建設業の工程表におけるマイルストーンとは、工程上の節目のことです。最近では、国土交通省が「マイルストーン方式」という名称の仕組みで、出来高算出の簡素化を図っています。
大規模で工期の長い建設現場では、竣工というゴールだけを目指してマネジメントしようとすると、対応すべき課題が多すぎて管理しきれないことがあります。
そのため、マイルストーンという短期間の節目を設定して、その期間の作業や業務を明確化したうえで効率的に施工を行うほうが効率的だとされるようになっています。
この記事では、建設業におけるマイルストーンの概要や必要性、作成方法と作成の注意点などを解説しますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
マイルストーンとは?
マイルストーンとは、ビジネス用語の一つであり、案件や計画の中間的な目標地点を指します。語源は、出発点から距離を測るために1マイルごとに置かれた標石からきています。
建設業では、実際の距離を示すものではなく、工程の過程にある節目のことです。例えば、基礎・躯体工事から、内外装工事へ進む段階、内外装工事から外構・仕上げ工事へと移行する段階などが節目といえるでしょう。
マイルストーンをどういう節目に置くかの規定はなく、工事を請負った建設会社の裁量に任されています。
マイルストーン活用のポイントは、設定したマイルストーンまでのタスク(作業・業務)を正確に把握し、視覚的にスケジュール管理することです。こうすることで現場は活性化され、作業の漏れはなくなり、進捗状況の詳細な管理が可能になります。
工程表にマイルストーンはなぜ必要なのか?
マイルストーンを設定して工程を管理すると、工事の進捗状況が可視化されて、作業の漏れを防ぐことができます。また、工程の調整がしやすくなるため、特に長期にわたる工事での必要性が高いです。
マイルストーンが工程表に必要な理由を3つのポイントで解説します。
工事の進捗を可視化できる
マイルストーンを設定するにあたっては、工程を計画通りに達成するために必要なタスクの拾い出しが必要です。洗い出されたタスクは視覚化され、時系列に整理されてスケジュールに組み込まれます。
こうすると、マイルストーンまでにやらねばならないタスクが明確になって、完了したタスクのチェックも非常に楽です。その結果、現時点での工事の進行度合いが一目で分かるようになり、工事の進捗状況が可視化されます。
このようなマイルスストーンの特性を活かすためには、正確なタスクの拾い出しや担当者への偏りのない割り振りが重要なポイントです。
タスクの漏れを防止できる
マイルストーンを設定することによって、設定した節目のポイントまでのタスクが明確になるため、タスクの施工漏れを防止できます。タスクの漏れがあった場合も、前後の関係やスケジュールの流れが可視化されているので、立て直しのための調整も楽です。
特に、長期間の工事では似たような施工の連続のため、作業が単調になったり気の緩みが発生したりしやすいです。そういうときに起きやすいのが「タスクの漏れ」です。
建設工事では、どんな工種であっても、完成までには複雑な作業過程の積み重ねが必要です。小さなタスクの漏れが工程全体に影響することも珍しくありません。
マイルストーンを設定することで短期間での確認やチェックが可能になり、タスクの漏れを防ぎやすい環境となります。
工程の調整がしやすくなる
工期の長い現場では、期限までに必要な施工をすべて終えられるかの判断が難しいです。熟練の施工管理であっても、天候や不測の事態を想定して予備日を設定しているにも関わらず、工期ぎりぎりまでかかったということがよくあります。
マイルストーンを複数設定することで、判断の対象となる期間が短くなり、工期の調整がしやすくなります。工程の遅れを早めに察知できるので、遅れによる支障が軽微のうちに立て直しが可能になるからです。
このように、マイルストーンごとの調整を確実にこなしておけば、結果的に全体工期の達成が可能になります。
マイルストーンを設定する前にやるべきこと
マイルストーンを効果的に活用するため、設定前に確実にやっておくべきとが、タスクの拾い出しと割り振りです。この2つのポイントについて説明します。
タスクを拾い出す
必要なタスクを正確に拾い出すことは、マイルストーン活用のためのベースとなります。タスクを拾い出す手順は以下の通りです。
- ① 施工に必要なすべてのタスクを洗い出す
- ② 細かい作業の見落としがないか確認する
- ③ 各タスクに必要な工数・日数を割り出す
- ④ 工事のフェーズ(階層・段階)ごとに並べる
以上の手順が完了したらマイルストーンを設置してみて、全体工期や一定期間の工程と差異がないことを確認して、問題がなければ拾い出し完了です。
タスクを割り振る
タスクの拾い出しが完了したら、各担当者にタスクを割り振ります。 このとき、割り振りに偏りが生じないように注意しましょう。
一人の担当者にタスクが集中すると、担当者の長時間労働に繋がりやすくなり、モチベーションを下げてしまいかねません。また仕事の属人化を助長し、情報共有の妨げになることも考えられます。
タスクは適切な分量の割り振りが肝要で、各自が担当以外のタスクについてもある程度の把握を可能にする余裕をもたせることがスムーズな情報共有に繋がりやすいです。
マイルストーンの設定方法
ここでは、タスクの拾い出しや割り振りを完了した後のマイルストーンの設定方法について解説します。
ガントチャート工程表を作る
マイルストーン期間内の工程表として活用されることの多いのが「ガントチャート工程表」です。
ガントチャート工程表は、縦軸にタスク(作業)の内容、横軸にタスクの進捗を横棒で示す工程表です。作業の進捗状況が一目でわかるため、マイルストーン設定に非常に役立ちます。
マイルストーン設定時には、このガントチャート工程表でタスクの内容や工数を整理し、施工期間の調整を行う必要があります。
マイルストーンを設定する
ガントチャート工程表で施工期間の調整が完了したら、それに基づき、マイルストーンを設定します。マイルストーンは、◎や☆などの目立つ記号で表記することが多いです。
マイルストーンの設定に迷ったら、タスクの完了予定日に設定します。不測の事態に備えて余裕を持ちたい場合は、完了予定日より前にマイルストーンを設定してください。
準備したタスクを適用する
マイルストーンを設定できたら準備したタスクを適用して、実際に実施可能かどうか、無理や過不足がないかの確認が必要です。
マイルストーンの設定では、最初に日程を設定してしまうケースもあります。しかし、必要なタスクのボリュームや他のタスクとの関連性を考慮しながら調整を行う必要性が出てくることが多いので、最終的な確定はこの時点が適切だと考えます。
マイルストーン設定のポイント
マイルストーンを設定して、建設現場の効率化と生産性の向上を行おうとするとき、覚えておいてほしいポイントがいくつかあります。これらのポイントを押さえておくことで、より的確なマイルストーンの設定が可能です。
実現可能であること
実現可能でないマイルストーンは、担当者に必要以上の負担をかけたり、突貫工事のように施工品質を低下させたりする懸念がでてきます。
そのため、マイルストーンの設定を、設定を任された責任者だけで行うのはおすすめできません。複数の現場担当者の意見を聞き、過去の同様工事の状況も参考にしながら行うべきです。
また、マイルストーンは比較的短期間のスケジュールであり、いわば部分工程表です。常に全体工程表との兼ね合いや収まりを考えながら決定することも求められます。
以上の点を押さえ、実現可能であることを前提にマイルストーンを設定しましょう。
設定は細かすぎないこと
マイルストーンは、あまり細かく設定してしまうと融通が利かなくなるという側面もあります。
建設現場では、現場状況が計画と違っていたり想定外のことが起こったりするので、そういうときも柔軟に対応できる余裕のあるスケジュールであるべきです。
マイルストーン設定の目的は、あくまでタスクの漏れを防ぎながら施工を効率化することですから、過度に日数にこだわらないほうが無難です。
細かく、より具体的であることが求められるのは、マイルストーン達成のためのタスクの拾い出しのほうです。
担当者に偏りがないこと
タスクを割り振るときに、担当者によってタスクに偏りがないかも注意すべき点です。複数の担当者に順当にタスクを割り振ることで、担当者全員に工事に対する参加意識が高まり、モチベーションも上がります。
例えば、タスク担当者を一人に限定してしまうと、その担当者に何かあったときに工事の進行が滞ってしまう可能性があります。
複数の担当者それぞれに責任を持つべきタスクを割り振れば、タスクというのは互いに関連性があるので工事情報の共有が進み、何かあったときも別の担当者がフォローすることが可能です。
タスクを偏りなく割り振ることは、マイルストーンを達成するのに貢献するだけでなく、以上のように現場全体を活性化することにも繋がるのです。
どのような影響があるか把握する
万が一、マイルストーンに遅れが生じた場合、どのような影響があるかを検討し把握しておくようにしましょう。自社の現場従業員のみで対応可能であれば大きな問題にはなりませんが、他の部署や協力会社に影響が生じる場合は特に注意が必要です。
ステークホルダー(利害関係者)をリストアップしておくことで、自社で対応できないことを誰にどのように対応してもらうかの対策を素早く行うことができます。
建設工事の請負会社は、工事の契約時に施工体系図を提出しているはずなので、これを参考にステークホルダーのリストアップができるはずです。
定期的に見直すこと
マイルストーンは、一度設定してしまえば、それで終わりというものではありません。定期的に見直し微調整して、より現実的で効果的な設定を目指すべきです。
工事全体の工期は契約で定められており、厳守すべきもので変更はできません。しかし、工期を構成する各工程のスケジュールの調整は可能でマイルストーンも同じです。
定期的に見直し、より効果的なマイルストーンに設定し直すという経験の積み重ねは、必ず次回のマイルストーン設定に活かすことができます。
現場ポケットの紹介

マイルストーンの設定を含め、建設現場の工程管理は、現場業務の効率化にとって非常に重要です。そのため、工程管理に関するアプリやシステムが多数登場しています。
特におすすめしたいのが、現場管理に特化したアプリ、「現場ポケット」です。現場ポケットは、初期費用無料でランニングコストは基本11,880円(税込)/月というお手頃価格なのに、工程管理機能だけでなく、さまざまな機能を備えたアプリとなっています。
初期費用やオプション費用は一切かからず、アカウント数・データ容量、現場登録数が無制限です。
現場ポケットの工程管理機能とその他の機能について紹介します。
現場ポケットの工程管理機能
現場ポケットがあれば、各工程の進捗や作業責任者、施工期間などを一目で確認できるので、現場情報の共有の省力化が容易です。
工程表の情報共有が簡単・確実なので、電話やメールでの進捗確認を省略できます。急な工程変更が発生した場合は、掲示板への投稿や個別メッセージの送信も行えます。
以上のように、複数現場をリアルタイムで確認できるので、現場間のさまざまな調整を円滑に行うことができます。
これらの機能は、マイルストーンの設定や管理、調整に大きく貢献するはずです。
複数のテンプレートを活用して工程表作成ができるので、作成時間を大幅に短縮しながら、見やすく理解しやすい工程表の作成も簡単にできます。
現場ポケットのその他の機能
現場ポケットのその他の機能を紹介します。
・日報機能
作業開始から終了時間までをトーク画面から簡単に入力可能です。入力漏れやミスの修正や追加が簡単で代理入力もできます。現場別、職人別の作業人工を個別集計し、ファイルで出力することができます。
・報告書機能
複数の報告書テンプレートが用意されているので、アルバムから写真をテンプレートにはめ込んでいくだけで写真入り報告書が作成できます。定型文を選択するだけで文字入力が可能な定型文機能も高評価です。
・トーク機能
現場単位でグループ・チャットができ、素早い情報交換と共有が可能です。また、周知したい重要事項は、掲示板にピン留めできるので見落とし防止に繋がります。見やすく操作しやすい画面デザインも人気です。
まとめ
工程表に設定するマイルストーンについて、以下の内容で解説してきました。
- ・マイルストーンの概要と必要性
- ・マイルストーンを設定する前にやるべきこと
- ・マイルストーンの設定方法
- ・マイルストーンの設定のポイント
- ・マイルストーンを含めた工程管理をサポートするアプリ「現場ポケット」の紹介
マイルストーン活用のポイントは、設定したマイルストーンまでのタスクを正確に把握し、視覚的にスケジュール管理することです。こうすることで現場は活性化され、作業の漏れはなくなり、進捗状況の詳細な管理が可能になります。
このような役割をもつマイルストーンの活用に貢献するのが、現場業務の効率化に特化したアプリ、「現場ポケット」の工程管理機能です。
多くの現場で活用され、「なくてはならないもの」とも評価されている「現場ポケット」が気になった方は、ぜひ公式サイトをチェックしてみてください。