工事写真は、工事の着工から竣工までのさまざまな工事情報を記録するためのものです。
工事写真があることで、現場に常駐していない関係者もリアルな工事情報を共有できます。現場に直接携わっている方は、工事写真を施工の不備や欠陥の早期発見、労働災害の防止、トラブルやクレームへの対応などに活用できます。
この記事では、工事情報の記録に欠かすことができない工事写真について、目的から撮り方まで詳しく解説します。工事写真業務を大幅に効率化する「現場ポケット」も紹介していますので、ぜひ最後までご覧いただき参考にしてください。
工事写真とは
工事写真は、当該工事が適切な施工管理によって、設計図書や仕様書通りに施工されたことを証明する記録となります。
建設工事は、安全や環境に配慮しながら、発注者の要求水準を満たす目的物を完成させなければなりません。この目的物完成までの過程を所定の段階ごとに記録するのが工事写真です。
工事写真の概要について、3つのポイントで解説します。
工事の施工・進捗状況を記録する
よく「工事は生きもの」という言い方をしますが、工事の進捗とともに現場は常に変化しています。そのため、所定の段階ごとに記録を残しておかないと、前の現場の様子はわからなくなってしまいます。
目の前にある建築物や構造物がどのように施工されたかは、作業中に立ち会うか、記録した写真でしか確認できないということです。
建設工事には、設計図書や仕様書をベースに設定された工程があります。この工程に沿って手順の漏れなく、一つひとつの作業を的確に積み上げていくことも大切なので、工事の進捗状況の記録も重要です。
施工方法や使用資材を記録する
建設工事では、同種工事でも複数の施工方法があり、発注者が指定する場合と請負会社が選択する場合があります。いずれにしろ、施工方法の確認は重要なので、建築物や構造物がどのような方法で施工されたか、詳細がわかるように記録しておかなければなりません。
実際にどのような施工をしたかは、目的物の完成後の維持や修繕にも関係してくるため、発注者や監理者には特に重要です。
使用資材の記録も必須で、荷姿だけでなく、規格寸法の数値を確認できる写真が必要です。そうしておくと、万が一のトラブルや瑕疵があったときの検証に役立ちます。
着工前・完成・作業状況を記録する
施工による現場の変化を、的確に撮影する方法として一般的なのが、同じ箇所で着工前・完成・作業状況の3つの写真を撮影することです。このときの注意点として、撮影者はなるべく同じ場所に立ち、同一方向でシャッターを切ることです。
同じ箇所を撮っていても、視点や方向が変わると変化が確認しにくくなります。
その他の注意すべき点としては、特に完成写真で、現場の実測値がわかるように測定している状態で機器の目盛りを記録に残すことです。そして工事黒板には、設計数値と実測値を併記しておくことが必要です。
工事写真の目的とは
工事写真は、工事が設計図書や仕様書などに規定されている基準通りに施工されているか記録するためのものです。撮影する際は、施工業者としての撮りやすさではなく、工事写真を検査する立場の視点をもつことが重要です。
記録すべき項目として、工事場所、撮影日時、施工業者及び立会者などの基本的な項目は必須となります。ここでは、記録して残した後に、設計図書などと照合したり検証したりする項目について解説します。
着工前・完成
工事写真は、各撮影箇所において、着手前、作業状況、完成の順番で撮影します。ただし、写真台帳などに並べる際は、現場がどのように変わったか比較しやすいように、まず着手前と完成を直近で並べ、その後に作業状況をもってくることが多いです。
工事期間を通して、施工によって変更を加えられたすべての箇所で、着手前と完成を撮影するのが基本であると覚えておいてください。
作業ごとに撮影された着手前・完成は、工程順・時系列順に整理されますが、規模が大きく複雑な工事ほど枚数は格段に多くなります。
同一工種では、似たような手順を何度も繰り返すという場面があり、後日の整理では混同してミスを出しやすくなります。工事写真はため込まず、日々整理しておくというスタンスが欠かせません。
使用資材
工事で使用する各種資材の情報がわかる写真を、実際に計器を使って計測している状況を含め撮影して記録します。必要な情報は以下の通りです。
- ・規格・寸法
- ・形状・形体
- ・荷姿・保管状況
- ・使用数量
- ・品質証明書
建設現場で使用される資材の写真は、品質管理上はもとより、工事目的物の引き渡し後の維持管理や修繕にも関わるデータとなります。そのため、メーカーや取扱商社名が記載された品質証明書や保証書を写真で押さえておくことは有効です。
施工状況
仕様書などに規定された事項に沿った施工であるかを確認するため、施工状況写真が必要です。特に、施工によって埋まったり隠れたりして、後で視認できなくなる箇所の写真が重要になります。
施工状況写真のポイントは、前述の通り、着手前、完成、作業状況を撮ることです。その他の主なポイントを下記にまとめました。
- ・実測値が求められる完成写真では設計数値を併記
- ・作業者の服装は当該作業における安全管理上適切か
- ・使用する建設機械や電動工具などの操作や管理の妥当性
安全管理
適正な安全管理に準じた施工であるかを確認できる工事写真も必要です。主な状況写真として以下のものがあります。
- ・保安施設の設置状況
- ・各種標識の設置状況
- ・交通整理員の実施状況
- ・安全協議会などの実施状況
保安施設とは、工事区画への侵入を防ぐためのセイフティバーやカラーコーン、方向指示版などのことです。注意灯や回転灯などを併設する場合もあります。
工事区間の予告や迂回路を示す各種標識、人や車両の通行を交通整理する交通誘導員の稼働状況など、現場全体が安全に管理されている証明となる状況写真が求められます。
工事期間中、定期的に開催される、作業者を中心とした工事関係者による安全協議会の様子も撮影しなければなりません。
品質管理
品質管理は、施工された建築物や構造物などの評価に直結する項目なので重要な記録となります。どの段階で、どの位置をどのように撮影するかを、工種ごとに事前に計画しておくことが多いです。
建設工事での品質管理では、設計図書・仕様書に示されている、形状、寸法、強度、材質、外観などが確認できなければなりません。品質管理に関わる項目として撮影する確認事項の主なものは以下の通りです。
- ・設計図書に基づき実測して数値を確認
- ・計測が正しく行われている状況を確認
- ・試験成績書や品質証明書に基づき確認
- ・施工が適切な管理のもとで行われたかを確認
出来形管理
出来形管理とは、工事目的物が発注者の要求する基準や条件に対して許容範囲内で施工されているかを調べ、不備があれば原因を見極めて改善を図るための管理です。
出来形管理は、工事の各施工段階での完了後や工事全体の完成後に撮影されます。施工された建築物や構造物が発注者の要求通りの水準に達しているかを確認するので、寸法や規格とともに、仕上げの記録も必要です。
仕上げの管理内容には、据え付け高さや表面の凹凸、仕上げ高さなどがあります。
その他
その他の記録としては、事故や災害が発生した場合に規模や状況が確認できる写真などがあります。
労働災害が発生した場合は、補償の観点からも写真は大切です。事故の状況や原因が確認できるように撮影しなければなりません。
被害箇所ごとに近景と遠景を撮り、被害状況だけでなく、周囲の様子も撮影することがポイントになります。
工事写真の撮り方
建設現場において、適切な施工が行われたことの証明となる工事写真の撮り方について解説します。まず、撮り方の基本となる手順、次に撮り忘れや漏れがないようにするコツや注意点について説明します。
撮り方の基本
工事写真の撮り方は、慣れてくると自分なりのアレンジが可能ですが、最初のうちは基本に忠実であるべきでしょう。撮り方の基本の手順を5つのポイントで紹介します。
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①工事写真は計画的に撮る
工事写真を撮る時機は、施工計画書の作成時には、すでに大まかなポイントがわかり計画的に撮ることが可能になります。発注者の監督員や自社の社内検査員が立ち会うとき、工程上の区切りとなる各施工段階などが明らかになるからです。
その他の詳細、実際に写真を撮影する位置や順番は、撮影日が近づいてからの設定で問題ありません。ただし、ぶっつけ本番的な撮影は避けたいです。
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②使用機器の確認
まず、使用するカメラのバッテリーの容量は十分か、所定の画素数やモードが選択されているかなどを確認します。特に、バッテリーは、現場に入ってしまうと一定時間は充電できなくなるので注意しましょう。
その他、工事黒板に当日撮影する作業の基本事項を記入したり、必要であれば三脚などを準備したりします
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③5W1Hを意識する
工事黒板の記入に5W1Hを意識することは周知のことですが、工事写真の撮影においても作業内容の流れを意識することは重要です。
当日施工する作業内容について、工事写真を見る誰もが理解しやすいように、5W1Hを意識しながら順序だてて撮影の段取りをつけるようにしましょう。
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④最適なアングルを探す
撮影する際には、その作業の内容を記録するのに最適なアングルを探しましょう。作業の目的がひと目見てわかり、記録すべき計器の数値が読みやすく、背景となる現場もきちんと整備されているなどの配慮が必要です。
作業者の服装や、保安施設の様子が写り込んでいる場合についても、チェックされても問題ない状態であることが求められます。
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⑤不要なものは撮らない
工事写真は、現場状況と同時に撮影する工事黒板に工事情報が記入されています。その写真が何を記録するためなのか目的が明確にされているということです。
その目的と関係のない不要なものは撮らないことです。例えば、建設機械による掘削状況を撮ろうとしているのに、残土を積んでいるダンプの写真しかないというのは困ります。
工事写真はポイントを押さえることが肝心で、量よりも質であることを覚えておいてください。
工事写真の仕様
公共工事では、発注者によって工事写真に関する適応基準が示されていることがあります。国土交通省の「写真管理基準(案)」などがその例です。
工事写真に関する管理項目について細かく示されているので、内容を精査して対応することが必要になります。
撮り方の注意点
国土交通省の「デジタル写真管理情報基準」では、工事写真の改ざん防止の観点から、基本的に工事写真の編集を認めていません。
撮影後の画像のトリミング、画像の補正、画像の加工はできないということになります。工事写真を撮影している過程で写真を確認し、ズームや露出機能、工事黒板の訂正などをしなければならないということです。
撮影した画像は、必ずその場で確認し、不備があれば撮り直すことを習慣にしてください。
現場ポケットの紹介

工事写真は、当該工事が設計図書や仕様書通りに施工されたことを証明する重要な記録となるものです。この工事写真業務を大幅に効率化するのが、現場効率化に特化したアプリ、「現場ポケット」です。
初期費用無料でランニングコストは基本11,880円(税込)/月というお手頃価格なのに、工事写真業務だけでなく、さまざまな機能を備えたアプリとなっています。
オプション費用は一切かからず、アカウント数・データ容量、現場登録数が無制限で、2ヶ月間の無料期間もあります。
工事写真業務を大幅に効率化する、現場ポケットの主な機能について紹介します。
アルバム機能
工事写真業務の効率化に大きく貢献するのが、現場ポケットのアルバム機能です。写真管理を無料トークアプリで行い、工事写真をトークに投稿すると自動でアルバムに保存していきます。
クラウド対応なので、すべての工事監理者がアプリでもPCでも、工事写真情報をリアルタイムで共有できます。
扱う工事写真の点数が多くアルバム整理が大変だった方、情報共有のタイムラグに不便を感じていた方などの業務をスマートに効率化することが可能です。
独自のタグ付き機能を使えば、工種などのキーワードを工事写真にタグ付けするとアプリが自動的にタグで写真整理してくれるので、関連キーワードを入力するだけで写真検索できるようになります。
報告書作成機能
現場ポケットでは、複数のデザインの報告書テンプレートが用意されており、アルバムから写真をテンプレートにはめ込んでいくだけで見やすい報告書が作成できます。
よく使用する定型文を登録しておくと、定型文を選択するだけで文字入力ができる定型文機能もついています。
報告書の作成に時間がかかってしまう、同じ文章を何度も入力するのが面倒だという方にぜひ使っていただきたい機能です。報告書機能を使うことで、報告書作成の作業時間を大幅に短縮できます。
トーク機能
現場ポケットの大きな特徴の一つが、トーク機能です。
トーク機能のグループ・チャットを使えば、現場単位で素早い情報交換と共有が可能です。また、周知したい重要事項は、掲示板にピン留めできるので見落とし防止に繋がります。
さらに、現場単位で顧客のファイルデータや住所などを一目で確認できる画面デザインとなっている点もおすすめです。
通常の無料通話アプリでは、現場ごとの情報管理に限界がありますが、現場ポケットならストレスなく管理することが可能となります。
まとめ
ここまで、工事写真と、その撮り方について以下の内容で解説しました。
- ・工事写真の概要
- ・工事写真の目的と撮るべき項目
- ・工事写真の撮り方の手順と注意点
- ・工事写真業務を大幅に効率化するアプリ「現場ポケット」の紹介
工事写真業務は、工事の進捗とともに日々変化する工事現場を記録する重要な業務です。そして、現場に携わる方にとって、多くの労力と時間を費やす業務でもあります。
現場ポケットを活用することで、工事写真業務を少しでも効率化し、現場の生産性向上を目指す検討をされてみることをおすすめします。