建設業界にも「働き方改革」の波が押し寄せる中、施工管理の働き方は大きな転換期を迎えています。本記事では、現状の課題とともに、今後求められる施工管理のあり方について詳しく解説します。
長時間労働や人手不足が常態化する施工管理業務。働き方改革の影響を受け、建設現場にどのような変化が求められるのか、課題と対応策を解説します。
施工管理の働き方改革に向けた動き
建設業界においても、他産業と同様に「働き方改革関連法」が適用されるようになりました。
2024年4月には、建設業にも時間外労働の上限規制が正式に適用されました。この規制により、施工管理職を含む建設業従事者の残業時間には以下のような制限が設けられています。
- ・原則として、月45時間・年360時間以内
- ・特別な事情がある場合でも、単月で100時間未満
- ・複数月平均で80時間以内、年間で720時間以内
これまでは対象外とされていた建設業ですが、この規制の導入により、長時間労働を前提とした業務体制の見直しが企業に強く求められるようになりました。違反には罰則が設けられているため、早急な対応が求められます。
国交省による「建設業働き方改革加速化プログラム」
国土交通省は、こうした法改正に対応し、建設業界における働き方改革を具体的に進めるため、「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定しました。このプログラムは、以下の3つの視点から成り立っています。
- ・長時間労働の是正
- ・給与・社会保険制度の整備
- ・生産性向上と業務の効率化
取り組みの中には、「週休2日制の実現に向けた取組強化」「適正な工期の設定」「デジタル化の推進」など、施工管理業務にも直結する施策が数多く含まれています。これにより、働く人の健康や生活の質を高め、業界の持続可能性を保つことが狙いです。
現状の施工管理職の働き方
施工管理職の現状は、長時間労働や休日の少なさといった課題が依然として存在しています。これらの問題は、業務の特性や業界の慣習、人手不足など複数の要因が絡み合って生じています。
施工管理職は、他の職種と比較して残業時間が長い傾向にあります。例えば、施工管理情報サイト「セコカン+」では、建築施工管理の平均残業時間は月52.3時間、土木施工管理では49.8時間と報告されています 。これに対し、全産業の平均残業時間は約14.6時間であり、施工管理職の残業時間の多さが際立っています 。
また、施工管理職の中でも若年層ほど残業時間が長い傾向があり、20代では平均61.8時間、30代で54.8時間と報告されています 。このような長時間労働は、心身の健康への影響やワークライフバランスの崩壊を招く要因となっています。
休日の確保が難しい現状
施工管理職は、休日の取得が難しい職種でもあります。国土交通省の調査によると、建設業界全体で4週8休(週休2日)を確保できている現場は約12%にとどまり、4週6休が最も多く、全体の42%を占めています 。また、建設業の年間出勤日数は251日で、全産業平均の222日より29日多く、年間で約1ヶ月分多く出勤していることになります。
このような状況は、無理な工期設定や天候による作業の遅れ、人手不足などが原因であり、休日出勤や長時間労働が常態化しています。
業務の多様性と負担の増加
施工管理職は、現場の管理だけでなく、書類作成や発注者との調整、スケジュール管理など、多岐にわたる業務を担当しています。これらの業務を限られた時間内でこなす必要があり、業務量の多さが長時間労働の一因となっています。
また、現場での突発的なトラブル対応や、資材の調達、職人の手配など、予測不能な業務も多く、計画通りに進まないことが多々あります。これらの要因が重なり、施工管理職の業務負担が増加しています。
施工管理業務が抱える課題
施工管理業務は、建設プロジェクトの円滑な進行を担う重要な役割を果たしていますが、その業務には多くの課題が存在しています。
現状の施工管理業務が抱える課題には以下のようなものがあります。
- ・業務範囲の広さと負担の増大
- ・若手人材の不足と高齢化の進行
- ・転勤・出張の多さとワークライフバランスの難しさ
- ・女性が働きにくい職場環境
それぞれ解説していきましょう。
業務範囲の広さと負担の増大
施工管理者は、工程管理、品質管理、安全管理、原価管理など、多岐にわたる業務を担当しています。
これらの業務は、現場での対応だけでなく、書類作成や関係者との調整など、デスクワークも含まれます。そのため、業務量が膨大になり、長時間労働や休日出勤が常態化する要因となっています。特に中小企業では、施工管理者の人数が限られているため、一人あたりの負担が大きくなりがちです。
若手人材の不足と高齢化の進行
建設業界全体で若手人材の確保が課題となっており、施工管理職も例外ではありません。29歳以下の建設業従事者の割合は11.7%にとどまり、新規高卒者の早期離職率も42.4%と高い水準にあります。一方で、55歳以上の就業者の割合は35.9%に達しており、高齢化が進行しています。
このような状況では、ベテランの知見やノウハウの継承が難しくなり、世代交代が円滑に進まない懸念があります。
転勤・出張の多さとワークライフバランスの難しさ
施工管理の仕事は、プロジェクトごとに現場が変わるため、転勤や出張が多くなります。特に大手企業では、全国各地や海外の現場に派遣されるケースもあり、家族との時間を持ちにくい状況が生じます。また、夜間工事や休日出勤が必要な場合もあり、生活リズムが不規則になりやすいです。
これらの要因が、ワークライフバランスの確保を難しくし、離職の一因となっています。
女性が働きにくい職場環境
建設業界では、女性の就業者割合が18.2%と低く、技能者に限ると2.7%にとどまっています。女性が施工管理職として働く際には、現場に女性専用のトイレや更衣室がない、妊娠・出産・介護休暇を取りづらいといった課題があります。
これらの職場環境の整備が進まない限り、女性の施工管理者の増加は期待しづらく、人手不足の解消にもつながりません。
働き方改革が施工管理に与える影響
働き方改革は、施工管理職の業務環境に大きな変化をもたらしています。特に、労働時間の上限規制や業務効率化の推進など、施工管理の働き方に直接影響を与える要素が増えています。
施工管理職の働き方改革を進める上で、適正な工期設定と週休2日制の導入が重要な課題となっています。これまで、短期間での工事完了が求められることが多く、施工管理職の長時間労働や休日出勤が常態化していました。
しかし、働き方改革の推進により、発注者と受注者が協力して適正な工期を設定し、週休2日制を実現する取り組みが進められています。これにより、施工管理職の労働環境が改善され、ワークライフバランスの向上が期待されています。
また、働き方改革の一環として、施工管理業務の効率化と生産性向上が強く求められています。具体的には、ICTツールの導入や業務フローの見直し、事務作業の外注化などが挙げられます。これらの取り組みにより、施工管理職の業務負担を軽減し、限られた時間内での業務遂行が可能となります。
これらの影響が正しく施工管理業務の改善に働くことで、より効率的に施工管理業務に取り組むことができるでしょう。
適正な工期設定のための取り組み
適正な工期設定は、単に発注者が設定する日数を見直すことにとどまらず、実務レベルでの工夫や仕組みづくりが不可欠です。現場の運用や社内体制において、具体的な改善が進められています。
適切な工期を算出するためには、業務の進捗や作業工程を「見える化」することが前提となります。
多くの現場では、工程管理アプリやクラウドサービスを活用する事例が増えています。こうしたツールを用いることで、工事ごとの実作業時間、段取りに必要な日数、関係業者間のタイムラグなどを正確に把握できるようになります。
工程が明文化されることで、過剰な詰め込みや無理なスケジュールを防ぎ、関係者全体で工期を共有・調整することが可能となります。
着工前の事前協議の徹底
建設業では現場が動き出す前の「段取り八分、仕事二分」という考え方に基づき、着工前の打ち合わせやリスク抽出が重要視されています。
元請企業や設計者、各下請業者との間で、施工の順序や必要な準備工数、搬入経路、周辺住民への対応などを細かく確認しておくことで、後の工程の手戻りや中断を最小限に抑えられます。
特に、最近はBIMや3Dモデルを活用した合意形成の事例も増えており、可視化による合意は適正な工期設定の信頼性向上につながっています。
発注時の条件明示と入札要件の見直し
民間案件を中心に、発注時点で「週休二日対応」や「夜間工事なし」「分割引渡し可能」などの条件を明示するケースが増えています。これにより、受注者側も現実的なスケジュールで見積もりを立てやすくなり、契約後の工期短縮や突貫工事を防ぐ効果があります。
また、自治体によっては「適正工期での提案」が評価加点対象となる入札制度を試行しており、制度面からの後押しも進行中です。
女性施工管理者は働きやすくなる?
建設業界における女性の施工管理者は、年々増加傾向にあります。国土交通省の調査によれば、2015年度における建設業の技術者に占める女性の割合は4.5%でしたが、2024年度には10%に達しています 。この背景には、働き方改革による労働環境の改善や、企業の多様性推進の取り組みが影響しています。
今回の記事で解説したように、「働き方改革による労働環境の改善」や「職場環境の整備と意識改革」といった、女性にも働きやすい職場環境づくりに取り組んでいる企業も多く、今後も改善が期待できるでしょう。
しかし、現状はまだまだ課題が残っていると言わざるを得ないでしょう。
ITを活用した施工管理の効率化
働き方改革の一環として施工管理業務の効率化が求められています。ITを活用することで、業務の生産性向上や労働時間の短縮が可能となり、現場の負担軽減につながります。
施工管理業務は、工程管理、品質管理、安全管理など多岐にわたります。
従来は紙ベースやExcelでの管理が主流でしたが、情報の共有や更新に時間がかかり、ミスや手戻りの原因となっていました。ITツールを導入することで、情報の一元管理やリアルタイムな共有が可能となり、業務の効率化が期待できます。
ITを活用することで、以下のような業務改善を実現できます。
工程管理の効率化
工程管理ツールを活用することで、作業工程の可視化や進捗状況の把握が容易になります。
現場管理アプリなどの工程管理ツールであれば、直感的な操作で工程表の作成や更新が可能で、複数の工程を一括で管理できます。これにより、計画の立案や調整がスムーズに行えます。
写真・図面管理の効率化
現場で撮影した施工写真や変更された図面の管理も、デジタル化によって改善が期待できる分野です。
これまでは現場から紙の記録を事務所へ持ち帰る必要がありましたが、スマートフォンやタブレット端末を使うことで、その場で撮影・共有・保管まで完了させることが可能になりました。
これにより、報告作業の簡略化と正確性の向上が実現します。
日報・報告書の作成時間を削減
日々の作業報告や現場状況の記録も、デジタルツールによって大幅に効率化されます。現場から直接入力できる仕組みを整えることで、帰社後の報告業務が不要になり、時間外労働の削減にもつながります。
また、テンプレートを使った入力や音声入力機能を使えば、報告内容のばらつきや記入漏れの防止にもつながるでしょう。
安全管理や点検作業のペーパーレス化
安全点検や点検作業の記録も、デジタル化が進む分野です。
現場ごとに必要なチェックリストや報告書をクラウド上で管理することで、データの保管や共有が容易になります。
紙の帳票をファイリングする手間が省けるだけでなく、記録の検索性や集計作業の簡素化も実現します。
現場ポケットで施工管理を効率化

現場管理アプリの利用を検討している、気になっているという方におすすめの現場管理アプリとして、「現場ポケット」をご紹介します。
現場ポケットは、工程表の作成や請求書などの書類作成機能、PDFへの変換など、多彩な機能を一つのアプリで利用できる現場管理ツールです。
2025年1月時点で、導入実績は35,000人以上、契約更新率は約95%と、高い実績を誇るアプリです。
直感的な操作性で簡単に工程表を作成でき、1つの現場だけでなく、複数の現場を一覧形式で確認することができるため、複数現場を担当している方でも問題なく利用できます。また、スマートフォンやタブレット1つで、どこからでも工程表の作成や進捗管理が可能となり、作業効率を大幅に向上させ、書類作成にかかる時間を短縮できます。
さらに、アカウント数やデータ容量の追加といった追加課金がなく、年間契約費用のみで利用できる点も魅力です。利用料金は税込みで14,850円/月で活用できます。
現場管理アプリを活用することで業務の効率化に繋がり、これまで無駄に時間がかかってしまっていた部分で大幅な時短を図ることができるでしょう。
施工管理の方で、業務の効率化を考えている方や現場管理アプリを試してみたい方は、ぜひ「現場ポケット」の利用を検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
以上、施工管理の働き方改革による影響や現状の課題について解説しました。
今回の記事の内容をまとめると以下の通りになります。
- ・施工管理職は長時間労働や業務負担が大きく、働き方改革が強く求められている実情がある
- ・時間外労働の上限規制や週休2日制の導入が進められている
- ・若手不足や高齢化、女性が働きにくい環境も課題である
- ・適正な工期設定や事前協議、条件明示などの取り組みが進んでいる
- ・IT活用により工程管理・報告業務・安全管理の効率化が可能
働き方改革による働きやすい環境を実現するためにも、現場管理アプリの導入をおすすめします。