建設業界では「2025年問題」により、人手不足が深刻化すると懸念されています。高齢化や担い手不足が進む中、業界の現状や今後の影響、具体的な対策について解説します。
少子高齢化や業種の多様化などによって近年人手不足が深刻化している建築業界、そんな中新たに「2025年問題」にも直面し、更に人材不足が加速すると言われています。
今回の記事では2025年問題とはなにか、どう対処すればいいかについて解説を行います。
建設業の2025年問題とは
建設業界における「2025年問題」とは、団塊の世代が75歳以上となり、社会全体で高齢化が進行する中、特に建設業界で熟練労働者の大量引退による人手不足が深刻化する問題を指します。
高齢者が退職していくことによって引き起こされる人手不足により、工事の遅延や品質低下が生じる可能性があり、また、技術やノウハウの継承が困難となり、業界全体の生産性や安全性に悪影響を及ぼすことが予想されるでしょう。
建設業の2025年問題の背景
建設業界が直面する「2025年問題」は、主に以下の背景から生じています。
- ・高齢化と熟練労働者の引退
- ・若年層の就業者減少
- ・建設需要の増加
- ・労働環境の課題
これらの背景を踏まえ、建設業界は2025年問題に直面しています。労働力不足や技術継承の課題に対応するため、労働環境の改善や若年層の採用促進など、多角的な対策が求められています。
高齢化と熟練労働者の引退
建設業界では、従事者の高齢化が顕著です。2023年のデータによれば、55歳以上の就業者は約36%を占めています。一方、29歳以下の若年層は約12%にとどまっています。
この状況は、全産業と比較しても高齢化が著しく進行していることを示しています。団塊世代が75歳以上となる2025年以降、多くの熟練労働者が引退する見込みであり、技術や経験の継承が困難になることが懸念されています。
若年層の就業者減少
若年層の建設業への就業者が減少していることも、2025年問題の一因です。労働環境やイメージの問題から、若者が建設業を敬遠する傾向があります。
これにより、業界全体の労働力が不足し、将来的な人材確保が課題となっています。特に、1997年には685万人いた建設業就業者数が、2021年には482万人にまで減少しており、若年層の労働力不足が深刻化しています。
建設需要の増加
一方で、2025年の大阪万博や2027年開業予定のリニア新幹線など、大規模プロジェクトが控えており、建設需要は高まっています。需要の増加に対して労働力が不足すると、プロジェクトの遅延や品質低下が懸念されます。
労働環境の課題
建設業界は長時間労働や過酷な労働環境が指摘されており、これが人材確保の障害となっています。労働環境の改善が急務とされています。
建設業界の人手不足の現状
総務省の労働力調査によれば、建設業の就業者数は、1997年の685万人をピークに減少を続け、2023年には483万人とピーク時の約70.5%にまで減少しています。
また、55歳以上の就業者は全体の約35.9%を占めており、29歳以下の若年層は約11.7%にとどまっており、業界全体の高齢化が進行しています。
一方、若年層の建設業への就業者数は減少傾向にあります。2022年と比較して、29歳以下の就業者は2万人減少しているという現状により、根本的に新規参入する人材が足りていないと言えるでしょう。
これにより、次世代の労働力確保が困難となり、人手不足が一層深刻化しています。
これらの要因により、2025年には建設業界で約90万人の労働者が不足すると予測されているのが、建設業界における現状といえるでしょう。
建設業界の人手不足は、従業員の高齢化と若年層の就業者減少が主な原因です。この状況に対応するためには、労働環境の改善や若年層へのアプローチなど、多角的な対策が求められています。
2025年問題への対処法
建設業界が直面する2025年問題に対処するため、以下の取り組みが重要です。
- ・労働環境の改善
- ・ICT技術の導入
- ・若手人材の育成と採用促進
- ・業界全体のイメージ向上
これらの対策を講じることで、2025年問題に立ち向かい、乗り越えることができるでしょう。
労働環境の改善
建設業界では、長時間労働や年間出勤日数の多さが指摘されており、これらが若者離れの一因となっています。労働環境の改善や評価基準の見直しが必要です。
例えば、勤務時間と残業時間を正確に把握するために勤怠管理システムを導入し、労働時間の透明性を確保することが重要です。これにより、働きやすさの高い会社となるでしょう。
また、福利厚生の充実や給与水準の見直しも、人材確保に効果的です。さらに、適正な工期設定や週休2日の導入など、労働時間の削減に向けた取り組みも重要です。
ICT技術の導入
ICT技術の建設工事への導入による、工期短縮や作業員一人当たりの生産性向上を目的とした「i-Construction」の推進が対策の一つとして挙げられます。これにより、労働力不足の緩和が期待されます。
具体的には、ドローンやレーザースキャナ計測などのIT技術を利用することで、作業効率が大幅に向上します。また、現場管理アプリやビジネスチャットツールの導入により、遠隔地でも情報共有ができるようになり、生産性向上の大きな要因となるでしょう。
若手人材の育成と採用促進
若者への魅力的なキャリアパスの提供と熟練工の育成が重要です。職業体験やキャリアイベントの開催、SNSやウェブサイトを活用した情報発信などを通じて、建設業界の魅力を伝える取り組みが求められます。
また、計画的な技術訓練及びキャリアパスを明示し、中長期で熟練工を育成していく取り組みも必須です。さらに、多様な人材の積極的な採用も重要であり、女性や外国人労働者の活用も検討すべきです。
業界全体のイメージ向上
建設業界の魅力を発信することで、社会全体からの理解を深めることが重要です。若者が興味を持ち、選ばれる業界になるためには、業界のイメージアップに努める必要があります。
具体的には、労働環境の改善やICT技術の導入、若手人材の育成と採用促進などの取り組みを通じて、建設業界の魅力を高めることが求められます。
また、広報活動や教育機関との連携を強化し、建設業界の重要性や魅力を社会に伝えることも重要です。
建築業において業務を効率化するための手段とは?
2025年問題に伴う人手不足によって、建築業ではいかに業務を効率化し、少数の人材で対応するかが目下の課題となっています。
このような状況下で、現場管理アプリの導入が有効な手段として注目されています。
現場管理アプリの導入による業務効率化
現場管理アプリは、建設業における多岐にわたる業務をデジタル化し、一元管理するツールです。これにより、情報共有の迅速化や業務プロセスの簡素化が可能となり、全体的な業務効率の向上が期待できます。
現場管理アプリの主な機能には以下のようなものがあります。
- ・工程管理
プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで把握し、スケジュールの遅延を未然に防ぐことができる - ・ドキュメント管理
図面や契約書などの重要書類をクラウド上で共有し、必要な時に即座にアクセスできる - ・写真管理
工事現場の写真を撮影し、即座に共有・保存することで、進捗確認や品質管理に役立てられる - ・コミュニケーション
関係者間での情報共有や指示伝達を円滑に行うためのチャット機能などが備わっている
従来の建築現場において、工程管理のための工程表作成や、データ管理はExcelや書類を用いて行われてきました。
しかし、PCが無ければ使用できないExcelでは、事務所と現場を行き来するか、現場にPCを利用できる環境を用意する必要があり、最適化されているとは言い難い状態にあります。
しかし、現場管理アプリはスマートフォンやタブレットといった携帯端末で利用でき、Excelよりも利便性に富んでいるというメリットがあります。
従来のExcelなどのツールとの比較
従来、建設業界ではExcelなどの表計算ソフトを用いて工程管理や情報共有が行われてきました。しかし、これらのツールでは以下のような課題が存在します。
- ・リアルタイム性の欠如
Excelファイルは個別に保存・共有されるため、最新の情報を全員が即座に共有することが難しい - ・バージョン管理の煩雑さ
複数人での編集や更新が行われると、どのファイルが最新か分からなくなることがある - ・セキュリティリスク
ファイルの誤送信や紛失により、機密情報が漏洩するリスクがある
一方、現場管理アプリはクラウドベースでの運用が主流であり、これらの課題を解決する以下の利点があります。
- ・リアルタイムな情報共有
クラウド上でデータが即時更新されるため、全員が最新情報を共有できる - ・バージョン管理の容易さ
すべてのデータが一元管理されるため、最新バージョンの確認や過去の履歴追跡が容易 - ・セキュリティの強化
アクセス権限の設定やデータ暗号化により、情報漏洩のリスクを低減する
建設業界における業務効率化の手段として、現場管理アプリの導入は非常に有効です。
従来のExcelなどのツールでは対応しきれなかったリアルタイム性やセキュリティの課題を克服し、情報の一元管理や迅速な共有を可能にします。
これにより、2025年問題として懸念される人手不足や業務負荷の増大に対しても、効果的な対策となるでしょう。
現場管理アプリを利用するデメリットとは?
現場管理アプリは建設業界の業務効率化に大きく貢献するツールですが、導入にあたってはいくつかのデメリットも考慮する必要があります。
主なデメリットとその対策についても解説していきましょう。
初期導入コストがかかる
現場管理アプリの導入には、ライセンス料やカスタマイズ費用、機器の購入費などが発生します。
特に、クラウドベースのシステムを利用する場合、月額・年額での利用料が継続的に発生する点も考慮しなければなりません。
対策としては以下のようなものがあります。
- 1.コストと機能のバランスを考慮する
高機能なアプリは便利ですが、過剰な機能を搭載しているとコストが増大する可能性があります。自社の業務に本当に必要な機能が備わっているかを見極めたうえで、適切なアプリを選定することが重要です。 - 2.無料トライアルを活用する
多くの現場管理アプリには無料トライアル期間があるため、実際に試してみて導入の可否を判断するとよいでしょう。
導入・運用に伴う教育コストが発生する
現場管理アプリは直感的に操作できるものもありますが、従来の紙ベースやExcelに慣れた従業員にとっては、新しいシステムへの移行が負担になることがあります。
特に、デジタルツールの操作に不慣れな作業員が多い場合、研修やサポート体制の整備が必要となります。
対策としては以下のようなものがあります。
- 1.段階的な導入を検討する
すべての機能を一度に導入するのではなく、まずは必要最低限の機能から使い始め、徐々に活用範囲を広げる方法が効果的です。 - 2.シンプルな操作性のアプリを選ぶ
使い勝手がよく、直感的に操作できるアプリを選ぶことで、教育コストを抑えられます。 - 3.導入後のサポート体制を確認する
ベンダーによる操作説明会やサポート窓口の有無も重要なポイントです。サポートが手厚いアプリを選ぶことで、スムーズな運用が可能になります。
インターネット環境に依存する
クラウドベースの現場管理アプリは、基本的にインターネットに接続している状態で利用することを前提としています。
しかし、建設現場によってはWi-Fi環境が整っていない場合や、電波の届かない場所があるため、利用が制限されることがあるでしょう。
対策としては以下のようなものがあります。
- 1.オフライン対応のアプリを選択する
一部のアプリには、オフラインでも利用できる機能が搭載されているものがあります。インターネット接続が不安定な現場では、オフライン環境でもデータ入力ができるアプリを選ぶとよいでしょう。 - 2.モバイルWi-Fiの活用
必要に応じてモバイルWi-Fiルーターを導入し、現場でのインターネット環境を整備するのも有効な方法です。
建設現場の業務効率化・時短には現場ポケット

現場管理アプリの利用を検討している、気になっているという方におすすめの現場管理アプリとして、「現場ポケット」をご紹介します。
現場ポケットは、工程表の作成や請求書などの書類作成機能、PDFへの変換など、多彩な機能を一つのアプリで利用できる現場管理ツールです。
2025年1月時点で、導入実績は35,000人以上、契約更新率は約95%と、高い実績を誇るアプリです。
直感的な操作性で簡単に工程表を作成でき、1つの現場だけでなく、複数の現場を一覧形式で確認することができるため、複数現場を担当している方でも問題なく利用できます。
また、スマートフォンやタブレット1つで、どこからでも工程表の作成や進捗管理が可能となり、作業効率を大幅に向上させ、書類作成にかかる時間を短縮できます。
さらに、アカウント数やデータ容量の追加といった追加課金がなく、年間契約費用のみで利用できる点も魅力です。利用料金は税込みで11,880円/月で使用可能です。
現場管理アプリを活用することで業務の効率化に繋がり、これまで無駄に時間がかかってしまっていた部分で大幅な時短を図ることができるでしょう。
それにより、2025年問題にも対応できる可能性が高まります。
建設業で業務の効率化を考えている方や現場管理アプリを試してみたい方は、ぜひ「現場ポケット」の利用を検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
建築業における2025年問題について解説しました。
今回の記事の内容をまとめると以下の通りになります。
- ・建設業界の「2025年問題」は、団塊の世代の熟練労働者が大量引退することによる人手不足が深刻化する問題
- ・高齢化や若年層の就業者減少により、建設業界の労働力は不足し、将来的な人材確保が大きな課題
- ・建設需要が高まる一方で、労働環境の過酷さが若者離れを招いている
- ・2025年には建設業界で約90万人の労働者が不足すると予測されている
- ・2025年問題に対処するためには、労働環境の改善、ICT技術の導入、若手人材の育成と採用促進が求められている
- ・現場管理アプリを導入することで、業務効率化や情報共有の迅速化が実現可能
- ・効率的に導入を進めるためには、段階的な導入やオフライン対応のアプリ選びが重要
少子高齢化による深刻な人材不足、これを短期間で解決するという現実的な方法は現時点では存在しません。
そのため、業務の効率化などの対応できる範囲で課題に取り組む必要があり、現場管理アプリはこれら課題の多くを解決・改善するために役立つでしょう。