建設工事の施工管理には、工程管理、品質管理、安全管理、原価管理、環境管理があります。なかでも工程管理は、着工から竣工までの全期間を通じて、工事の進捗を管理するために欠かせないものです。
工程管理の中心的なツールである工程表は、工事工程全体のフローを見える化し、工事関係者全員に周知されるので「わかりやすさ」が求められます。
この記事では、工程表の概要と目的や役割、工程表の種類と作成方法について解説します。また、現場の生産性向上に特化し、工程管理業務を大幅に効率化する「現場ポケット」も紹介していますので参考にしてください。
工程表とは
建設業の工程表は、発注者が求める基準をクリアしている目的物を建設するために必要な工事工程を時系列でまとめた表です。
工程表を確認することで、契約で定められている工期の範囲内における、必要な工種の作業を漏れなく施工するための順番がわかるものです。
施工管理では、この工程表に沿って、各工種の施工に必要な期間、人員、資材、機器、建設機械などの配置を行います。そして、各施工が滞りなく工程表の計画通りに進行したかを日々確認し、状況によっては調整します。
このように、工程表は、工事の順当な進捗に欠かせないものであり非常に重要です。以下で、工程表作成の目的と役割、作成手順と注意点の概要を解説します。
工程表作成の目的と役割
工程表を作成する目的と役割には、工期の厳守、作業効率アップ、トラブルへの適切な対処という3つのポイントがあります。それぞれについて説明します。
工期の厳守
建設工事において工期は契約で定められており、施工会社の都合による「工期割れ」は認められません。
工期割れが起きると、施工会社の社会的信用は失われ、以降の請負工事の獲得にも多大な影響を及ぼします。そのため、工期の厳守は、施工会社にとって絶対に必要なものです。
この工期の厳守のために、工程表は大きな役割を果たします。実際の現場の工程が予定通りに進んでいるかをチェックするベースになるからです。
適正な工程表があれば、この工種で何日遅れたから、次のこの工種では遅れた分を取り戻すというような調整が可能になります。
作業効率アップ
工程表といえば、工事の着工から竣工までのすべての期間を通じて、建設現場全体の流れを確認できる全体工程表(総合工程表)がイメージされるかと思います。
しかし、工程表には、その他にも細部工程表、年間・月間、週間工程表などがあります。このような工程表を作成する理由の一つが現場の作業効率アップです。
各工程表に表された計画に基づき、作業に必要な人材の配置を決め、各協力会社の車両の進入経路や駐車スペースの調整をします。また、あらかじめ作業の段取りをして、必要な資材や機器、建設機械を手配することも可能です。
以上のような事前準備をすることで、現場の動きにムリやムダがなくなり、効率的な施工を行うことができるようになります。
トラブルへの適切な対処
工程表は、現場で発生した想定外のトラブルへの適切な対処にも有効です。トラブル発生で遅れた工程を取り戻すため、本来予定していた人員や建設機械を前倒しで現場に投入する必要があるときも、工程表があれば容易に調整することができます。
適切な工程表がなく、計画性のない現場では、右往左往するばかりで現場は回っていきません。
ただし、施工管理では調整不可能な悪天候や国際情勢の影響で、工程が大幅に遅れる場合もあります。そういうときも工程表があれば、遅れや復旧の期間を合理的に関係各所に報告できます。
工程表の一般的な作成手順
建設業における工程表の一般的な作成手順の概要を以下にまとめました。
- ① 必要な情報を基に工事の全体像を把握する
- ② 各工種と付随する各作業項目を抽出する
- ③ 作業項目の詳細を実績に基づいて割り出す
- ④ 作業で必要となる所要時間を実績から設定する
- ⑤ 作業項目を時系列に沿って再配置する
- ⑥ 作業間のスケジュールを具体的に調整する
- ⑦ 最終確認後、各関係者に周知・共有する
必要な情報とは、設計図書、仕様書、施工計画書などのことです。これらをベースに、これまでの同種工事での実績や知見を基に作成することで実現性の高い工程表を作成できます。
工程表は、会社から任命された現場責任者を中心に作成するのが一般的です。その後、自社の管理部門などが確認して調整後に発注者へ提出されます。
工程表作成の注意点
工程表作成の注意点で、最大のポイントは見やすさとわかりやすさです。工程表は、現場作業者や協力会社の職員、発注者まで多数の関係者が見るものなので、誰にとっても理解しやすいデザインや構成を心がけましょう。
工程表は、自社専用のテンプレートを用意したり、一定のルールを決めたりしておくと便利です。そうすると工事ごとに作成者が違っても、いつも同様の工程表を共有できますし、トラブルがあったときの対応も迅速になります。
工程表の種類
工程表には、いくつか種類があり、その特徴を理解しておくことが必要です。そのうえで当該工事に合った適切な種類を選択します。
ここでは、代表的な工程表を5つ説明します。
バーチャート工程表
バーチャート工程表は、縦軸に工種名及び作業名、横軸には時間(日時)を記載して、バー(横棒)で各作業の進捗状況を表します。
短い時間で作成できるうえに、修正や管理も容易に行えます。現場の作業工程が一目で把握できるのが特徴となっています。
ただし、他の作業との関連性や繋がりがわかりにくいため、大規模で複雑な工事では使いにくい工程表です。
ガントチャート工程表
ガントチャート工程表は、縦軸に作業名、横軸に作業の進捗率を記載します。作業ごとの期間や担当者を記入し、マイルストーン(目標設定した経過点)で、工程の進捗を管理することができます。
工事の全体像を見える化できて管理しやすく、トラブルや遅延もすぐに把握できますが、作成に手間がかかり具体的な工数はわかりにくいです。
不測の事態で遅延やトラブルが発生すると、工程を一から組み直す必要があるため、変更の多い現場には不向きです。
ネットワーク工程表
ネットワーク工程表は、タスク(作業)ごとにかかる日数、各タスクの関連性や繋がりが視覚的に把握できます。規模が大きく、多数の工種がある建築工事で利用されることが多い工程表です。
最も時間がかかる工事ルートの特定や、竣工までの最短期間を求めることが可能で、工期の適切な短縮を検討したいときにも有効です。
ただし、専門的な用語や覚える表記ルールが多いため、作成の難易度は格段に高くなります。また、各作業の進捗状況は把握できないので、他の工程表との併用が必要でしょう。
グラフ式工程表
グラフ式工程表は縦軸に進捗率、横軸に日付を記入し、バーではなくグラフで進捗度を表します。バーチャート工程表やガントチャート工程表と同様に、各作業の進捗状況を視覚的に捉えることができます。
難点は、作業間の相互関係がわかりづらいことで、特に一部に変更があった場合の全体への影響度がつかめません。
作成の複雑さは、バーチャート工程表やガントチャート工程表に比べると高くなります。
出来高累計曲線
出来高累計曲線は、作業量や進捗を曲線で表す工程表です。工事の進捗度をSカーブで表記するため、カーブの曲がり度合いで工事の進捗を確認できるのが特徴です。
大規模な工事で活用されることが多く、予定と実績のズレが早期に発見できます。ただし、複雑な工種が多岐にわたると把握しづらくなり、工事の詳細や問題点の把握は難しい工程表です。
工程表の作成方法
工程表の作成方法として、従前からあるやり方の主なものには、紙に手書きする、エクセルで作成する、ホワイドボードで作成するなどがあります。それぞれについて解説します。
紙で作成する方法
紙で工程表を作成するときは、A3やA4の用紙を使うことが多いです。この用紙に罫線を引き、縦軸に作業項目、横軸に日付や週を記入します。
表の実線を点線や破線にしたり、マーカーで色を付けたりして見やすく整えることもあります。
特別なツールを必要とせず、誰でも簡単に作成できるのがメリットです。
しかし、修正が重なると、修正前の字や数字が残って見えづらくなります。最新版を関係者と共有する際も手間がかかります。
一定以上の規模の工事や複雑な工事では、紙で作成した工程表を使うことはなくなっているのが現状です。
エクセルで作成する方法
エクセルで工程表を作成するには、新規ブックで1から作成する場合と、ネット上にあるテンプレートで作成する場合があります。
ネット上には多種多様のエクセル工程表のテンプレートがあり、さらに自分でアレンジできるものがほとんどなのでおすすめです。基本的には、テンプレートの項目や枠に従って入力するだけで工程表を完成できます。
知識があって可能であれば、表内にマクロや関数を設定すると、自動計算や自動更新が可能になり作成後の管理が楽になります。
注意点としては、エクセルはバージョンごとに仕様が異なるため、古いバージョンで作成すると他のパソコンで使用できないケースがあることです。また、エクセルはリアルタイムでのデータ共有には向いていないので、共有の際には更新漏れがないかの注意が必要です。
ホワイトボードで作成する方法
工程表をホワイトボードで作成するケースもあります。一般的に、縦軸に作業名、横軸に日付を記入して、予定所用日数分に横線を引いて表します。
紙に手書きするのと同様、スマホやパソコンなどの電子機器の必要はなく、誰でもいつでも作成可能です。
しかし、ホワイトボードでは過去の情報の把握や保存はできず、現場でしか工程表を確認することができないため関係者との共有もできません。
現場ポケットの紹介

エクセルで現場の工程管理をすることに限界を感じていたり、複数現場の進捗状況をリアルタイムで共有したりしたい方におすすめなのが現場の効率化に特化したアプリ、「現場ポケット」です。
現場ポケットは、初期費用無料でランニングコストは基本11,880円(税込)/月というお手頃価格なのに、工程管理だけでなく、さまざまな機能を備えたアプリです。
オプション費用は一切かからず、アカウント数・データ容量、現場登録数が無制限で利用可能です。
現場の工程管理を大幅に効率化する、現場ポケットの主な機能について紹介します。
工程管理機能
現場ポケットがあれば、テンプレートを活用して工程表作成の時間を大幅に短縮できます。さらに、取引先別などの目的別帳票も簡単に出力可能です。
工程表の情報共有が簡単・確実なので、電話やメールでの進捗確認を省略できます。急な工程変更が発生した場合は、掲示板への投稿や個別メッセージの送信も行えます。
各工程の進捗や作業責任者、施工期間などを一目で確認できるので、情報共有の省力化が容易です。
複数現場をリアルタイムで確認できるので、現場間のさまざまな調整を円滑に行うことができます。
報告書機能
現場ポケットには、複数のデザインの報告書テンプレートが用意されているため、情報をテンプレートに取り込んでいくだけで見やすい報告書が作成できます。
よく使用する定型文を登録しておくと、定型文を選択するだけで文字入力ができる定型文機能もついているので便利です。
報告書の作成に時間がかかってしまう、同じ文章を何度も入力するのは面倒という方にぜひ使っていただきたい機能です。
報告書機能を使うことで、報告書作成の作業時間を大幅に短縮できます。
日報・アルバム・トーク機能
現場ポケットの日報機能、アルバム機能、トーク機能を駆使すれば、現場管理業務を大幅に効率化できます。以下に各機能の概要をまとめました。
・日報機能
現場の勤怠管理を可視化し、現場別、職人別の作業人工を個別集計して、ファイルで出力することができます。
・アルバム機能
工事写真をトークに投稿すると、自動でアルバムに保存していきます。クラウド対応なので、PCでもアプリでもリアルタイムで共有可能です。独自のタグ付き機能を使えば、アプリが自動的にタグで写真を整理してくれます。
・トーク機能
現場ポケットにはトーク機能があり、現場単位でグループ・チャットが可能で、素早い情報交換と共有ができます。
まとめ
ここまで、建設業の工程管理に必須の工程表について以下の内容で解説しました。
- ・工程表の定義と目的や役割
- ・工程表の作成手順と注意点
- ・工程表の種類
- ・従前からある工程表の作成方法
- ・工程表作成を含む工程管理を効率化するアプリ「現場ポケット」の紹介
工程表作成を含む工程管理をサポートし、大幅に効率化して現場の生産性向上に貢献するのが「現場ポケット」です。
「現場ポケット」は、その機能性の高さとコスパの良さで、建設業関係者から高い評価を得ています。ぜひ一度検討されてみることをおすすめします。