工程表は、プロジェクトの進行状況や作業の進捗率、工数などを把握するために欠かせないツールです。
しかし、見づらい工程表はヒューマンエラーやトラブルの原因となることがあります。
この記事では見やすい工程表を作成する目的から、実際の作り方までを網羅しております。
記事では、初心者の方でも理解しやすく、見やすい工程表の作成方法を解説します。建設現場で利用されるさまざまな工程表についての解説もしているので、工程表作りに悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください。
見やすい工程表を作る目的
建築現場において、工程表は作業員が効率的に業務を遂行し、プロジェクト全体の流れや進捗を把握するために必要不可欠です。そのため、工程表には見やすさやわかりやすさ、そしてトラブルなどによる変更に対応できる柔軟性が求められます。
見づらい工程表が原因で発生するトラブルには、以下のようなものがあります。詳細については、後述して解説します。
- ・着工や作業の遅れ
- ・計画変更・修正ができない
- ・人材育成への活用
上記の要素を改善することで、業務をより効率的に進めることが可能です。見やすい工程表を作成することで、他の作業員の作業効率が向上し、ミスを減らすことができます。
また、工程表を管理する担当者の負担も軽減されます。時間短縮と効率化により、他の作業にリソースを割くことができ、プロジェクト全体の利益率も向上するでしょう。
着工や作業の遅れ
工程表には着工日や作業の大まかな予定、最終的な納期などが記載されています。しかし、これらの予定は必ずしも想定通りに進むとは限りません。
見づらい工程表では、作業員が自分の担当するべき工程を見逃したり、全体的な工数を把握できず、想定よりも遅いペースで作業を進めてしまうことがあります。
その結果、着工日が遅れたり、作業の進捗が計画よりも遅延するなど、プロジェクト全体の遅れにつながります。
計画変更・修正ができない
建築現場では、プロジェクトの変更や調整、追加などが頻繁に発生します。天候不良や現場での事故、作業員の体調不良など、さまざまな要因で工程表の修正が必要になることがあります。
この際、工程表が複雑で見づらいと、追加・変更された工程を作業員が把握できず、適切に対応できない場合があります。
そのため、工程表には見やすさだけでなく、変更や修正に対応できる柔軟性も必要です。
人材育成への活用
新人教育や若手育成の一環として、工程表を用いることがあります。
例えば、全体的な工程や工数の把握を行うために、工程表を模写させたり、実際に工程表を作成させるといった方法が取られます。
この際、参考となる工程表が見づらいと、理解に時間がかかり、正しく把握できない可能性があります。
また、その結果として同じように見づらい工程表を作成してしまうかもしれません。
より良い人材を育成するためにも、見やすい工程表を作成する技術は必要不可欠です。
見やすい工程表とは
見やすい工程表とは、情報を適切に整理し、誰もが直感的に理解しやすい形でまとめられたものを指します。見やすい工程表を作成するためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
以下のポイントを抑えておくと見やすい工程表であると言えるでしょう。
- ・専門的な用語を控え、わかりやすい用語を使用する
- ・一度に目にする情報量を適切に調整する
- ・シンプルなデザインにする
- ・変更や修正に対応できる柔軟性を持たせる
それぞれのポイントについて解説していきましょう。
わかりやすい用語を使用する
工程表は現場の作業員だけでなく、発注者や他部署の担当者など、さまざまな関係者が目にします。そのため、専門用語を多用せず、誰もが理解できるような表現を使用することが重要です。
例えば、建築専門の用語や略語ばかりを使うと経験の浅い作業員や外部の関係者にとって理解が難しくなります。
建設業界に馴染みのない人でも容易に把握できるように、一般的な表現に言い換えることを心がけましょう。
情報量を増やしすぎない
工程表の目的は、作業の進捗状況や担当業務を瞬時に把握することにあります。過度な情報を詰め込みすぎると、必要な情報を見つけるのに時間がかかり、かえって非効率になります。
そのため、項目ごとに必要最低限の情報を簡潔に記載し、レイアウトをシンプルにまとめることが求められます。特に以下の点に注意しましょう。
- ・重要なポイントを強調する
- ・無駄な情報は削減する
- ・読み手がすぐに必要な情報にアクセスできるよう工夫する
シンプルなデザインで作成する
工程表は、実務において迅速な判断を求められるツールです。そのため、過度なデザインや装飾は避け、視認性を最優先に考慮する必要があります。
具体的には、以下の点を意識して作成しましょう。
- ・色使いはシンプルに抑え、強調が必要な部分のみ異なる色を使用する
- ・フォントや文字サイズを統一し、読みやすさを確保する
- ・必要な情報を整理し、過剰な要素を省く
こうした工夫により、工程表の可読性が向上し、作業員や関係者がスムーズに業務を遂行できます。
ある程度の柔軟性を確保する
建設現場では、天候や予期せぬトラブルによるスケジュール変更が頻繁に発生します。そのため、工程表は修正や変更に対応できる柔軟性を備えている必要があります。
具体的な対策として、以下のような点が挙げられます。
- ・各項目の間に適度な余白を設け、修正が容易にできるようにする
- ・修正履歴を管理できるフォーマットを採用する
- ・追加情報の記入スペースを確保する
余裕を持たせた工程表にすることで、突発的な変更にも迅速に対応でき、プロジェクトの進行を円滑に進めることができます。
見やすい工程表の作り方
見やすい工程表を作成するための方法を解説します。
工程表の作成は下記の手順で行われます。
- 1.施工範囲や手順の選定
- 2.施工期間の設定
- 3.人材配置や機材の配分決定
- 4.工程表の種類の選定
- 5.工程表の作成
それぞれのステップについて詳しく解説していきましょう。
施工範囲・手順の設定
まず、各現場で必要となる施工範囲や手順を明確にし、作業を単位ごとにまとめます。見やすい工程表を作成するコツとして、段階的にマイルストーンを設定しておくと、現在の進捗が全体のどの程度まで進んでいるかを一目で把握できます。
施工期間の設定
施工内容が決定したら、次に施工にかかる期間や着工日を設定します。作業全体に割り当てる時間や最終的な納期を考慮し、余裕を持った期間を設定することが望ましいです。
あまりに短すぎる施工期間や、各作業に詰め込みすぎたスケジュールは、作業員にプレッシャーを与え、ミスやトラブルの原因となります。
人材や機材の配分を決定する
工事に必要な機材を、作業内容や施工範囲から逆算して洗い出し、どのように配分するかを決定します。また、プロジェクトに携わる作業員の担当工程も決定します。
偏りなく、スケジュールに無理が生じないよう配慮しましょう。
工程表の種類の選定
工程表にはいくつかの種類があり、主に以下のものが存在します。
- ・バーチャート工程表
- ・ガントチャート工程表
- ・グラフ式工程表
- ・出来高累計曲線
- ・ネットワーク工程表
それぞれ特徴があり、目的に応じて適したものを選ぶことが重要です。どれが一番良いというわけではなく、プロジェクトの目的や内容に応じて最適な工程表を選定しましょう。
バーチャート工程表の特徴
- ・全体のスケジュールの流れや各工程の日数を把握しやすい
- ・工程表の作成が比較的簡単で、部分的な修正も容易
- ・各工程間の関連性が不明瞭で、作業の進捗管理には向いていない
- ・部分的な修正が全体に及ぼす影響の把握が難しい
ガントチャート工程表の特徴
- ・作業の進捗状況を視覚的に把握しやすい
- ・進捗状況をパーセンテージで管理できる
- ・項目別に作業を記録できるため、全体の工事内容を一目で確認できる
- ・全体の進捗率を把握することが難しい
グラフ式工程表の特徴
- ・各作業の進捗状況を視覚的に把握しやすい
- ・進捗率と作業予定日時の両方が視覚的に捉えられる
- ・作業ごとの関連性も簡単にわかる
- ・工程間の関連性がわかりにくく、工程表の作成方法がやや複雑
- ・作成や理解に慣れるまで時間がかかる可能性がある
出来高累計曲線の特徴
- ・現在の進捗状況やスケジュールの遅れを一目で把握できる
- ・上方・下方許容限界曲線を用いることで、スケジュールの先行や遅れの許容範囲がわかる
- ・各工程ごとの進捗は確認できない
- ・バーチャート工程表やガントチャート工程表よりも作成が難しい
ネットワーク工程表の特徴
- ・円や→で作業の流れや工程間の流れ・関連性を表す
- ・先に進めておくべきタスクや同時進行が可能なタスクが視覚的に把握できる
- ・現場の規模が大きく、工程数が多い場合に有用
- ・各工程の進捗が記録できず、工程表の作成方法が複雑
- ・作成者や管理者には専門的な知識が必要で、進捗管理には適していない
工程表の作成
上記のステップを踏まえ、実際に工程表を作成します。
ここまで解説した内容をまとめた、見やすい工程表を作成するためのポイントは以下の通りです。
- 1.視覚的に分かりやすいデザイン
色分けやフォントサイズの工夫で、情報を整理しやすくする - 2.情報の一貫性
用語や記号の使い方を統一し、混乱を避ける - 3.更新のしやすさ
進捗状況に応じて柔軟に更新できるフォーマットを選ぶ
これらのポイントを押さえることで、誰が見ても理解しやすい工程表を作成することができます。
また、工程表の作成は主に下記のツールを用います。
- ・紙媒体
- ・エクセル
- ・現場管理アプリ
各ツールにはメリット・デメリットがあり、上記の順に紹介していきます。
紙媒体の特徴
メリット
- ・書類形式で形が残るため、他人へ共有しやすい
- ・実物として保存することができる
- ・テンプレートが用意されている場合、作成が容易
- ・現場で直接記入作業を行うことができる
デメリット
- ・物理的な紛失の可能性がある
- ・柔軟性が低く、変更や修正が難しい
エクセルの特徴
メリット
- ・多くのPCで導入されており、利用が容易
- ・テンプレートが用意されている場合、作成が容易
- ・関数を利用して正確なデータ管理が可能
- ・プリントアウトして紙媒体としての共有も可能
デメリット
- ・PC環境で管理しなければならず、現場にPCを用意しないとオフィスとの行き来が必要
- ・一から作成する場合、専門的な知識が必要
現場管理アプリの特徴
メリット
- ・工程表を作成するための機能があらかじめ用意されている
- ・初心者や知識のない方でも簡単に利用可能
- ・工程表の作成以外にも現場管理に関する機能が利用できる
- ・複数の工程表を作成・管理できる
- ・スマートフォンやタブレットなどの携帯端末で利用可能
デメリット
- ・導入コストがかかる場合がある
- ・導入の際に使用方法の共有などを行う必要がある
初心者には現場管理アプリの使用がおすすめ!
これまで工程表を作成したことがない方や、エクセルなどの専門知識に自信がない方には、現場管理アプリの活用がおすすめです。現場管理アプリを使用することで、手軽に工程表を作成できるだけでなく、さまざまな種類の工程表を作成することが可能です。そのため、プロジェクトの目的や規模に応じて、複数の工程表を簡単に用意することができます。
また、多くの現場管理アプリには、動画や画像を活用して作業状況を記録・共有できる機能が備わっています。これにより、現場で発生したトラブルや進捗状況をリアルタイムで関係者と共有し、迅速な対応が可能となります。例えば、施工現場の状況を動画で記録しておくことで、工程の進行を可視化し、問題点の把握や報告をスムーズに行うことができます。
さらに、近年は社会全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められており、デジタルツールの導入による業務の効率化が重要視されています。現場管理アプリの導入は、このようなDX化の流れに適応した手段であり、紙媒体やエクセルを用いた従来の方法に比べ、より効率的かつ正確な情報管理を実現することができます。
現場ポケットの紹介

現場管理アプリの利用を検討している、気になっているという方におすすめの現場管理アプリとして、「現場ポケット」をご紹介します。
現場ポケットは、工程表の作成に必要な機能をはじめ、写真管理やPDFへの変換などの多彩な機能を一つのアプリで利用できる現場管理ツールです。
2025年1月時点で、導入実績は35,000人以上、契約更新率は約95%と、高い実績を誇るアプリです。
直感的な操作性で簡単に工程表を作成でき、1つの現場だけでなく、複数の現場を一覧形式で確認することができるため、複数現場を担当している方でも問題なく利用できます。また、スマートフォンやタブレット1つで、どこからでも工程表の作成や進捗管理が可能となり、作業効率を大幅に向上させ、出面管理にかかる時間を短縮できます。
初心者の方でもラクに工程表を作成することができるため、経験が無い方でも見やすい工程表を作ることができるでしょう。
さらに、アカウント数やデータ容量の追加といった追加課金がなく、年間契約費用のみで利用できる点も魅力です。利用料金は税込みで11,880円/月で利用可能です。
工程表の作成を効率化したい方や現場管理アプリを試してみたい方は、ぜひ「現場ポケット」の利用を検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
以上、見やすい工程表について解説を行いました。今回の記事の内容をまとめると以下の通りになります。
- ・工程表が見づらいとミスやトラブルの原因になる
- ・工程表が見やすいと業務効率が良くなり、作成する際の負担が減る
- ・見やすい工程表を作るには専門的な用語はひかえ、わかりやすい用語を使う
- ・見やすい工程表を作るには一度に目にする情報量を限定する
- ・見やすい工程表を作るにはシンプルなデザインにする
- ・見やすい工程表を作るには変更や修正に対応できる余裕を作る
- ・工程表は紙媒体やエクセル、現場管理アプリを使用する
- ・初心者でもわかりやすい工程表を作るなら現場管理アプリがおすすめ
適切なツールを使うことで効率よく簡単に作成することができます。DX化が求められるこの時代において、現場管理アプリを活用した工程表のデジタル化は一つの選択肢であると言えるでしょう。