工事台帳とは、工事の進捗や費用を管理するための重要な帳簿です。本記事では、工事台帳の目的や作成方法をわかりやすく解説し、スムーズな工事管理のポイントを紹介します。
工事現場の記録管理に欠かせない「工事台帳」。その役割や作成の目的を理解し、適切に運用することで業務効率が向上します。本記事では、工事台帳の基本から作成手順まで詳しく解説します。
工事台帳とは
工事台帳とは、建設業者が各工事ごとに発生した費用や進捗状況を詳細に記録し、管理するための重要な帳簿です。 この台帳には、材料費、労務費、外注費、経費などの項目が含まれ、工事の原価を正確に把握することが可能となります。
これにより、各工事の収支や利益率を明確にし、経営判断やリスク管理に役立てることができます。
さらに、工事台帳は税務調査や労災保険の申告時にも必要となるため、正確な記載が求められます。
工事台帳の適切な作成と管理は、建設業における効率的なプロジェクト運営と健全な経営の基盤となるでしょう。
工事台帳を作成する目的
工事台帳は、建設業において各工事の詳細な取引内容を記録し、原価管理や経営判断に役立てるための重要な帳簿です。
作成目的は多岐にわたりますが、主に以下のような目的が存在します。
- ・各工事の収支や利益率の把握
- ・完成工事原価の算出
- ・未成工事支出金の算出
- ・経営事項審査での提出
以上のように、工事台帳の作成は、工事の収支管理、原価算出、財務管理、そして法的要件の遵守など、多岐にわたる重要な目的を持っています。適切な工事台帳の作成と管理は、建設業における効率的な経営とプロジェクトの成功に不可欠と言えるでしょう。
各工事の収支や利益率の把握
工事台帳に材料費、労務費、外注費、経費などの詳細を記録することで、各工事の収支状況や利益率を正確に把握できます。これにより、適切な原価予測や見積作成が可能となり、経営判断の精度向上につながります。
完成工事原価の算出
完成工事原価とは、完成した工事にかかった総費用のことです。工事台帳を用いて材料費、労務費、外注費、経費を詳細に記録することで、正確な原価算出が可能となり、純利益の把握に役立ちます。
未成工事支出金の算出
工事が未完成の場合、これまでに発生した費用を「未成工事支出金」として計上します。工事台帳を活用することで、未成工事支出金を正確に算出でき、財務状況の適切な把握が可能となります。
経営事項審査での提出
建設業の経営事項審査(経審)では、工事台帳の提出が求められることがあります。適切に作成・管理された工事台帳は、企業の信頼性や評価向上に寄与します。
工事台帳に何を記載するべきか
工事台帳は、各工事現場の取引内容を詳細に記録し、原価を集計するための重要な帳簿です。 これにより、工事の進捗状況や費用の内訳を把握し、適切な原価管理を行うことが可能となります。
工事台帳に記載するべき項目は以下のようなものがあります。
- ・材料費
- ・労務費
- ・外注費
- ・経費
これらの項目を正確に記載することで、各工事の収支状況や利益率を明確に把握できます。 その結果、経営判断の質が向上し、リスク管理にも役立つでしょう。
材料費
工事に必要な資材の購入費用や、その運搬費用を指します。 これらの費用を正確に記録することで、資材コストの管理が可能となります。
労務費
自社で雇用している作業員の給与や賃金、手当などを含みます。 ただし、事務職員の給与は含まれません。労務費を詳細に記載することで、人件費の適切な管理が実現します。
外注費
下請け業者や外部の専門家など、外部委託先に支払う費用を指します。 外注費の明確な記録は、外部リソースのコスト管理に役立ちます。
経費
上記の項目に該当しないその他の費用を指します。例えば、重機のリース費用、現場の光熱費、事務用品の購入費用、通信交通費などが含まれます。 これらの経費を適切に記載することで、全体的なコストの把握が可能となります。
工事台帳の作成方法
工事台帳は、各工事の取引内容を詳細に記録し、原価を集計するための重要な帳簿です。 これにより、工事ごとの収支状況や利益率を正確に把握し、経営判断やリスク管理に役立てることができます。
工事台帳の作成には、主にExcelを用いた方法と、現場管理アプリを使用した方法の二通りが存在します。
それぞれ解説していきましょう。
Excelでの工事台帳作成方法
ExcelはPCを導入している企業であれば、大抵の場合すでに導入しているため、導入コストがほとんど不要というのがメリットの1つです。
Excelを用いた工事台帳の作成は以下の手順になります。
- 1.テンプレートの利用
- 2.基本情報の入力
- 3.費用項目の設定
- 4.関数やマクロの活用
- 5.シートの分割
エクセルで工事台帳を作成する際の注意点として、入力ミスやデータの整合性の確保が挙げられます。定期的なデータのバックアップや、入力時のダブルチェックを行うことで、これらのリスクを軽減できます。
エクセルを活用した工事台帳の作成は、コストを抑えつつ柔軟な管理を可能にします。しかし、手作業が多くなるため、業務効率化の観点からは専用の現場管理ソフトの導入も検討すると良いでしょう。
現場管理アプリでの工事台帳作成方法
現場管理アプリを活用して工事台帳を作成することで、効率的なデータ管理とリアルタイムな情報共有が可能となります。
これにより、業務の効率化やミスの削減が期待できるでしょう。
現場管理アプリでの工事台帳作成手順は以下の通りになります。
- 1.アプリの導入と初期設定
- 2.プロジェクトの作成
- 3.費用項目の登録
- 4.データの入力と更新
- 5.レポートの作成と分析
現場管理アプリを活用した工事台帳の作成は、効率的なデータ管理とリアルタイムな情報共有を実現します。これにより、業務効率の向上やミスの削減が期待でき、組織全体の生産性向上に寄与するでしょう。
工事台帳作成の注意点
工事台帳の作成は、工事ごとの収支や原価を明確に把握し、適切な経営判断を行うために欠かせません。しかし、作成時には以下の注意点を押さえておくことが重要です。
- ・消費税の取り扱い
- ・入力ミスや業務の属人化を防ぐ
- ・法令遵守と適切な保存
- ・情報共有のタイムラグを最小限に
- ・デジタル化のメリットとデメリットの理解
以上の注意点を踏まえ、正確で効率的な工事台帳の作成と管理を行うことで、工事の透明性と経営の健全性を高めることができるでしょう。
消費税の取り扱い
工事台帳を作成する際、消費税を税込み、税抜きのどちらで記載するかを統一する必要があります。特に税抜きで作成しておくと、工期中に消費税率が変更された場合でも柔軟に対応できます。また、会計処理を税抜きで行っている場合、工事台帳も税抜きで作成することで金額の整合性が保たれます。
入力ミスや業務の属人化を防ぐ
表計算ソフトで工事台帳を作成する際、手作業による入力ミスが発生しやすく、また特定の担当者に業務が集中することで属人化のリスクがあります。
これらを防ぐために、複数人でのチェック体制を整えるか、専用の管理ソフトの導入を検討することが有効です。
法令遵守と適切な保存
工事台帳は、発注者の検査や監査時に提出を求められることがあり、法令で定められた期間の保存が必要です。特に、建設業法で作成が義務付けられている「施工体制台帳」と混同しないよう注意が必要です。
情報共有のタイムラグを最小限に
エクセルで工事台帳を作成する場合、手作業での入力や提出のタイミングのズレにより、情報共有にタイムラグが生じる可能性があります。これを解消するために、クラウドベースの管理システムを導入し、リアルタイムでの情報共有を図ることが推奨されます。
デジタル化のメリットとデメリットの理解
工事台帳のデジタル化は、入力ミスの削減や作業効率の向上など多くのメリットがありますが、初期導入コストやインターネット環境の必要性などのデメリットも存在します。これらを理解した上で、自社に適した方法を選択することが重要です。
工事台帳の保管方法
工事台帳の適切な保管は、法令遵守や業務の透明性確保の観点から非常に重要です。建設業法では、工事台帳の保存義務が定められており、適切に管理されていない場合、罰則の対象となる可能性があります。
さらに、過去の工事データを迅速に参照できる状態にしておくことで、トラブル発生時の対応や業務改善にも役立つでしょう。
工事台帳の保管方法について、必要な情報を個別に解説していきましょう。
工事台帳の保存期間
工事台帳の保存期間は、建設業法施行規則第28条によって以下のように定められています。
- ・基本的な保存期間
工事完成から5年間 - ・例外(住宅の新築工事)
発注者が宅地建物取引業者以外の場合10年間
保存期間を遵守しないと、法的な問題が生じる可能性があるため、適切な管理が求められます。
保管場所の選定
工事台帳は各営業所ごとに保管する必要があります。本社で一括管理するのではなく、工事を担当した営業所ごとに整理し、必要なときにすぐに取り出せるようにしておくことが重要です。
また、災害や紛失リスクを考慮し、安全な環境で保管することが求められるでしょう。
工事台帳の保存方法は、紙媒体と電子データのいずれでも可能です。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の運用に適した方法を選択することが重要です。
紙媒体での保存
- ・メリット
法令上確実に認められた保存方法 - ・デメリット
保管スペースが必要、劣化や紛失のリスクがある
電子データでの保存
- ・メリット
検索や管理が容易、保管スペースを削減できる - ・デメリット
データ消失のリスク、システム障害の可能性
適切な管理と法令遵守の徹底
工事台帳の適切な保管は、業務の信頼性向上にもつながります。法令を遵守しながら、事業の効率化を図るためにも、適切な保管体制を整えることが不可欠です。
デジタル化を進める場合は、バックアップやアクセス管理にも配慮し、安全にデータを維持できる仕組みを構築することが大切でしょう。
工事台帳保管時の注意点
工事台帳は、工事の進捗や契約内容を記録する重要な書類です。
法令による保存義務があるだけでなく、過去の工事記録を参照し、トラブル時の証拠として活用することもあります。
適切に管理されていないと、情報漏えいや業務の混乱につながる可能性があるでしょう。そのため、適切な保管方法を理解し、注意すべきポイントを押さえることが重要です。
工事台帳を保管する上で意識すべき注意点には以下のようなものがあります。
- ・保存期間を正しく守る
- ・紙媒体と電子データの併用する
- ・災害や盗難対策を講じる
工事台帳は適切な保管を行うことで、法令遵守だけでなく、業務の信頼性向上にも寄与します。保存期間や管理方法を正しく理解し、安全かつ効率的に運用できる体制を整えることが求められるでしょう。
工事台帳作成は現場ポケット

現場管理アプリの利用を検討している、気になっているという方におすすめの現場管理アプリとして、「現場ポケット」をご紹介します。
現場ポケットは、工程表の作成や工事台帳などの書類作成機能、PDFへの変換など、多彩な機能を一つのアプリで利用できる現場管理ツールです。
2025年1月時点で、導入実績は35,000人以上、契約更新率は約95%と、高い実績を誇るアプリです。
直感的な操作性で簡単に工程表を作成でき、1つの現場だけでなく、複数の現場を一覧形式で確認することができるため、複数現場を担当している方でも問題なく利用できます。
また、スマートフォンやタブレット1つで、どこからでも工程表の作成や進捗管理が可能となり、作業効率を大幅に向上させ、書類作成にかかる時間を短縮できます。
さらに、アカウント数やデータ容量の追加といった追加課金がなく、年間契約費用のみで利用できる点も魅力です。利用料金は税込みで11,880円/月で利用可能です。
現場管理アプリを活用することで業務の効率化に繋がり、これまで無駄に時間がかかってしまっていた部分で大幅な時短を図ることができるでしょう。
建設業で工事台帳作成などの業務の効率化を考えている方や現場管理アプリを試してみたい方は、ぜひ「現場ポケット」の利用を検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
建設業における工事台帳について解説してきました。
今回の記事の内容をまとめると以下の通りになります。
- ・工事台帳は、工事の進捗や費用を管理する重要な帳簿である
- ・材料費、労務費、外注費、経費などを記録し、工事の原価や利益率を正確に把握できる
- ・収支管理、原価計算、経営判断、法的要件の遵守などが作成の主な目的である
- ・作成方法は、Excelを活用する方法と現場管理アプリを導入する方法の2種類がある
- ・作成時は消費税の扱いや入力ミス防止、法令遵守、情報共有の迅速化を意識する
- ・保管期間は工事完成から5年(住宅新築工事は最大10年)で、適切な場所に保管する
- ・紙媒体と電子データの両方にメリット・デメリットがあり、自社に適した方法を選択する
- ・適切な管理と法令遵守により、業務の透明性と経営の健全性を確保できる
工事台帳は重要な記録を残す帳簿である反面、正確に記録を残し、管理するには相応の手間と負担がかかります。
そこで、現場管理アプリを活用することによって工事台帳の作成を効率化し、負担を減らすことができるでしょう。