作業の進捗度合いや全体の進行状況を視覚的に確認できます。
情報量と管理の違い
- ・バーチャート
主に各作業の開始日と終了日、所要日数を示すシンプルな構造で、作成や修正が容易です。ただし、作業間の依存関係や詳細な進捗状況の把握は難しい場合があります。 - ・ガントチャート
作業の進捗率や担当者、依存関係など、より詳細な情報を含めることが可能です。これにより、複雑なプロジェクトの管理や進捗状況の詳細な把握が容易になりますが、作成や管理にはより多くの労力が必要となります。
適用プロジェクトの規模と複雑さ
- ・バーチャート
小規模から中規模のプロジェクトや、作業間の依存関係が少ない場合に適しています。シンプルな構造のため、迅速な作成と理解が可能です。 - ・ガントチャート
中規模から大規模のプロジェクト、特に作業間の依存関係が複雑な場合に適しています。詳細な情報を含めることで、プロジェクト全体の進行状況やリソースの管理がしやすくなります。
どちらが向いてる?現場ごとの使い分けポイント
建設業の現場では、プロジェクトの特性や規模に応じて、ガントチャートとバーチャートを適切に使い分けることが重要です。以下に、それぞれの工程表がどのような現場に適しているか、具体的なポイントを解説します。
バーチャートが適している現場
- ・小規模から中規模のプロジェクト
作業項目が比較的少なく、工程がシンプルな現場では、バーチャートが有効です。作成が容易で、全体のスケジュールを直感的に把握できます。 - ・作業間の依存関係が少ない場合
各作業が独立しており、他の作業に大きな影響を与えない場合、バーチャートで十分な管理が可能です。シンプルな構造で、迅速な作成と理解が可能となります。
ガントチャートが適している現場
- ・大規模または複雑なプロジェクト
多数の作業項目や複雑な工程が絡む現場では、ガントチャートが適しています。各作業の進捗状況や依存関係を明確に示すことで、全体の流れを把握しやすくなります。 - ・作業間の依存関係が強い場合
ある作業の遅延が他の作業に影響を及ぼすような場合、ガントチャートを用いることで、依存関係を視覚的に管理し、リスクを低減できます。
使い分けのポイント
以下のポイントを踏まえて、現場の状況やプロジェクトの特性に応じて、ガントチャートとバーチャートを適切に使い分けることで効率よく業務を進め、プロジェクトの成功に繋がるでしょう。
- ・プロジェクトの規模と複雑さを評価する
作業項目の数や工程の複雑さを考慮し、適切な工程表を選択します。シンプルなプロジェクトにはバーチャート、複雑なプロジェクトにはガントチャートが適しています。 - ・作業間の依存関係を確認する
作業同士の関連性が強い場合は、ガントチャートを用いることで、依存関係を明確にし、スムーズな進行をサポートします。 - ・現場のニーズや関係者の理解度を考慮する
関係者が工程表を理解しやすい形式を選ぶことで、コミュニケーションの円滑化が期待できます。バーチャートはシンプルで直感的、ガントチャートは詳細な情報提供が可能です。
建設現場で使われる他の工程表とは?
建設業の現場では、ガントチャートやバーチャート以外にも、プロジェクトの特性や管理の目的に応じて、さまざまな工程表が活用されています。
建築現場で使われている他の工程表には、以下のようなものがあります。
- ・グラフ式工程表
- ・ネットワーク工程表
- ・曲線式工程表
それぞれの特徴を紹介していきましょう。
グラフ式工程表(斜線式工程表)
グラフ式工程表は、縦軸に作業項目、横軸に時間を配置し、各作業の進捗を斜線で示す形式の工程表です。これにより、同時進行する複数の作業や、作業間の関連性を視覚的に把握しやすくなります。特に、複雑な工程が絡み合うプロジェクトで有効とされています。
グラフ式工程表とガントチャート・バーチャートとの違い
ガントチャートやバーチャートは、作業の進行を「横棒」で示しますが、グラフ式では「斜線」を使って進行方向を表します。これにより、作業の実施方向や作業量の変化をより直感的に把握できる点が特徴です。
また、ガントチャートに比べて視覚的に時間の経過と空間の移動がわかりやすいことが利点です。
一方、斜線を使う特性上、読み取りにはある程度の慣れが必要でしょう。
ネットワーク工程表
ネットワーク工程表は、作業の順序や依存関係をネットワーク図として表現する工程表です。
各作業をノード(点)で示し、作業間の関係性を矢印で結ぶことで、プロジェクト全体の流れやクリティカルパス(最長経路)を明確にします。これにより、遅延が許されない重要な作業や、全体のスケジュールに影響を与えるポイントを特定しやすくなります。
ネットワーク工程表とガントチャート・バーチャートとの違い
バーチャートやガントチャートは時間軸をベースに各作業の開始・終了日を示すのに対し、ネットワーク工程表は「作業の関係性と順序」に重きを置いています。
ガントチャートでは依存関係を補助的に表現できますが、ネットワーク工程表ではそれが主な焦点です。クリティカルパスの特定がしやすいため、遅延リスクの把握や対策を計画する場面で特に有効です。
曲線式工程表(出来高累計曲線)
曲線式工程表は、プロジェクトの進捗状況を累積出来高として曲線で示す工程表です。縦軸に累積出来高、横軸に時間を取り、計画値と実績値を比較することで、進捗の遅れや先行きを視覚的に確認できます。
全体の進捗を一目で把握できるため、大規模プロジェクトの管理に適しています。
曲線式工程表とガントチャート・バーチャートとの違い
ガントチャートやバーチャートは各作業単位の管理に優れていますが、曲線式工程表はプロジェクト全体の進捗状況を「出来高」で示す点が異なります。
つまり、作業単位ではなく全体量に対して「どれくらい進んでいるか」を把握するのに特化しています。詳細な作業管理というよりも、全体の進捗傾向を俯瞰する際に効果を発揮する形式であると言えるでしょう。
工程表を作成可能なツール
建設業における工程表の作成には、プロジェクトの規模や複雑さ、管理のニーズに応じて、さまざまなツールが活用されています。以下に代表的なツールとその特徴を紹介します。
Excel(エクセル)
Excelは代表的な表計算ソフトであり、工程表の作成にも広く使用されています。セルや関数を活用することで柔軟なレイアウトが可能であり、既存のテンプレートも豊富に存在します。
Word(ワード)
Wordはシンプルな工程表の作成に利用されることがあります。表や図形を使って簡易的な工程表を文書内に組み込めるため、報告書などとの一体化が図れます。
現場管理アプリ
近年では現場管理アプリも多く利用されています。クラウド上で工程表を作成・共有・更新できる機能を持ち、スマートフォンやタブレットでも利用できる点が特徴です。特に複数の関係者がリアルタイムで情報を確認・共有する場面で有効です。
現場ポケットの紹介

現場管理アプリの利用を検討している、気になっているという方におすすめの現場管理アプリとして、「現場ポケット」をご紹介します。
現場ポケットは、工程表の作成や請求書などの書類作成機能、PDFへの変換など、多彩な機能を一つのアプリで利用できる現場管理ツールです。
2025年4月時点で、導入実績は35,000人以上、契約更新率は約95%と、高い実績を誇るアプリです。
直感的な操作性で簡単に工程表を作成でき、1つの現場だけでなく、複数の現場を一覧形式で確認することができるため、複数現場を担当している方でも問題なく利用できます。また、スマートフォンやタブレット1つで、どこからでも工程表の作成や進捗管理が可能となり、作業効率を大幅に向上させ、書類作成にかかる時間を短縮できます。
さらに、アカウント数やデータ容量の追加といった追加課金がなく、年間契約費用のみで利用できる点も魅力です。利用料金は税込みで11,880円/月で利用できます。
現場管理アプリを活用することで業務の効率化に繋がり、これまで無駄に時間がかかってしまっていた部分で大幅な時短を図ることができるでしょう。
建設業で業務の効率化を考えている方や現場管理アプリを試してみたい方は、ぜひ「現場ポケット」の利用を検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
建設業におけるガントチャートとバーチャートについて解説していきました。
今回の記事の内容をまとめると以下の通りになります。
- ・ガントチャートは進捗率や依存関係を視覚的に管理でき、大規模・複雑な建設プロジェクトに適している
- ・バーチャートは作成が簡単で理解しやすく、小規模〜中規模プロジェクト向け
- ・ガントチャートは情報量が多く詳細な管理が可能だが、作成には手間がかかる
- ・バーチャートはシンプルな構造で修正がしやすいが、依存関係の把握には不向き
- ・グラフ式工程表は斜線で進行を示し、並行作業の視認性が高い
- ・ネットワーク工程表は作業の順序と関係性に特化し、クリティカルパス管理に有効
- ・曲線式工程表は全体の出来高による進捗管理に優れ、計画と実績の比較に便利
- ・プロジェクトの規模・構造・依存関係に応じて、適切な工程表を選ぶことが重要
工程表の作成には現場管理アプリの利用がおすすめです。
今回解説したガントチャートやバーチャート以外の工程表も作成できるため、工程表の作成や管理が一気に簡略化できるだけでなく、修正が必要な状況に直面しても現場で即時対応可能でしょう。
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