配筋とは、鉄筋コンクリート構造物において鉄筋を配置することです。鉄筋を配置することで、コンクリートの強度は増し、建物の耐久性は高まります。
建物の耐久性や強度に直接影響する配筋は、設計図に従って正確に配置されなければなりません。そのため、正しく配置されているか確認する「配筋検査」は重要です。
この記事では、配筋検査の概要と検査のタイミングや対象、重要性、検査の基本的な流れ、検査の注意点、検査によくあるミスと対策について解説します。
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配筋検査とは?
配筋検査は、コンクリートを型枠に流し込む前に実施されます。鉄筋コンクリート構造物の基礎、柱、梁などの鉄筋が、設計図書通りに正しく配置されているかをチェックする検査です。
配筋検査は、鉄筋検査とも呼ばれ、工事の請負会社や検査機関によって行われます。配筋検査自体に資格は不要ですが、電磁波レーダー法のような非破壊検査で配筋調査を行う場合は「コンクリート構造物の配筋探査技術者」の資格が必要になります。
配筋検査では、構造計算をして作成された「構造図」通りにつくられているかをチェックしますが、指摘事項があった場合は速やかに直さないと次の工程に進むことはできません。
現在では高層階の建物はもちろん、木造建築でも基礎は鉄筋コンクリートでつくるのが主流であり、建設業においての配筋検査のニーズは高いです。
配筋検査のタイミングと対象
基礎工事での配筋検査のタイミングは、基礎底盤(ベース)部分と基礎立ち上がり部分の配筋工事完了後です。また、コンクリート打設完了後も、仕上がり検査の重要なタイミングとなります。
住宅などの基礎工事においては、コンクリートは基礎底盤と基礎立ち上がりの2度に分けて打設します。これが「コンクリートの2度打ち」と呼ばれるものです。
そのため、配筋検査も2度必要になります。この配筋検査のタイミングと検査対象について解説します。
基礎底盤部分の配筋工事完了後
基礎底盤部分の配筋検査は、底盤の配筋工事を終えた後、底盤のコンクリートを打設する前に行います。対象となるのは、鉄筋の配置、本数、間隔、かぶり厚さなどです。
以下は、具体的な検査項目ですが、建物の種類や工事の進捗などによって違ってきます。
- ・防湿シートの設置状況
- ・鉄筋径、位置、ピッチ(基礎伏図・断面図などとの照合)
- ・鉄筋の継手の長さ
- ・鉄筋の定着長さ
- ・スペーサーの位置、間隔、鉄筋の垂れ下がり(かぶり厚さ)
- ・スリーブなどの配管部分の補強筋
- ・鉄筋の波打ち
- ・型枠の施工状況
- ・型枠のかぶり厚さ
基礎立ち上がり部分の配筋工事完了後
基礎立ち上がり部分の配筋検査は、型枠を設置してボルト類の施工した後、立ち上がりのコンクリートを打設する前に行います。
以下は、具体的な検査項目になりますが、建物の種類や工事の進捗などによって違う場合があります。
- ・鉄筋径、位置、ピッチ(基礎伏図・断面図などとの照合)
- ・鉄筋の継手の長さ
- ・鉄筋の定着長さ
- ・かぶり厚さ
- ・人通口
- ・スリーブなどの配管部分の補強筋
- ・鉄筋の波打ち
- ・型枠の施工状況
- ・型枠のかぶり厚さ
- ・型枠基礎の形状・寸法
- ・型枠スリーブ・配管などの状態
- ・アンカーボルト・ホールダウンボルトの位置
- ・アンカーボルト・ホールダウンボルトの固定状況
コンクリート打設完了後
コンクリートの打設後、型枠撤去後に、仕上がり具合をチェックするのも配筋検査の項目です。
コンクリートの材料分離や締固め不足、型枠からのセメントペースト漏れなどで発生するジャンカ、コールドジョイント、ひび割れなどの有無を確認します。型枠やアンカーボルトが動いてズレがないかの確認も必要です。
配筋検査の重要性
配筋検査の重要性について、建物の強度と安全性の確保、施工不備の早期発見、品質保証とトラブル防止という3つに集約して説明します。
建物の強度と安全性の確保
鉄筋は、建築物や構造物の骨格ともいえるもので、地震や風雨、荷重に耐えるための重要な要素です。鉄筋が配筋図(設計図書)通りに配置されてないと、工事目的物の強度や耐久性が損なわれ、倒壊という差悪の事態にもなりかねません。
配筋図は、建築基準法に基づき、以下の5つの図によって構成されます。
- ・構造図|配筋図の基準となる図面で、標準図、伏図、軸組図、詳細図から成る
- ・配筋要領図|主筋、配力筋、せん断補強筋について規定
- ・配筋展開図|部材ごとの展開構造図に鉄筋を並べて表記
- ・配筋加工図|鉄筋1本1本をどのように加工するかを記載した図面
- ・配筋数量表|鉄筋加工図に示した鉄筋の重量を集計した表
このような配筋図を書くときは、構造躯体の外形の寸法、ふかしを含めた厚みの寸法、かぶりの寸法、配筋の方向などの情報が必要です。
このような綿密な配筋図を基に配筋することで、建物や構造物の強度と安全性が確保されます。
施工不備の早期発見
配筋検査により、施工不備の早期発見が可能です。配筋検査の検査項目が、どのような施工不備と関連するかを以下にまとめました。
- ・かぶり厚不足|鉄筋の腐食が進み耐久性が低下
- ・配筋のピッチ不足|コンクリートが鉄筋に十分に回り込まず強度が不足
- ・定着長さ不足|鉄筋の接続が弱まり耐久性が低下
- ・アンカーボルトの未施工|基礎から土台が浮いたりズレたりする
- ・ホールダウンボルトのズレ|柱脚が浮いたり柱が倒れたりする
- ・スリーブ配筋の位置のズレ|コンクリートの強度不足や配管の支持不足が発生
配筋検査によって上記のような不備を発見することで、コンクリート打設前に修正することが可能になります。
品質保証とトラブル防止
コンクリートを打設する前に配筋検査を行って施工の不備を修正することは、品質確保と竣工後のトラブル防止に繋がります。
適切な配筋検査が行われず、工事目的物の引渡し後に不備が発見されれば、不備の修正や復旧には多大な費用がかかってしまうと同時に信用問題にもなりかねません。
配筋検査では、写真撮影によって検査状況が記録されるので、万が一のときに証拠として使用できます。また、検査記録に基づき責任の所在が明確になるので、トラブルの防止や対応にも有効です。
配筋検査の基本的な流れ
配筋検査の基本的な流れとしては、まず設計図書を確認し、次に現場で鉄筋の配置、サイズ、結束状態などを確認します。ここでは、配筋検査日当日の流れとともに見ていきます。
書類検査受検
配筋検査当日は、工事監理者と検査担当者、施工業者などが現場に集合します。まず、施工業者は書類検査を受検します。
書類検査受験とは、施工業者が用意した書類を検査担当者などが確認することです。配筋検査に必要な書類には、配置図、基礎伏図、基礎断面図、詳細図、構造仕様書、平面図、給排水設備図などがあります。
現場立会い検査
検査担当者は現場において、鉄筋の配置、太さ、間隔、継手、定着長さなどについて、設計図書通りに施工されているか目視で確認します。このとき、鉄筋のかぶり厚さや鉄筋のマス目のサイズなどを測定して設計図書と照合します。
また、防湿シートの施工の有無やボルト金物の設置状況の確認も必要です。
検査記録確認
検査記録確認は、鉄筋の配置やサイズ、かぶり厚さなどが設計図書通りに施工されているかを検証した記録を確認することです。
検査記録は、写真撮影や書面による記録など、さまざま方法で作成されます。それらが実際の検査結果と相違ないことを確認して検査は完了します。
配筋検査のチェック項目
ここでは、配筋検査のチェック項目について、それぞれの内容を具体的に解説します。
鉄筋の配置
鉄筋の配置を確認するには、図面で、@100、@300という表記を探します。@100という表記の意味は、鉄筋のマス目の幅を100mm(10㎝)にする必要があるということです。
現場が表記通りの幅を維持できていないと、計画した耐久性を確保できない可能性があります。
鉄筋のかぶり厚さ
かぶり厚さとは、鉄筋の表面から、これを覆うコンクリート表面までの厚さのことです。検査する測定箇所は、鉄筋の表面からコンクリートの表面までの最短距離です。
検査箇所ごとのかぶり厚さの最低基準は、立ち上がり部分40mm以上、底面60mm以上となっています。かぶり厚さが大きいほど、鉄筋は錆びにくく耐久性が高まります。
鉄筋の波打ち
鉄筋は真っすぐな状態でなければ、計画通りの強度を発現できません。鉄筋の波打ちの確認は、鉄筋の曲がりの度合いを確認する作業です。
鉄筋定着の長さ
鉄筋定着とは、2つの鉄筋を継ぎ足したときに重なっている部分のことです。鉄筋定着の長さは、目的物の種類や階層によって必要な長さが違ってきます。
鉄筋の径(太さ)
鉄筋の径は目的物の違いによって、建築基準法で規定されています。鉄筋の径は建築物や構造物の種類、使用する箇所など、求められる強度によって異なってくるので注意して確認することが必要です。
防水・防湿シートの破れやシワ
目的物の防水や防湿に大きな効力を発揮する、防水・防湿シートの破れやシワのチェックも必要です。破れやシワがあると、所定の機能を発揮できないので、細かい部分までチェックしなければなりません。
ホールダウン金物の位置・本数・状態
ホールダウンボルトは土台と柱を繋ぐ役割をします。ホールダウンボルトが効くことで、地震が発生しても倒壊を防ぐことができます。
設置箇所によって、必要な数量や固定状況が異なるため、図面を確認しながらチェックすることが重要です。
アンカーボルトの位置・本数・状態
アンカーボルトは、土台と基礎をつなぐ働きをします。アンカーボルトの位置や本数を確認し、土台との連結に問題がないか目視で確認します。
鉄筋の波打ち確認と同様に、アンカーボルトが真っすぐか、曲がりがないかのチェックも必要です。
検査時の注意点
配筋検査では、チェック項目以外にも注意してほしい点があります。検査時の注意点や準備すべきものついて解説します。
図面との照合
検査時に第一に注意してほしいのは、図面との照合です。配筋に関する図面は表記が非常に細かいので、照合は間違いがないように慎重に行いましょう。
必要となる書類(配置図、基礎伏図、基礎断面図・詳細図、構造仕様書、平面図、給排水設備図など)は事前に準備しておくと安心です。
検査の記録
検査状況の記録は、写真を撮影して記録しておくことも重要です。チェック項目ごとに複数方法から撮り、現場の全景写真や計測時の状況写真なども必ず撮影してください。
あらかじめ、撮影の計画を立て、黒板の内容も確認しておくことをおすすめします。不備が指摘された場合は、修正を間違いなく行うために、より細密な記録を残す必要があります。
検査時に準備すべきもの
検査時に準備すべきものは、必要となる設計図書の他、メジャーやコンベックス、デジカメ、筆記用具やメモ用紙などです。
過去の検査記録などから、事前に検査の流れを把握して「見える化」しておくと、スムースに対応できて検査を効率よく進めることができます。
配筋検査でよくあるミスと対策
配筋検査で指摘されることが多い施工ミスと、その対策について説明します。
鉄筋の位置がズレている
原因|配置図の確認不足、施工上のミス、鉄筋の固定不足など。
対策|配筋図を精査し、鉄筋の配置を確実に把握して施工すること。鉄筋の固定は注意深く行う。
鉄筋の本数が不足している
原因|配筋図の確認不足、鉄筋数量の計数間違い、在庫管理上の不注意ミスなど。
対策|配筋図の確認を十分に行い、鉄筋の数量の確認を厳密に行うこと。
鉄筋とスリーブ管との接触
原因|鉄筋とスリーブ管の間にすき間が確保されていない、スリーブ管が正しく設置されていないなど。
対策|鉄筋とスリーブ管の間に適切なすき間を確保する。スリーブ管を図面通り正しく設置する。
アンカーボルトの位置がズレている
原因|基礎のアンカーボルトの位置が配筋図と異なる。施工上のミスなど。
対策|基礎のアンカーボルトの位置を配筋図と照合し、設置し直す。
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まとめ
ここまで、配筋検査について以下の内容で解説してきました。
- ・配筋検査の概要と行うタイミングと対象
- ・配筋検査の重要性と基本的な流れ
- ・配筋検査のチェック項目と注意点
- ・配筋検査でよくあるミスと対策の例
- ・現場管理を効率化する「現場ポケット」の紹介
配筋検査は、建物の耐久性や強度に直接影響する、配筋が正しく配置されているかを確認する重要な検査です。検査内容を的確に把握するとともに、検査の事前準備や検査状況を漏れなく撮影することが必要です。
このような検査業務に適切に対応するため、現場ポケットのような現場管理に特化したアプリの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。