建設業におけるDXとは?建設業界の課題や事例について解説

2025-04-14

建設業におけるDXとは?建設業界の課題や事例について解説

建設におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を使って業務プロセスやシステムを変革することです。

日常生活や仕事におけるDX化は、生産性の向上や働き方改革によって過ごしやすくなりました。

建設業界は深刻な人材不足と技術継承が問題になっているものの、まだ建設のDX化は浸透していない​のが現状です。

建設DXへ取り組めば、労働時間の短縮や業務の効率化など、建設業界の課題解消につながります。

この記事では、建設DXに関する基礎知識や導入事例、進め方について解説します。

DX推進における注意点や、DXが活用できる現場管理アプリについても紹介するので、ぜひ最後までお読みください。

建設業におけるDXとは?

建設DXとはデジタル技術を活用して、業務の自動化やビジネスモデルの変革を目指す取り組みを指します。

経済産業省が公表した「DX推進ガイドラインVer.10」によると、DXは以下の通りです。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

出典:「デジタルガバナンス・コード2.0」経済産業省 2022.1.13

建設DXにおけるデジタル技術とはAIやloT、3D・ARなどを活用し、建設生産プロセス全体を効率化します。

DXは単なるIT化ではなく、ITの活用を通してビジネスモデルや組織まで変革することです。

建設業の課題である人材不足や長時間労働もDX化によって解消できることが期待され、一部の企業では実用されつつあります。

建設業界の課題

建設業界で生じている課題は以下の5つです。

  • ・低い生産性
  • ・人材不足と高齢化
  • ・技能継承の問題
  • ・働き方改革のための見直し
  • ・対面主義が根強い

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

低い生産性

建設業界の問題点として指摘されているのが低い生産性です。

建設業デジタルハンドブックによると、労働生産性の推移は以下の通りで

す。

2019年2020年2021年2022年
建設業2,907円/人・時間2,992円/人・時間3,005円/人・時間2,885円/人・時間
製造業5,694円/人・時間5,687円/人・時間6,176円/人・時間6,091円/人・時間
全産業4,499円/人・時間4,428円/人・時間4,359円/人・時間4,642円/人・時間

参考:建築業デジタルハンドブック「5.生産性と技術開発」

2022年における建設業の生産性2,885円/人・時間に対し、全産業の平均生産性は4,642円/人・時間でした。

建設業は2001年から2020年まで3,000/人・時間を超えず、2022年も前年度より減っており、他の職種と比較して生産性が低いのがわかります。

建設業は手作業が多く、生産工程の細分化により情報伝達に時間を強いられ、長時間労働や生産性の低下に大きく影響​しています。

さらに人材不足や高齢化により、適切な人材配置ができていません。​今後DX化によって、生産性を向上させられるかが1つの鍵になるでしょう。

人材不足と高齢化

建設業の就業者数は、年々人材不足と高齢化が問題になっています。

建設業デジタルハンドブックによると、建設業就業者数は2004年584万人に対し、2023年には483万人と約100万人も減少​しています。

そのうち建設技能者も大きく減少しているのが現実です。

また建設業就業者の高齢化の進行について、年齢別では2023年における55歳以上が全体の36.6%を占めます。​

29歳以下が全体の11.6%しかいないため、建設業界の高齢化は深刻化しています。

参考:建設業デジタルハンドブック「4.建設労働」

技能継承の問題

就業者の高齢化と若手の人材不足から、技術継承についても深刻な問題です。

具体的な課題は以下の3つです。

  • ・技能を継承する若手がいない
  • ・技能継承に取り組む時間の不足
  • ・技能の伝え方が難しい

若手の働き手は元々少ない上に、すぐに離職してしまうという問題もあります。

若手の人材が集まらないと考えられる原因は以下の通りです。

  • ・労働時間が長い
  • ・肉体的負担が大きい
  • ・危険な作業がある
  • ・技能や技術の習得に時間を要する

伝統的な建設技法を次の世代へつなぐことが困難なため、建設DXによるデジタル化で品質管理や業務の効率化が望まれます。

参考:中小建設業におけるデジタル化と技能継承 日本公庫総研レポート2023.3

働き方改革のための見直し

建設業界は働き方改革のための見直しについて課題があります。

2023年時点で建設業の年間労働時間は、1,978時間で全産業の1,726時間と比較して約14%の増加です。​(参考:建設業デジタルハンドブック「4.建設労働」

建設業は工期に遅れないためにも、残業や休日返上など長時間労働は避けられません。

2024年4月に建設業の時間外労働の上限規制が適用されたため、制限を超過した労働時間を確保できない可能性があります。​

そのため建設業は今後も深刻な人材不足になることが想定されます。

建設業界の就業者の負担を軽減し人材不足にならないよう、建設DXの取り組みで働き方改革を見直すことが重要になるでしょう。

対面主義が根強い

建設業界は関係者同士が、顔を見て打ち合わせをする対面主義が根強い傾向です。現場の調査や図面・指示書の共有など対面で行います。

建設業界ならではのDX化が進まない原因は主に以下の3つです。

  • ・現場に行くのが習慣になっている
  • ・連絡体制の構築のハードルが高い
  • ・作業指示書や図面の共有は直接したい

複数の関係会社や専門家と作業を進めていくなら、現場で集約して情報共有する方が安心で効率的です。

そのため、オンライン会議やテレワークなどによる働き方改革がなかなか進みません。

建設業界は依頼会社から1次下請け、2次下請けと続く重層化構造が習慣化されているので、DX化しにくい傾向です。

DX化のメリット

さまざまな課題を抱えている建設業をDX化するメリットは以下の4つです。

  • ・業務効率化とコスト削減
  • ・省人化や省略化が図れる
  • ・働き方改革の促進
  • ・技術継承の促進

それぞれのメリットについて詳しく紹介していきます。

業務効率化とコスト削減

建設DXに取り組めば、生産性向上や業務効率化につながります。DXは設計や情報をクラウドでデータを共有するからです。

たとえば3Dデータを用いて立体的な図面を描くと、現場に行かなくてもオンラインで打ち合わせができます。​

移動時間を削減できれば生産性が上がり、重要な業務に人材の集約が可能です。人件費や材料費などさまざまなコスト削減につながるでしょう。

省人化や省略化が図れる

建設業界にデジタル技術を導入すると、人手が少なくても業務が進めやすくなります。

たとえばドローンを使って測量したり、無人の重機を遠隔操作したりすれば、危険度の高い現場での作業員が少なくて済むからです。

ロボットの活用は機械を操作する人員が不要になり、作業の省略化が図れて業務の効率化が進むでしょう。

働き方改革の促進

建設のDX化により、働き方改革の促進にも効果があります。デジタル技術を活用すれば、建設業界で問題になっている長時間労働の改革にもつながるからです。

省人化や省略化により仕事が効率化されると、労働時間も短縮され労働生産性が向上​します。

その上事務手続きのデジタル化も進めば、事務所のテレワーク導入も期待できるでしょう。

技術継承の促進

建設業の高齢化から、職人の技術と経験が特定の人に依存してしまうため技術継承が課題です。

建設DXでデジタル技術を活用し、熟練の職人が持つ技術を数値化すれば、ノウハウをデータで残しておけます。​

データ化や見える化を図れば組織で共有できるようになり、若手への技術継承も可能になるでしょう。

建設DXの現状

総務省の令和3年情報通信白書によると、建設DXの取り組みの現状は以下の通りです。

建設業におけるDXの取組状況割合
2018年度以降から実施している13.5%
2020年度から実施している3.6%
2021度から実施している3.6%
実施していない、今後実施を検討18.9%
実施していない、今後も予定なし60.5%

参考:総務省「令和3年情報通信白書」

2020年までにDXを実施しているのが20.7%、今後実施を検討している企業を合わせると39.6%です。​

DXは少しずつ進んでいるものの、現場作業におけるDX導入は難しいと言われています。

建設DXの現状から実施されない理由は主に以下の3つです。

  • ・人材不足とIT育成の人材不足
  • ・アナログ作業のまま
  • ・設備投資の難しさ

慢性的な人材不足でDXを取り入れたくても、デジタル技術を扱える人材も不足しています。

建設業界はアナログ作業と高齢化が進み、DX導入の理解と設備の余力が限られている企業が多い印象です。

建設DXの事例

実際に建設DXに成功した事例を2件紹介するので、導入を考える際の参考にしてください。

ロボットによる現場巡視:大成建設株式会社

大成建設はDXのシステム技術を活用して、ロボットによる現場巡視業務​を開始しています。

遠隔巡視システム「T-iRemote Inspection」は、建設現場における品質や安全確認などを遠隔で行うことが可能です。

このシステムは遠隔操作やカメラだけでなく、双方向の会話機能など業務効率化を目指した機能を有しています。​

運動性能を備えたロボットを搭載し、現場監督に代わって現場内の巡視を行い、現場の施工品質の向上に集中できるようになりました。

参考:大成建設:ロボットによる現場巡視

設計の初期段階からデジタルで建設物をつくる:清水建設株式会社

清水建設はDXのシステム技術を取り入れ、設計の初期段階から竣工までデジタルで建設物を作り出しました。​

設計の企画段階では、コンピュテーショナルデザイン「Shimz DDE」を活用し、提案力の強化につながります。

BIMデータを連携する「Shimz One BIM」で設計図を整合調整し、基本から竣工時までデジタルによる管理が可能。

「Shimz Smart Site」でロボットの作業や3Dプリンターを活用するなど、現場においてデジタル化の施工を推進することで生産性の向上を目指しています。

参考:シミズのDX「ものづくりをデジタルで」

建設DXの進め方

建設DXの進め方は以下の3つに分けられます。

  • ・現場の課題を把握する
  • ・DX推進の目的を明確にして戦略を策定する
  • ・DX推進状況を評価し効果検証と改善をする

建設DXの進め方について、手順とポイントを紹介します。

現場の課題を把握する

まず、建設DXで解決したい課題を把握することが必要​です。現場の作業員の声を聞き、どの業務が無駄で負担が多いのかを明確にします。

建設業界は人材不足や超過勤務など課題があります。改良点や要望点があればピックアップして、現場の課題を洗い出しましょう。

DX推進の目的を明確にして戦略を策定する

現場の声から建設DXで解決させたい課題を明確にし、具体的な戦略を計画します。

課題を解決するデジタル技術について情報収集し、以下の評価基準を確認しましょう。

  • ・導入したらどのような効果があるのか
  • ・導入難度について
  • ・運用しやすいか
  • ・コストはどれだけかかるのか

建設DXは個人の問題ではなく、企業全体が取り組まなければ変革は起こせません。

現場の課題を作業員と経営者にも共有してもらい、戦略を策定しましょう。

DX推進状況を評価し効果検証と改善をする

DXを導入したら推進状況を評価し、効果検証して問題点があれば改善します。

デジタル化した作業のエラーや、作業員がデジタル化に慣れず活用できていない可能性があるからです。

システムの状態や作業員の様子を伺いながら、DX効果を高めていきます。

現在課題を抱えている建設会社は、早期に建設DXを取り入れて業務の改善を図りましょう。

DX推進の注意点

DX推進の注意点は以下の3つです。

  • ・現場の声をよく聞く
  • ・現状の課題と目的を明確にする
  • ・最適な方法を選択する

それぞれの注意点を解説するので、DX導入する際の参考にしてください。

現場の声をよく聞く

DX導入する際は現場の声をよく聞いて、意見を反映した取り組みをするのが大切です。

デジタル化した作業を行うのは現場の作業員なので、現場が働きやすい環境作りをしなければいけません。

デジタル化を進めるにあたり、現場からの反発が起こる可能性もあるため、事前に建設DXのメリットや必要性も説明しておきましょう。

現状の課題と目的を明確にする

DX化する前に現状の課題を明確にして目的を定めることが重要です。

目的が曖昧では作業員は無駄な作業や、DXに取り組む意味がわからず方向性を理解できないかもしれません。

作業員が進んで建設DXに取り組めるよう、問題点を改善して変革化を進めましょう。

最適な方法を選択する

建設DXを導入したものの使いにくくて会社に合わないなら、今使用しているデジタル技術を見直してみましょう。

建設DXのデジタル技術はAIやloT、BIMからドローンなど多種多様にあります。

課題を解決するために必要なデジタル技術を見出し、作業員の使いやすさを確認しながら、最適な方法を選択しましょう。

現場管理なら現場ポケット

DX化のアプリを検討している方に、おすすめの現場管理アプリ「現場ポケット」をご紹介します。

現場ポケットは現場の進捗確認や工程表の情報共有など、多彩な機能を1つのアプリで利用できる現場管理ツールです。

2025年1月時点で、導入実績は35,000人以上、契約更新率は約95%と高い実績を誇ります。

1つの現場だけでなく、複数の現場を一覧形式で確認できるため、複数現場を担当している方でも問題なく利用できます。

日報機能や施工写真はもちろん、現場情報まで会社全体でアクセスできてスムーズな情報共有が可能。

さらに、アカウント数やデータ容量の追加といった追加課金がなく、年間契約費用のみで利用できる点も魅力です。利用料金は税込み11,880円/月で利用できます。

現場ポケットを活用すれば、施工管理を効率化して業務時間を大幅に短縮できるので、人材不足や長時間労働の解決につながるでしょう。

まとめ

以上、建設DXにおける取り組みの必要性について解説しました。

今回の記事の内容をまとめると以下の通りになります。

  • ・建設業の課題は人材不足と高齢化
  • ・建設DX化は課題の解決に活用できる
  • ・建設DXを進めれば生産性の向上が期待できる
  • ・職人の技術を数字化して技術継承を促進
  • ・DXが活用できる現場管理アプリで業務効率化

建設DXはデジタル技術を活用し、業務のプロセスを変革することで、建設業界における課題の解決の糸口になります。

現場管理アプリは導入コストがかかるものの、工事現場において行動や知識をデジタル化でき、あらゆる業務効率化が可能です。

労働力不足を解消するためにも、建設業のDX推進は必要です。専門スタッフのサポートもあるので、ぜひ導入してみてはいかがでしょうか。


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