どんな建設工事も人の生活に関わる重要なものなので、さまざまな基準を満たしながら施工されたことを証明する必要があります。しかし、現場は工事の進捗とともに変化するので、前の施工の状況を確認できなくなります。
そのため、各施工段階で工事写真を撮影し、状況を確認できるように記録しておかなければなりません。この工事写真を撮影するときに、必要な情報を一目で確認できるように現場に置くのが工事黒板です。
この記事では、工事黒板の概要と必要性、書き方の基本と注意点を解説します。また、工事黒板業務を大幅に効率化できるアプリ「現場ポケット」も紹介していますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
工事黒板とは
工事黒板とは、工事に関わる情報を記載するもので、これを工事状況とともに撮影して関係者と情報共有します。また、施工管理者にとっては、完了した工種や工程の確認にも役立ちます。
この工事黒板がないと工事写真の5W1Hが把握できませんし、どんな基準で施工したのかがわかりません。例えば、設計図書や仕様書にある設計数値と、実際の測定値の誤差が許容範囲かどうかを工事の黒板や写真で確認することは、品質管理において非常に重要です。
工事黒板を置いて施工状況を撮影することで、作業日時は工程表通りか、作業内容に沿った安全管理か、使用機材は適切かなどの判断もできます。
以上のようなリアルな工事情報を自社の関係者だけでなく発注者や設計事務所と共有するためには、視認しやすい文字や数字で書かれた工事黒板と、わかりやすい工事写真が欠かせません。
工事黒板の目的
工事黒板の目的は、工事の進捗状況の共有、作業状況の記録、設計図書や仕様書との照合の3つに集約することができます。それぞれについて詳しく解説します。
工事の進捗状況を共有する
工事の進捗状況は、現場の施工管理や作業者だけが把握していればいいというものではありません。工事の遅延や前倒しは、協力会社や発注者、自社の管理部門などにも影響を与えます。
工事黒板には作業内容とともに5W1Hが記載されているため、当該作業が計画された通りの時期に行われているかどうかは、工程表を確認すれば一目瞭然です。
つまり、工事黒板付き工事写真を見ることで、工事の進捗状況を把握できるということになります。特に、電子化されクラウド上に保存された工事写真であれば、いつでもどこでも共有が可能です。
リアルな作業状況を記録する
工事黒板には、施工する作業内容が簡潔に記載されており、作業が適切に行われているかを確認することもできます。
作業者は必要な服装や安全器具を装備しているか、産業廃棄物は適切な方法で指定された処分場に排出されたか、使用している車両や建設機械は定められた規定をクリアしているかなどです。
建設工事では、品質管理や工程管理はもちろん、安全や環境に配慮した施工が求められます。
自社の安全管理部門や発注者は、これらのことを確認したくても工事現場に常駐していないので、リアルな作業状況は工事黒板付き工事写真で記録し共有する必要があるのです。
設計図書や仕様書との照合
建設工事では、設計図書や仕様書通りの施工が行なわれているかの照合が行なわれます。この照合の際にも、重要な役割を果たすのが工事黒板付き工事写真です。
建設工事を施工する際に必ず作成される施工計画書には、設計図書や仕様書、自治体のルールなどから引用した、その工事が確保すべき様々な基準が明記されています。施工管理者は、施工計画書の基準に沿って施工し、所定の品質を確保します。
請負会社の社内検査員や発注者サイドの工事監理者は、工事の各段階において、施工された建築物や構造物が上記の基準と合致しているか照合を行うのが一般的です。
特に、工事監理者の照合では、設計図書に定められた方法や施工会社が提出する品質管理簿、目視や抽出により確認が行われます。このときに不備があると、工事写真で該当する作業箇所の検証が行われます。
そのため、工事黒板には、基準となる設計数値と実測値を併記することが必須です。
工事黒板の書き方と注意点
工事黒板のない工事写真は、スナップ写真のような単純に光景を映したものと大差なくなります。工事黒板があることで、工事写真にはさまざまな意味づけがなされるのです。
工事写真を工事情報データとして補完する、工事黒板の書き方について基本と注意点について解説します。
工事黒板の書き方
工事黒板は記載すべき事項を網羅し、撮る時機については、あらかじめ計画することが必要です。また、文字や数字は見やすく、統一感のある書き方が推奨されます。
工事黒板に記載すべき事項
工事黒板に記載すべき事項は、工事名、工事場所、日時、施工業者名、工種、工事概要、設計数値、実測値、備考などです。必要に応じて、立会者や工事目的、施工状況などを記載することがあります。
工事黒板のスペースには限りがあり、見やすさも大事なことなので、盛り込みすぎるのはおすすめできません。工事データの一つとして、多くの人に見られることを意識してほしいです。
写真を撮る時機を計画する
工事黒板付きの工事写真を撮る時機は、あらかじめ計画しておくことが多いです。工程表をベースに、工種や作業内容ごとに区切りがついた時点で撮るよう計画し、設計数値と実測値を表記する必要があるときも含めます。
工事の概要や工程、作業の優先順位などが把握できていれば、計画を立てるのは難しくないはずです。あらかじめ計画しておくことで、あわてずに準備ができて撮影漏れも少なくなります。
文字や数字は見やすく書く
工事黒板に書く文字や数字は、きれいに書く必要はありませんが、見やすいよう丁寧に書くことが求められます。特に数字は、品質の判断に直結するので間違って書くことは許されません。
「1」と「7」、「2」と「3」など間違いやすいものは特に注意が必要で、クセのある書き方をする方は、区別がつくように意識して記入してください。
書き方は統一感をもたせる
工事黒板を書く時は、統一感をもたせてください。統一感とは、撮影する作業内容の表題、設計数値、実測値など各項目の順番や字の大きさを一定にすることです。
慣れて自然に統一感がでるまでは、事前にひな型を用意して活用しましょう。
統一することで、黒板に記載すべき情報の過不足に気づきやすくなります。また、情報をまとめる際の作業の効率化にも繋がります。
注意点
ここでは、工事黒板を書くときに覚えておいてほしい注意点について説明します。
決められた仕様がないか確認する
工事の発注者が公的機関の場合、工事黒板の仕様を決めていることがあるので、着工前に確認しておいてください。特に、電子化された工事黒板に求められることが多いです。
手書きの工事黒板の仕様とは、一般的な着手前や完成、施工状況の他に、安全管理や使用資材などをどのように撮影するかのルールです。
黒板は見やすい位置に置く
工事黒板を置く位置についても注意が必要です。特に、カメラに映っている工事黒板の位置や傾きは常に確認するようにしてください。
太陽光で反射していない、撮るべき対象物に被っていないなども大切です。また、撮影時の黒板の位置は、なるべく同じ位置のほうが見やすいです。
最近では、黒板を現場に置くのではなく、シャッターを押すのとは別の手にもって使うタイプの工事黒板も多いです。その場合は、手振れしないように気をつけましょう。
文字は写真でも視認できること
文字や数字を書いて、工事黒板を見たときは大丈夫でも、写真に撮るとハッキリと見えないということがあります。文字や数字は大きめに書くことを心がけ、メリハリのある丁寧な字で書くようにしましょう。
文字や数字は、写真を貼り付ける台紙にも記載するからいいのではないかという考え方もありますが、リアルな写真で工事情報を視認できることが工事黒板の役割であることを忘れないでください。
常に5W1Hを意識すること
情報の伝達や作業の報告では、「5W1H」がわかるように書かれていることが重要です。それは工事黒板でも同じで、いつ、どこで、誰が、何を、どうやってという流れを常に意識することが必要です。
そうすることで、工事写真で撮った現場状況が、確認する誰にとってもわかりやすいものとなります。
撮影後の編集はできない
国土交通省の「デジタル写真情報管理基準」では、工事写真の改ざん防止の観点から、原則として撮影後の編集は認められていません。各自治体や機関でも、これに準じたスタンスをとっています。
そのため、工事黒板の文字や数字が見えにくいから加工するとか、逆光で見えないから補正するというようなことはできません。撮影した写真はその場で確認し、不備があれば取り直すことが必要です。
写真台帳の作り方
工事黒板の書き方の最後に写真台帳の作り方についても触れておきます。
撮影した写真を準備する
写真台帳を作成するための準備として、写真を各フォルダに整理します。フォルダは、以下の分類で作られることが多いです。
着工前と完成、施工状況、安全管理、使用資材、品質管理、出来形管理、災害、事故などです。フォルダ内では、さらに工程順に整理すると時系列がつかみやすくなります。
台帳の表紙や仕切りを用意する
台帳の骨組みとなる表紙や仕切りを用意します。表紙には、工事名、工期、施工会社名を、仕切りにはフォルダの分類名を記載します。
仕切りに挟み込んでいく各台紙(ページ)に写真を貼りつけますが、撮影日時、工種、工事場所、設計数値、実測値などの情報を漏れなく記載することが必要です。
管理基準に従い整理する
一般的な写真台帳の作成は、写真をフォルダごとに整理して、骨組みとなる表紙や仕切りを作成後、写真とともに工事情報を記入した台紙を挟み込んでいくという流れです。
ただし、発注者によっては、「写真管理基準」があります。そういう場合は、あくまでこの写真管理基準に沿って写真台帳を作成しなければなりません。
現場ポケットの紹介

工事黒板は、工事写真に工事情報をプラスして、リアルな工事データとして成立させます。しかし、手書きの工事黒板は、使用に際して非常に手間がかかります。
そこで、おすすめしたいのが工事黒板アプリの「現場ポケット」です。初期費用無料でランニングコストは基本11,880円(税込)/月というお手頃価格なのに、工事黒板だけでなく、さまざまな機能を備えたアプリとなっています。
初期費用やオプション費用は一切かからず、アカウント数・データ容量、現場登録数が無制限です。
工事黒板・工事写真業務を大幅に効率化する、現場ポケットの主な機能について紹介します。
アルバム機能
工事写真の効率化に大きく貢献するのが、現場ポケットのアルバム機能です。
写真管理を無料トークアプリで行い、工事写真をトークに投稿すると自動でアルバムに保存していきます。クラウド対応なので、アプリでもPCでもリアルタイムで共有できます。
扱う工事写真の点数が多くアルバム整理が大変だった方、情報共有のタイムラグに不便を感じていた方などの業務をスマートに効率化することが可能です。
独自のタグ付き機能を使えば、工種などのキーワードを工事写真にタグ付けするとアプリが自動的にタグで写真整理してくれるので、関連キーワードを入力するだけで写真検索できるようになります。
さらに、現場ポケットでは、電子小黒板の後付けが可能で、黒板の表記間違いも楽に修正できます。
トーク機能
現場ポケットにはトーク機能があり、これが業務効率化に大きな働きをします。
現場単位でグループ・チャットが可能で素早い情報交換と共有が可能です。また、周知したい重要事項は、掲示板にピン留めできるので見落とし防止に繋がります。
さらに、現場単位で顧客のファイルデータや住所などを一目で確認できる画面デザインとなっている点もおすすめです。
通常の無料通話アプリでは、現場ごとの情報管理に限界がありますが、現場ポケットならストレスなく管理することが可能となります。
報告書機能
現場ポケットでは、複数のデザインの報告書テンプレートが用意されているので、アルバムから写真をテンプレートにはめ込んでいくだけで見やすい報告書が作成できます。
定型文機能もあるので、よく使用する定型文を登録しておくと、定型文を選択するだけで文字入力が可能です。
報告書の作成に時間がかかってしまう、同じ文章を何度も入力するのが面倒だという方にぜひ使っていただきたい機能です。報告書機能を使うことで、報告書作成の作業時間を大幅に短縮できます。
日報機能
現場ポケットの日報機能は、現場の勤怠管理を可視化できます。
その日の作業開始から終了時間までをトーク画面から簡単に入力できます。入力忘れや間違えの修正や追加が容易で代理入力も可能です。
現場別、職人別の作業人工を個別集計し、ファイルで出力することができます。個別の電話でのやり取りや管理が大変だと感じる方におすすめの機能です。
まとめ
工事黒板の書き方について、以下の内容で解説しました。
- ・工事黒板の概要
- ・工事黒板を書く目的
- ・工事黒板の書き方と注意点
- ・業務を大幅に効率化する「現場ポケット」の紹介
工事黒板は、工事写真を工事データとして補完するもので、工事にとって欠かせないものです。ただし、手書きの工事黒板では、さまざまな点で手間と時間がかかりすぎます。
建設業界のDX化は定着しつつありますが、なかなか踏み切れていない企業様も多いようです。工事黒板はもとより、現場に必要な機能を過不足なく網羅しているアプリ、現場ポケットの導入の検討から始められてみてはいかがでしょうか。