建設業において人工代の請求書作成は正確で明確な記載が求められます。適切な請求書を作成することで、取引先との信頼関係を築き、スムーズな支払いを促進できます。
本記事では人工代の請求書作成のポイントや注意点をわかりやすく解説します。
これにより、請求業務の効率化と正確性の向上に役立てていただけるでしょう。また、一人親方の場合での請求書作成方法についても触れていくので、一人親方の方も是非参考にしてください。
適切な請求書の作成は、取引先との信頼関係を築く上で非常に重要です。
今回の記事では人工代の請求書作成時に押さえておくべきポイントや、書き方について解説します。
人工代とは?
建設業界では、「人工代(にんくだい)」という概念が存在します。これは、作業員一人が一日(通常8時間)働く際の人件費を指します。
例えば、1日あたりの人工代が30,000円の場合、3日間の作業で合計90,000円となります。このように、人工代は労務費の計算や見積もりを行う際の基本単位として重要な役割を果たします。
人工代は作業の種類や地域、作業員の能力によって異なります。
国土交通省が公表している「公共工事設計労務単価」を参考にすると、職種ごとの平均的な人工代を把握することができます。例えば、普通作業員の全国平均は約21,818円、特殊作業員では約25,598円とされています。
これらの数値は年々変動するため、最新の情報を確認することが重要です。
人工代の計算方法は、「人工代 = 人工単価 × 作業員数 × 作業日数」の式で算出することができます。
例えば、人工単価が25,000円で、3人の作業員が10日間作業した場合、総人工代は750,000円となります。この計算により、工事全体の人件費を正確に把握することが可能です。
人工代は建設業におけるコスト管理や見積もり作成において欠かせない要素です。適切な人工代の理解と計算は、プロジェクトの成功に直結します。そのため、最新の労務単価情報を常に確認し、正確な人工代を算出することが求められます。
人工代の請求書に記入する項目
建設業において人工代の請求書を作成する際、正確で詳細な記載が求められます。
正しく項目を明記することで、取引先との信頼関係を築き、スムーズな支払いを促進できます。
人工代の請求書に必要な主な項目は下記のようなものがあります。
- 1.請求書の宛先
- 2.請求書の発行者情報
- 3.請求書の発行日
- 4.請求内容の詳細
- 5.数量と単価
- 6.金額の計算
- 7.振込先情報
- 8.支払期限
- 9.請求書番号
- 10.備考
以上の項目を正確に記載することで、人工代の請求書を適切に作成できます。これにより、取引先との円滑なコミュニケーションと信頼関係の構築が期待できるでしょう。
それぞれ個別に解説していきます。
請求書の宛先
請求先の会社名・部署名・担当者名を正確に記載します。
会社名には「御中」、担当者名には「様」を付けるのが一般的です。事前に正式名称を確認しておくと良いでしょう。
請求書の発行者情報
自身の会社名・住所・電話番号・担当者名などの連絡先を明記します。
これにより、取引先が問い合わせや確認を容易に行えます。
請求書の発行日
請求書を作成した日付を記載します。
支払い期限の設定や取引の記録に重要な情報となります。
請求内容の詳細
提供した作業やサービスの内容を具体的に記述します。
例えば、「屋根修理作業」「給水管設置」「内装塗装作業」など、実際に行われた作業を明確にします。
数量と単価
作業員の人数と作業日数を掛け合わせた「数量」を記載し、単位は「人工」でカウントします。
単価には、1人あたりの金額を記載します。例えば、3人が5日間働いた場合、数量は「15人工」、単価は「30,000円」となります。
金額の計算
数量と単価を掛け合わせて金額を算出し、小計、消費税額、合計金額を明記します。
消費税率が異なる項目がある場合は、それぞれ分けて記載するとわかりやすいでしょう。
振込先情報
支払いを受けるための銀行口座情報を記載します。具体的には、銀行名・支店名・口座種別(普通・当座)・口座番号・口座名義(カタカナ表記)を明記します。
支払期限
請求金額の支払期限を明記します。
「〇年〇月〇日までにお支払いください」などと具体的な日付を記載することで、支払いの遅延を防止できます。
請求書番号
請求書に固有の番号を付けることで、後の管理や参照が容易になります。
番号の付け方に特に決まりはありませんが、日付や連番を組み合わせると整理しやすいでしょう。
備考
特記事項や注意点があれば、備考欄に記載します。
例えば、振込手数料の負担者や、支払いに関する特別な取り決めなどを明記すると、双方の認識違いを防げます。
人工代の請求書の書き方
建設業における人工代の請求書を作成する際、正確で詳細な記載が求められます。適切な請求書の作成は、取引先との信頼関係を築く上で非常に重要です。
人工代の請求書の作成手順は下記の通りになります。
- 1.請求書の基本情報を記載する
- 2.作業内容と人工代の詳細を記載する
- 3.金額の集計と消費税の計算
- 4.振込先情報と支払期限を明記する
- 5.備考欄の活用
それぞれ項目ごとに、人工代の請求書作成時の具体的な手順を解説していきましょう。
請求書の基本情報を記載する
まず、請求書のタイトルとして「請求書」と明記し、以下の基本情報を記載します。
- ・発行日
請求書を作成した日付を記載する - ・請求書番号
請求書を一意に特定するための番号を設定する - ・請求先情報
取引先の会社名、部署名、担当者名、住所などを正確に記載する - ・自社情報
自社の名称、住所、電話番号、担当者名などを明記する
作業内容と人工代の詳細を記載する
次に、提供した作業の詳細と人工代を明確に記載します。
- ・作業内容
具体的な作業の内容を記載する。例えば、「内装塗装作業」「電気配線工事」など - ・作業期間
作業を行った日付や期間を明記する - ・作業員数と作業日数
作業に従事した人数と日数を記載する - ・単価と数量
1人あたりの1日の単価(例:30,000円)と、総作業日数(例:3人×5日=15人工)を記載する - ・金額
単価と数量を掛け合わせた金額を計算し、記載する
記載方法として、一例として以下のように表形式で記載すると分かりやすいでしょう。
作業内容 | 作業期間 | 人数 | 日数 | 単価(円) | 数量(人工) | 金額(円) |
内装塗装作業 | 2025/02/01-05 | 3 | 5 | 30,000 | 15 | 450,000 |
金額の集計と消費税の計算
全ての作業項目の金額を合計し、小計を算出します。
その後、適用される消費税率(通常10%)を基に消費税額を計算し、以下のように記載します。
- ・小計:450,000円
- ・消費税(10%):45,000円
- ・合計金額:495,000円
振込先情報と支払期限を明記する
請求金額の振込先情報を明確に記載します。
具体的には、銀行名・支店名・口座種別・口座番号・口座名義人などです。また、支払期限も明記し、取引先がいつまでに支払いを行うべきかを示します。
備考欄の活用
必要に応じて、備考欄に現場名や工事番号、特記事項を記載します。
一人親方の場合の作成方法
一人親方が人工代の請求書を作成する際は、通常の法人や事業所が作成するものと異なる点があります。特に、個人事業主としての立場を明確にし、税務処理の観点も考慮する必要があるでしょう。
そこで、一人親方での請求書の書き方のポイントも解説します。
- 1.法人が請求書を発行する場合は会社名を記載するが、一人親方の場合は屋号(あれば)または個人名で発行する
- 2.屋号を持っている場合は「〇〇工務店」と記載し、屋号がない場合は「〇〇 太郎(個人名)」のように記載する
- 3.一人親方の場合、請求書のフォーマットが取引先によって異なることがあるため、企業側で用意された請求書フォーマットの使用を求められることがある
一人親方として請求する場合、多くのケースで源泉徴収税(10.21%)が控除される可能性があります。法人であれば源泉徴収は不要ですが、個人事業主である一人親方は所得税の前払いとして源泉徴収の対象になることが一般的です。
請求書では以下のように「源泉徴収額」を記載する必要があります。
- ・請求額(税込):100,000円
- ・源泉徴収額(10.21%):▲10,210円
- ・差引支払額:89,790円
このように、実際に振り込まれる金額が控除後のものになるため、事前に発注者へ確認することが重要です。
また、消費税の記載についても、免税事業者(年間売上1,000万円以下)であるかどうかによって異なります。インボイス制度が導入されたため、適格請求書発行事業者でない場合は消費税の扱いに注意しましょう。
人工代の請求書作成時の注意点
請求書を作成する際には、以下の点に注意することが重要です。
- ・正確な情報の記載
請求書に記載する情報は正確であることが重要であり、宛先や請求金額などの詳細を確認する必要がある - ・明瞭な表記
文字が読みやすく、情報が明瞭に伝わるように表記してください。フォントやレイアウトにも注意しましょう。 - ・番号の連番管理
請求書番号などの識別番号は連番で管理し、重複しないようにしましょう。 - ・法的要件の遵守
請求書には法的要件がありますので、それらを遵守するよう注意してください。たとえば、消費税の表示や必要事項の記載などがあります。
これらのポイントを押さえることで、取引先にとってわかりやすく、信頼性の高い請求書を作成することができます。適切な請求書の作成は、スムーズな取引と信頼関係の構築に寄与します。
請求書作成のツール
請求書を作成することができるツールには様々なものが存在しており、Wordやエクセルなどといった汎用的なツールから、請求書の作成に特化したツール、工事現場での作業に適した機能を搭載した現場管理アプリなどがあります。
今回はWord、エクセル、現場管理アプリでの作成方法について解説を行います。
Wordで作成する方法
人工代の請求書を作成する方法はいくつかありますが、手軽に作成できるツールの一つがMicrosoft Wordです。
特別なソフトウェアをインストールせずに、パソコンがあれば誰でも簡単に作成できるため、多くの事業者が利用しています。ここでは、Wordを使った人工代請求書の作成手順を詳しく解説します。
Wordには請求書のテンプレートがあらかじめ用意されているため、それを活用するとスムーズに作成できます。
Wordで配布されているテンプレートを利用する場合は、Wordを開いてそこからテンプレートを読み込みます。
テンプレートには既に必要な項目が用意されているため、必要事項に情報を記入し、保存すれば作成完了です。
必要に応じてPDFファイルや、印刷を行いましょう。
Excelで作成する方法
人工代の請求書を作成する際、Excelを活用すると、計算を自動化できるため便利です。
特に人工代の請求では、作業員数や作業日数、単価の掛け算が必要になるため、Excelの数式を使うことで手間を減らせます。
Excelで請求書を作成する手順は以下の通りです。
- 1.Excelを開いて請求書のフォーマットを作成する
- 2.自動計算を設定する
- 3.消費税・源泉徴収額の計算
- 4.見た目を整える
- 5.PDFで保存する
完成したPDFファイルをメール経由で送信することで、請求書の送付を行うことができます。
現場管理アプリを利用する方法
人工代の請求書作成は、現場管理アプリを活用することで効率的かつ正確に行うことができます。
現場管理アプリは建築業における報告書類の作成機能を搭載しており、手作業でのミスを減らし、業務の効率化を図ることが可能です。
現場管理アプリを利用した請求書の作成方法は下記の通りになります。
- 1.アプリへの基本情報の登録
- 2.プロジェクトおよび作業内容の設定
- 3.人工代の計算
- 4.請求書の作成
- 5.請求書の送付と管理
現場管理アプリでは各種計算を自動で行ってくれる機能や、PDFファイルへの変換機能、または直接アプリ内から共有・メールで送信を行う機能などがあります。
請求書のテンプレート
実際にExcelやWordで使用可能な人工代の請求書テンプレートをご紹介しましょう。
今回ご紹介するのは「Money Forward」様が配布している請求書テンプレートになります。
こちらは通常の人工代請求書から、一人親方用の請求書まで揃っているため、一人親方の方でもご利用可能となっております。
建設現場の業務効率化には現場ポケット

現場管理アプリの利用を検討している、気になっているという方におすすめの現場管理アプリとして、「現場ポケット」をご紹介します。
現場ポケットは、工程表の作成や報告書などの書類作成機能、PDFへの変換など、多彩な機能を一つのアプリで利用できる現場管理ツールです。
2025年1月時点で、導入実績は35,000人以上、契約更新率は約95%と、高い実績を誇るアプリです。
直感的な操作性で簡単に工程表を作成でき、1つの現場だけでなく、複数の現場を一覧形式で確認することができるため、複数現場を担当している方でも問題なく利用できます。また、スマートフォンやタブレット1つで、どこからでも工程表の作成や進捗管理が可能となり、作業効率を大幅に向上させ、書類作成にかかる時間を短縮できます。
さらに、アカウント数やデータ容量の追加といった追加課金がなく、年間契約費用のみで利用できる点も魅力です。利用料金は税込みで11,880円/月で活用できます。
既存の現場業務を効率化したい方や現場管理アプリを試してみたい方は、ぜひ「現場ポケット」の利用を検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
以上、人工代とは何か、人工代の請求書の作成方法について解説しました。
今回の記事の内容をまとめると下記の通りになります。
- ・人工代とは、作業員一人が一日働く際の人件費の事を指す
- ・人工代は作業の種類や地域、作業員の能力によって変動する
- ・人工代は「人工代 = 人工単価 × 作業員数 × 作業日数」で計算できる
- ・一人親方の場合は請求書の作成方法が異なる
- ・請求書の作成にはWordやExcel、現場管理アプリを使うことが一般的
- ・現場管理アプリを使うことで、請求書の作成などの業務を効率化することができる
一人親方が人工代の請求書を作成する際は、屋号または個人名で発行すること、源泉徴収税の控除を考慮すること、取引先の支払方式を確認することが重要です。通常の法人とは異なる点を理解し、適切な請求書を作成しましょう。