建設現場では、さまざまな種類の工程表を用いて現場管理を行います。ガントチャート工程表は進捗管理に適した工程表のひとつです。
そんなガントチャート工程表の概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
また、実際にガントチャート工程表を作成する際の手法も紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
ガントチャート工程表とは
ガントチャート工程表は、建築業界で工事工程を管理するために使用される工程表の一つです。
この工程表は以下のような特徴を有しています。
- ・作業の進捗状況を視覚的に把握しやすい
- ・項目別に作業を記録できるため、全体の工事内容を一目で確認可能
- ・進捗状況を10〜100%のパーセンテージで管理できる
これにより、誰がどの作業を担当しているのか、工事の進捗状況を簡単に把握することができます。
ガントチャート工程表のメリット
ガントチャート工程表には以下のようなメリットがあります。
- ・プロジェクトの全体像や進捗が一目でわかる
- ・作業の遅れやトラブルが発生している箇所の可視化
- ・進捗が把握しやすく、工事の管理が容易になる
それぞれ個別に解説していきましょう。
プロジェクトの全体像や進捗がひと目でわかる
ガントチャート工程表は、各作業の担当者や進行状況を視覚的に示します。これにより、誰がどの工程を担当しているのか、各作業の進捗状況が一目で把握でき、関係者全員で情報を共有することが可能です。
また、タスクの開始日や終了日、期間なども明確に表示されるため、プロジェクト全体のスケジュールを直感的に理解できます。
トラブルを見える化できる
ガントチャート工程表では、各作業の進捗状況をパーセンテージや色分けで視覚化できます。これにより、進捗が遅れている箇所や問題が発生している部分を迅速に特定できます。
早期に問題を発見することで、迅速な対応が可能となり、トラブルの事前回避や損失の最小化につながります。
さらに、依存関係のあるタスク間の遅延が他の作業に与える影響も把握しやすくなります。
工事の管理が容易になる
ガントチャート工程表のメリットとして、作業の進捗状況やトラブルの把握が容易になり、工事全体の管理が効率化されます。これにより、工程表の作成や調整にかかる時間を削減でき、他の重要な業務にリソースを割くことが可能となります。
また、関係者間のコミュニケーションが円滑になり、チーム全体の生産性向上にも寄与します。
ガントチャート工程表のデメリット
ガントチャート工程表はプロジェクト管理において多くの利点を提供しますが、以下のようなデメリットも存在します。
- ・トラブルが発生すると工程表を組み直す必要が生じる
- ・工程ごとに作業進捗がわかる反面、工数がわかりづらい
それぞれについて詳しく解説します。
トラブルが発生するとチャートを組み直す必要がある
ガントチャート工程表はプロジェクトの進捗状況を把握するのに適していますが、予期せぬトラブルや変更が発生した場合、工程の追加や削減が必要となることがあります。
このような場合にはガントチャートを再構築し、関係者全員に新たなスケジュールや変更点を共有し直す手間が生じます。特に大規模なプロジェクトでは、この再調整作業に時間と労力を要することがあります。
全体的な工数がわかりづらい
ガントチャート工程表は各タスクの進捗状況を把握しやすい反面、個々の作業に必要な工数を明確に示すことが難しい場合があります。
そのため、担当者が自身の作業量を正確に把握できず、結果として期限に間に合わなかったり、重要なタスクを見落とすリスクが生じます。
この問題を解決するためには、ガントチャートと併せてWBS(Work Breakdown Structure)などの手法を用いて、各タスクの詳細な工数を管理することが推奨されます。
これらのデメリットを認識し適切な対策を講じることで、ガントチャート工程表を効果的に活用することが可能となります。
工程表の種類
工程表には、ガントチャート工程表以外にもさまざまな種類が存在します。主な工程表として、以下のものが挙げられます。
- ・バーチャート工程表
- ・グラフ式工程表
- ・出来高累計曲線
- ・ネットワーク工程表
それぞれの特徴とメリット・デメリットについて解説していきましょう。
バーチャート工程表
「バーチャート工程表」とは、縦軸に作業項目、横軸に作業期間を記載し、名前の通り棒状に各作業の期間を表す工程表です。
全体のスケジュールや、各工程の日数を視覚的に把握しやすいのが特徴です。
メリット
- ・全体のスケジュールの流れや各工程の日数を把握しやすい
- ・工程表の作成が比較的簡単で、部分的な修正も容易
デメリット
- ・各工程間の関連性が不明瞭で、作業の進捗管理には向いていない
- ・部分的な修正が全体に及ぼす影響の把握が難しい
グラフ式工程表
「グラフ式工程表」とは、縦軸に作業の進捗率、横軸に作業の日数を記載し、進捗状況を曲線で表す工程表です。
バーチャート工程表とガントチャート工程表の特徴を併せ持ち、進捗把握に適しています。
メリット
- ・各作業の進捗状況を視覚的に把握しやすい
- ・進捗率と作業予定日時の両方が視覚的に捉えられ、作業ごとの関連性も簡単にわかる
デメリット
- ・工程間の関連性がわかりにくく、工程表の作成方法がやや複雑
- ・作成や理解に慣れるまで時間がかかる可能性がある
出来高累計曲線
「出来高累計曲線」は、縦軸に進捗率、横軸に日数を記載し、全体的な作業進捗を曲線で表す工程表です。
「工程管理曲線」や「Sカーブ」、「バナナ曲線」とも呼ばれ、全体の進捗確認に適しています。
メリット
- ・現在の進捗状況やスケジュールの遅れを一目で把握できる
- ・上方・下方許容限界曲線を用いることで、スケジュールの先行や遅れの許容範囲がわかる
デメリット
- ・各工程ごとの進捗は確認できない
- ・バーチャート工程表やガントチャート工程表よりも作成が難しい
ネットワーク工程表
「ネットワーク工程表」は、「〇」と「→」で工程期間を表し、作業の流れや各工程間の関連性を示す工程表です。作業の大まかな流れや関係性を把握するのに適しています。
メリット
- ・効率的なタスク管理が可能で、先に進めておくべきタスクや同時進行が可能なタスクが視覚的に把握できる
- ・現場の規模が大きく、工程数が多い場合に有用
デメリット
- ・各工程の進捗が記録できず、工程表の作成方法が複雑
- ・作成者や管理者には専門的な知識が必要で、進捗管理には適していない
ガントチャート工程表の作成方法
ガントチャート工程表の作成は、以下の手順で進めると効果的です。
- 1.プロジェクト全体の作業を洗い出す
- 2.作業の日程と担当者を決める
- 3.工程表を作成する
それぞれのステップについて詳しく解説します。
作業の洗い出し
まず、プロジェクトを完了させるために必要なすべてのタスクを洗い出します。この際、タスクを大まかに分類し、さらに細分化していくと、具体的な作業内容が明確になります。
ただし、過度な細分化は工程表の複雑化を招くため、適度な粒度でまとめることが重要です。
作業の日程や担当者を決定する
次に、各タスクの開始日と終了日を設定します。プロジェクトの最終納期から逆算し、各タスクの所要時間を考慮してスケジュールを組みます。
同時に、各タスクの担当者を割り当て、作業負荷が偏らないよう配慮します。
また、天候や予期せぬトラブル、担当者の体調不良などでスケジュールが変動する可能性を考慮し、余裕を持った計画を立てることが重要です。
工程表を作成する
最後に、洗い出したタスクと決定したスケジュール、担当者情報を基に、実際の工程表を作成します。多くの場合、Excelを使用してガントチャートを作成しますが、専用のツールやアプリケーションを利用する方法もあります。Excelでの作成手順としては、以下のようなステップがあります。
- 1.タスクの一覧を作成し、開始日と終了日を入力する
- 2.横軸に日付を設定し、縦軸にタスク名を配置する
- 3.条件付き書式を利用して、各タスクの期間をバーで表示する
工程表の作成時には、タスクの依存関係や優先順位も考慮し、全体の流れがスムーズになるよう調整します。また、作成後は関係者全員で共有し、必要に応じて修正や更新を行うことで、プロジェクトの進行を円滑に管理できます。
ガントチャート工程表の作成ポイント
ガントチャート工程表を効果的に作成するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- ・作業の関連性を明確にする
- ・作業を詰め込みすぎない
- ・担当者の配置を偏らせない
それぞれについて詳しく解説します。
作業ごとの関連性を明確にする
ガントチャート工程表は、各作業の進捗状況を視覚的に把握するのに優れていますが、作業間の関連性が分かりづらいという欠点があります。
この問題を解消するために、以下のような工夫を行うことで、改善が見込めます。
- ・色分け
関連する作業を同じ色で表示することで、視覚的に関連性を強調します。 - ・配置の工夫
関連性の高い作業を近くに配置し、流れを分かりやすくする - ・矢印や線の使用
作業間の依存関係を矢印や線で示すことで、関係性を明確にする
これらの工夫により、作業間の関連性を直感的に理解しやすくなります。
作業を詰め込みすぎない
ガントチャート工程表に過度に多くの作業を詰め込むと、以下のような問題が発生する可能性があります。
- ・視認性の低下
情報量が多すぎて、全体像が把握しづらくなる - ・柔軟性の欠如
スケジュール変更時の調整が困難になり、迅速な対応が難しくなる
これらの問題を避けるために、重要な作業に焦点を当て、適度な情報量を維持することが重要です。
担当者の配置を偏らせない
表を作成する上で、担当者の配置をまとめるような作り方は避けましょう。
一見、担当者がどの作業を行えば良いのか把握しやすくなるといった利点があるように思えますが、作業の連続性や全体的な作業の流れがわかりづらくなってしまうという欠点があります。
また、進捗状況の更新はできるかぎりプロジェクトメンバー間で共有できるように、作業員全員が進捗状況を報告・確認する義務を作っておくと良いでしょう。
ガントチャート工程表を作成できるツール
ガントチャート工程表を作成するために使用されるツールはおもに2つ、エクセルと現場管理アプリです。
それぞれ特徴があり、エクセルはPCさえあれば大抵の場合導入されているため、誰でも利用することができますが、表の作成にはエクセルに対してある程度の知識が求められます。
また、スマートフォンやタブレットの管理にはあまり適しておらず、現場にPCを用意したり、事務所と往復しなければならないというデメリットが存在します。
現場管理アプリはスマートフォンやタブレットでも利用可能な、現場管理に必要な機能を簡単に利用できるアプリです。
ガントチャート工程表をはじめとした様々な工程表を作成することができる他、あらかじめ用意されている機能を使用するだけなので、操作が簡単というメリットがあります。
そのため、導入する余裕がある場合は現場管理アプリを利用することで工程表作成・管理を楽にすることができます。
エクセル
エクセルは、多くのPCに標準搭載されているため、追加のコストをかけることなく利用できます。
また、テンプレートや関数を活用すれば、簡単にガントチャート工程表を作成できる点が大きなメリットです。
ただし、エクセルは、事務所での工程表作成や全体的な管理に適していますが、現場でのリアルタイム更新や共有には向いていません。
そのため、現場作業員が頻繁にスケジュールを確認する必要がある場合は、他のツールを併用することが望ましいでしょう。
メリット
- ・導入コストがかからず、既存の環境で利用できる
- ・自由度が高く、プロジェクトに応じたカスタマイズが可能
- ・条件付き書式や関数を活用することで、進捗管理を自動化できる
デメリット
- ・エクセルの基本的な操作知識が必要で、特に関数の活用にはスキルが求められる
- ・スマートフォンやタブレットでの操作には適しておらず、現場での即時対応が困難
- ・作業内容が細かくなると、スケジュール管理が煩雑になり、更新作業の手間が増える
現場管理アプリ
現場管理アプリは、スマートフォンやタブレットを利用して、どこでも手軽に工程表を確認・更新できるツールです。
専用の機能が豊富に搭載されており、工程表の作成・管理が簡単に行えるため、エクセルと比較してより効率的な管理が可能です。
現場管理アプリは、リアルタイムで進捗を把握したい場合や、複数の関係者とスムーズに情報を共有したい場合に最適です。
特に、プロジェクトの変更が頻繁に発生する現場では、アプリを活用することで迅速な対応が可能となります。
メリット
- ・クラウド上でリアルタイムに情報を更新・共有できる
- ・操作がシンプルで、専門知識がなくても直感的に工程表を作成・修正できる
- ・現場でスマートフォンやタブレットを使って即座に確認・調整が可能
デメリット
- ・導入にはコストがかかる場合が多く、継続的な運用には月額や年額の料金が必要
- ・インターネット接続が必須で、電波の悪い現場では使いづらい場合がある
- ・操作に慣れるまでの教育や、既存の業務フローへの適応が必要
現場ポケットの紹介

現場管理アプリの利用を検討している、気になっているという方におすすめの現場管理アプリとして、「現場ポケット」をご紹介します。
現場ポケットは、工程表の作成やPDFへの変換など、多彩な機能を一つのアプリで利用できる現場管理ツールです。
2025年1月時点で、導入実績は35,000人以上、契約更新率は約95%と、高い実績を誇るアプリです。
直感的な操作性で簡単に工程表を作成でき、1つの現場だけでなく、複数の現場を一覧形式で確認することができるため、複数現場を担当している方でも問題なく利用できます。また、スマートフォンやタブレット1つで、どこからでも工程表の作成や進捗管理が可能となり、作業効率を大幅に向上させ、出面管理にかかる時間を短縮できます。
さらに、アカウント数やデータ容量の追加といった追加課金がなく、年間契約費用のみで利用できる点も魅力です。利用料金は税込みで11,880円/月で利用可能です。
工程表の作成を効率化したい方や現場管理アプリを試してみたい方は、ぜひ「現場ポケット」の利用を検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
以上、ガントチャート工程表について解説しました。今回の記事の内容をまとめると以下の通りになります。
- ・ガントチャート工程表は、プロジェクトの進捗状況の確認に適した工程表。
- ・作業ごとの進捗状況を視覚的に把握しやすいが、工程の流れや工数の詳細把握が難しい。
- ・バーチャート工程表は、ガントチャート工程表と類似しており、工程ごとの内容把握に適している。
- ・グラフ式工程表は、ガントチャート工程表とバーチャート工程表を組み合わせたもので、工程ごとの進捗率の把握に適している。
- ・出来高累計曲線は、全体の進捗管理に適しており、プロジェクト全体の進捗度合いを確認しやすい。
- ・ネットワーク工程表は、「◯」と「→」を使用して表現され、工程の流れや工数の関係性を明確に把握するのに適している。
- ・工程表の作成には「エクセル」と「現場管理アプリ」の2つのツールが利用可能。
工程表にはさまざまな種類があり、それぞれに適した用途があります。
特に、現場管理アプリを活用することで、工程表の作成・管理の負担を軽減し、より効率的にプロジェクトを進めることができます。
プロジェクトの規模や管理体制に応じて、適切な工程表とツールを選び、効果的に活用していきましょう。