【建設業】36協定とは?ルールや残業の上限規制などを解説

2025-03-10

【建設業】36協定とは?ルールや残業の上限規制などを解説

建設業界における36協定は、労働時間の適正な管理と法令遵守のために重要な役割を果たしています。適切な36協定の締結と運用により、労働者の健康を守り、企業のコンプライアンスを強化することが可能です。

本記事では建設業における36協定の基本的な概要、時間外労働の上限規制、特別条項の適用、そして違反時の罰則について詳しく解説します。

これらの情報を通じて、企業や労働者が適切な労働環境を整え、法令遵守を徹底するための指針となれば幸いです。

この記事では労働基準法によって定められた36協定とはなにか、破ってしまうとどうなるかなど、建設業において気をつけなければならないポイントについて解説を行っていきます。

36協定とは

建設業における36協定とは、労働基準法第36条に基づき、労使間で締結される協定のことです。この協定により、法定労働時間を超える時間外労働や休日労働が可能となります。

具体的には、使用者と労働者代表が協議し、時間外労働や休日労働の上限や条件を定め、労働基準監督署に届け出る必要があります。これにより、労働者の健康と安全を確保しつつ、業務の効率化や生産性の向上を図ることができます。

建設業界では、工期の厳守や天候による作業の遅れなど、柔軟な労働時間の設定が求められる場面が多いため、36協定の適切な締結と運用が重要となります。

しかし、協定を結んだからといって無制限に時間外労働が許されるわけではなく、労働基準法や関連法令で定められた上限を遵守することが求められます。

適切な36協定の運用は、労働者の健康維持と企業の持続的な発展の両立に寄与するでしょう。

36協定で設定できる残業時間には制限がある

建設業における36協定では、時間外労働(残業)時間に明確な制限が設けられています。具体的には、原則として月45時間、年間360時間以内と定められています。しかし、臨時的かつ特別な事情がある場合には、特別条項付きの36協定を締結することで、以下の上限まで時間外労働を延長することが可能です。

  • ・年間の時間外労働は720時間以内
  • ・休日労働を含めた単月の労働時間は100時間未満
  • ・休日労働を含めた2~6ヶ月平均の労働時間は80時間以内
  • ・月45時間を超える時間外労働が可能な月は年間6回まで

これらの上限を遵守することが求められます。

特別条項を適用する際には、労使間での協議と合意が必要であり、労働者の健康と安全を確保するための措置も講じなければなりません。具体的には、医師による面接指導の実施や、勤務間インターバルの設定などが考えられます。

これらの措置を適切に行うことで、労働者の負担を軽減し、企業の持続的な発展に寄与するでしょう。

なお、建設業においては、2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用される予定です。ただし、災害の復旧・復興事業に従事する場合には、一部の上限規制が適用除外となることが検討されています。

適切な36協定の締結と運用は、労働者の健康維持と企業の生産性向上の両立に不可欠です。法令を遵守し、労使間の信頼関係を築くことで、健全な労働環境を実現しましょう。

36協定の上限を超えたらどうなる?

建設業において、36協定で定められた時間外労働の上限を超えると、労働基準法違反として罰則が科せられます。具体的には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が規定されています。

さらに、悪質な違反と判断された場合、企業名が公表され、社会的信用の失墜や事業継続に支障をきたす可能性もあります。

このようなリスクを避けるためにも、36協定の内容を正確に理解し、労働時間の適切な管理を徹底することが重要です。労使間での協議を重ね、労働者の健康と安全を確保しつつ、法令を遵守した労務管理を行いましょう。

36協定の上限を超えないための対策

建設業において36協定の上限を超えないためには、計画的な労働管理と適切な対策が欠かせません。特に、2024年4月から適用された時間外労働の上限規制により、さらなる対応が求められます。

36協定の上限を超えないために気をつけるべきポイントには下記のようなものがあります。

  • ・労働時間の適正管理を徹底する
  • ・休日・休憩時間を適切に確保する
  • ・業務の効率化と分業を進める
  • ・36協定の見直しと適正な運用

建設業における36協定の上限を超えないためには、労働時間の適正管理、休息の確保、業務の効率化、適正な協定運用が不可欠です。

労働環境の改善を進めることで、従業員の健康を守りつつ、安定した事業運営を実現しましょう。

労働時間の適正管理を徹底する

まず、労働時間の把握が不可欠です。

建設業では長時間労働が発生しやすいため、労働時間を正確に管理することが重要です。これには、以下のような方法が有効です。

  • ・勤怠管理システムの導入
    手作業による労働時間の記録ではミスや改ざんのリスクがあるため、クラウド型の勤怠管理システムを導入することで、正確な記録を残し、リアルタイムで労働時間を把握できる
  • ・労働時間の見える化
    作業員ごとの残業時間を定期的にチェックし、36協定の上限を超えそうな場合は事前に調整を行う

休日・休憩時間を適切に確保する

適切な休息を取ることで、長時間労働の防止につながります。

特に建設業では、工期の関係で休日が削られやすくなりますが、計画的に休みを確保することが重要です。

  • ・週休2日制の導入を検討
    休日の確保が難しい場合、交代制を導入し、週に2日以上の休みを取れるように工夫する
  • ・作業ごとの休憩時間の管理
    長時間の作業が続くと、疲労が蓄積し効率が低下するため。作業の合間に適切な休憩を取ることで、労働時間の延長を防ぐ

業務の効率化と分業を進める

無駄な作業を削減し、労働時間を短縮することが重要です。

業務の効率を上げることで、結果的に36協定の上限を超えないようにすることができます。

  • ・ICT技術の活用
    建設現場では、ICT(情報通信技術)を活用することで作業の効率化が可能であり、ドローンを使った現場管理や、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用することで作業のスピードアップが期待できる
  • ・作業の分担と外部委託
    一部の業務を外注することで、従業員の負担を減らし、長時間労働を回避できる。
    事務作業などはアウトソーシングを活用すると効果的

36協定の見直しと適正な運用

協定の内容を定期的に確認し、適正に運用することも重要です。

以下のポイントに注意して、協定違反を防ぎましょう。

  • ・労使協議を定期的に実施
    36協定の内容が現場の実態に即しているか、定期的にチェックし、必要があれば見直しを行う
  • ・特別条項を慎重に運用
    特別条項付きの36協定を締結している場合でも、上限を超えないよう慎重に運用し、長時間労働を常態化させないようする

36協定届出の流れ

建設業において36協定を適切に締結・届出することは、労働時間管理の基本です。

36協定届出の手順は以下の通りになります。

  1. 1.労使間での協定締結
  2. 2.協定届の作成
  3. 3.労働基準監督署への届出

建設業における36協定の届出は、労使間の適切な協議と正確な手続きが求められます。特に、2024年4月からの上限規制適用に伴い、新様式での届出が必要となります。

労働環境の適正化と法令遵守のため、早めの準備と確実な手続きを心掛けましょう。

続いて、手順をそれぞれ個別に解説していきます。

労使間での協定締結

まず、事業主と労働者代表との間で36協定を締結します。

  • ・労働者代表の選出
    事業場に労働組合がない場合、労働者の過半数を代表する者を選出する
    この際、管理監督者や事業主の意向を代弁する者は適任ではない
  • ・協定内容の決定
    時間外労働や休日労働の上限時間、適用期間、業務の具体的内容などを協議し、文書で明確にする

協定届の作成

締結した協定に基づき、所定の様式で協定届を作成します。

  • ・様式の選択
    建設業では、時間外労働の上限規制適用に伴い、2024年4月から新しい様式が導入されている
    業務内容や労働時間の見込みに応じて、適切な様式を選択する必要がある
  • ・必要事項の記入
    協定の有効期間、労働時間の延長限度、特別条項の有無など、必要な情報を正確に記入する

労働基準監督署への届出

作成した協定届を、所轄の労働基準監督署に提出します。

提出方法には、以下の3つがあります。

  1. 1.窓口提出
    直接労働基準監督署の窓口に提出する方法
    記載内容に不明点がある場合、その場で確認できる利点がある
  2. 2.郵送提出
    郵送で提出する場合、届出書類を2部作成し、返送用の封筒(切手貼付)を同封する必要がある
    封筒には「36協定在中」と明記すると良い
  3. 3.電子申請
    「e-Gov」を利用したオンラインでの提出方法
    電子申請は24時間対応しており、電子申請では本社一括届出も可能

提出後、労働基準監督署から受理された協定届の控えを受け取り、事業場内で労働者に周知します。

この控えは、3年間の保管義務があります。

勤怠管理を行うためには出面表の作成が必要不可欠

建設業において、36協定を遵守するためには、正確な勤怠管理が不可欠です。その際、労働者の出勤状況や労働時間を詳細に記録する「出面表(でづらひょう)」の作成が重要な役割を果たします。

出面表とは何か

出面表とは、建設現場で働く作業員が、いつ、どの現場で、何時間作業したかを記録する書類のことです。これにより、労務管理や賃金管理、安全管理などに役立ちます。 

出面表作成の目的

出面表を作成する主な目的は以下のとおりです。

  • ・労務管理
    労働者名簿や出勤簿の作成に活用し、労働基準法で義務付けられた「法定三帳簿」の作成を効率化できる
  • ・賃金管理
    常用契約における日当の計算や、請負契約における労務費の把握に役立つ
  • ・安全管理
    無災害記録の作成や、作業員の労働時間を可視化することで、過重労働の防止や業務改善に貢献できる

出面表に記載すべき項目

一般的な出面表には、以下の項目を記載します。

  • ・現場名
    どの現場の出面表かを明確にするために記載する
  • ・氏名
    作業員のフルネームを記載し、同姓の作業員がいる場合でも区別できるようにする
  • ・工種
    作業員の職種(例:大工、左官、鳶職など)を記載する
  • ・勤務日
    作業日と作業時間を記入し、就業区分(通常労働、休日労働、時間外労働、深夜労働など)があれば併せて記載する

出面表の管理方法

出面表の管理方法には、紙での管理、エクセルなどのデジタルツールでの管理、専用の管理ソフトやアプリの利用などがあります。デジタル化することで、記入ミスの防止や情報の共有が容易になり、業務効率化が期待できます。

正確な勤怠管理を行うためには、出面表の作成と適切な管理が必要不可欠です。これにより、36協定の遵守だけでなく、労務管理や賃金管理、安全管理の向上にもつながります。自社の状況に合わせて、最適な出面表の作成・管理方法を検討しましょう。

出面表の作成・管理は現場管理アプリがおすすめ

現場管理アプリを導入することで、出面表の作成・管理が大幅に効率化されます。従来の紙やエクセルでの管理では、手間やミスが発生しやすく、情報の共有にも時間がかかっていました。

しかし、アプリを活用することで、作業員の出退勤情報や日報をリアルタイムで入力・共有でき、管理者は即座に状況を把握できます。

現場管理アプリを利用した出面表の作成を行うメリットとしては、下記のようなものがあります。

  • ・業務効率の向上
    出面表の自動作成やデータ集計が可能となり、手作業による入力ミスや時間の浪費を防ぐことができる
  • ・リアルタイムな情報共有
    現場からの情報を即座に共有でき、迅速な意思決定や対応が可能
  • ・コスト削減
    業務の効率化により、残業時間の削減や人件費の最適化が期待できる

現場管理アプリの導入は、出面表の作成・管理を効率化し、36協定の遵守に寄与します。これにより、労働環境の改善や業務の最適化が実現し、企業全体の生産性向上につながるでしょう。

建設現場の業務効率化には現場ポケット

現場管理アプリの利用を検討している、気になっているという方におすすめの現場管理アプリとして、「現場ポケット」をご紹介します。

現場ポケットは、工程表の作成や請求書などの書類作成機能、PDFへの変換など、多彩な機能を一つのアプリで利用できる現場管理ツールです。

36協定を遵守するためには、従業員の勤務時間を正確に記録する必要があります。

現場ポケットであれば、従業員の勤怠管理を出面表作成機能で正確に把握することができるため、36協定の遵守だけでなく、提出が必要な届出の作成にも役立てることができます。

2025年1月時点で、導入実績は35,000人以上、契約更新率は約95%と、高い実績を誇るアプリです。

直感的な操作性で簡単に工程表を作成でき、1つの現場だけでなく、複数の現場を一覧形式で確認することができるため、複数現場を担当している方でも問題なく利用できます。また、スマートフォンやタブレット1つで、どこからでも工程表の作成や進捗管理が可能となり、作業効率を大幅に向上させ、書類作成にかかる時間を短縮できます。

さらに、アカウント数やデータ容量の追加といった追加課金がなく、年間契約費用のみで利用できる点も魅力です。利用料金は税込みで11,880円/月で活用できます。

建設業で必要な書類の作成を効率化したい方や現場管理アプリを試してみたい方は、ぜひ「現場ポケット」の利用を検討してみてはいかがでしょうか?

まとめ

以上、建設業における36協定について解説を行いました。

今回の記事の内容をまとめると以下の通りになります。

  • ・建設業における36協定とは、労働基準法第36条に基づき、労使間で締結される協定のこと
  • ・時間外労働(残業)時間は原則として月45時間、年間360時間以内まで
  • ・時間外労働の上限を超えると、労働基準法違反として罰則が科せられる
    ・罰則内容は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金、悪質と判断された場合は企業名が公表される
  • ・36協定を厳守している証拠として、協定届の提出が義務付けられている
  • ・協定届は直接提出する以外にも、郵送やオンラインでの提出が可能

従業員の勤怠管理を正確に行うためにも、現場管理アプリを活用することをおすすめします。


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