建設業の公共工事では、作成しなければならない書類が多過ぎることが問題となり、国土交通省などでは工事書類の電子化を推進しています。
そもそも公共工事で書類が多い理由は、公共工事は国民の税金によって賄われるため、工事費用には高い透明性が求められることが挙げられます。その結果、提出しなければならない書類の数が多くなっているのです。
この記事では、まず、現場で作成される書類の種類と内容について説明します。次に、ペーパーレス化の意義とメリット、ペーパーレス化の流れについて解説します。
また、ペーパーレス化に貢献するアプリ「現場ポケット」にも触れていますので、ぜひ最後まで読んでいただき現場の書類管理の効率化の参考にしてください。
建設業界はなぜ書類が多いのか?
公共性の高い建築物や土木構造物は、多くの利用者に提供されるものであるため、安全性や耐久性、快適性などに高い基準が設けられており、それをクリアすることが築造の条件となります。
特に公共工事では、入札による請負者決定の段階から透明性が要求され、施工の適正さや品質が発注者の要求水準に達していることなどが求められます。
そのため、工事のさまざまな段階で書類が必要になっているのが現状です。 ここでは、一般的な工事書類の種類と概要を解説します。
設計図書・仕様書など
公共工事が公示されるとき、入札参加者の積算の資料として公表されるのが、設計図書や仕様書です。
設計図書は、工事内容の詳細を記載した書類全般のことを指し、図面には意匠図、構造図、設備図、外構図などが含まれます。仕様書には、標準仕様書や特記仕様書などがあり、工事内容や施工方法、材料などについて説明しています。
ここからは、一般的に、入札で落札した請負(受注)会社が提出しなければならない書類について解説します。
工事着手時に提出する書類
- ・工事着手届
- ・工事工程表
- ・請負代金内訳書(法定福利費を明示したもの)
- ・現場代理人等指定通知書(現場管理者の資格者証、雇用証明書類など)
- ・経歴書(これまでの工事経歴と必要となった資格・免許証の写し)
- ・労働者災害補償保険関係成立証明書(労働基準局の押印前のもの)
- ・積算労務単価報告書
- ・労務者配置(予定表)
工事着手後に提出する書類
- ・火災保険等付保通知書
- ・下請負人選定通知書(表紙)下請負が無い場合は表紙のみ提出
- ・下請負人選定通知書(下請会社の経審、各種保険の加入状況を添付)
- ・施工体制台帳
- ・再生資源利用計画書
- ・建設業退職金共済掛金収納届
- ・その他
施工中に提出する書類
- ・総合施工計画書(工事の全般的な進め方、施工方法や品質目標など)
- ・工種別施工計画書(工事概要、工期、使用材料、施工管理全般について記載する)
- ・その他(必要に応じて、協議簿や各種届を提出)
工事完成時に提出する書類
- ・工事完成通知書(全体写真、主工程の写真などを添付)
- ・再生資源利用や建設副産物がある場合は実績書
- ・完成図(原図と製本)
- ・施工図(原図と製本)
- ・工事工程・完成写真
- ・材料搬入検査簿(納入伝票・材料試験書・品質証明書など含む)
- ・産業廃棄物関連種類
- ・工事状況等の確認書類
この他、各発注者によっては提出が求められる書類があります。
建設業界のペーパーレス化とは?
ペーパーレス化とは、これまで紙で作成されてきた書類を電子化して、パソコンやモバイル端末で作成や保存、共有できるようにすることです。
まず、ペーパーレス化に係る法改正について説明し、次に、どのような理由でペーパーレス化が求められてきたかを解説します。
紙書類の電子化に関する法改正
建設業における、電子化の法改正の流れを見ていくことで、国がどのように電子化を推奨してきたかを確認できます。
2001年に建設業法が改正され、書面化が義務付けられていた工事請負契約書の電子化が、相手方の承諾を得れば可能になりました。また、2005年に施行された電子文書法により、いくつかの条件を満たせば紙書類を電子化して保存できるようになったのです。
2020年10月には、電子帳簿保存法が改正され、国税関係帳簿書類を電子化して保存する要件が緩和されました。この改正の背景には、キャッシュレス決済の普及があるとされています。
紙書類を電子化する流れは時代の趨勢であり、特に新型コロナ感染症対策によるテレワークなどの普及がペーパーレス化を加速させたと考えられています。
業務を効率化する
建設業は、他の業種に比べて業務に係る書類が多いです。理由としては、特に公共工事における入札や契約から始まり、工事の施工中から竣工まで発注者と請負会社の間でやり取りされる書類の多さが挙げられます。
さらに、建設業は重層下請構造であり、元請と1次下請、1次下請と2次・3次下請との間でやり取りされる書類もあります。
これらの紙書類は、保存するためのスペースの確保や書類郵送の手間や費用が必要です。この業務を効率化するのが、紙書類の電子化です。
働き方改革に準拠
建設業は他産業に比べて生産性が低く労働時間も長いとされ、それを改善するための取り組みがなされ、労働時間は減少してきましたが十分な状態ではありませんでした。
2024年4月から適用された「時間外労働の上限規制」により、建設会社は従業員の働き方改革に取り組む必要性が義務付けられています。
この働き方改革に準拠するための施策の一つが、システムやアプリを導入して書類をペーパーレス化して、労働時間を短縮するという取り組みです。
国が進める建設業界のペーパーレス化
建設業のペーパーレス化については、国土交通省が積極的に推進しています。ここでは、その概要を3つのポイントで解説します。
システムの構築
国土交通省では、ICT(情報通信技術)の全面的な活用を施策として導入し、i-Construction(アイ・コンストラクション)を進めています。i-Constructionとは、建設現場の生産性向上に向けて、測量、設計、施工、検査、維持管理などのすべての過程でICTを導入し業務の効率化を図ることです。
建設会社においても、単なるペーパーレス化という目的だけではなく、業務全般の効率化を目指すことが推奨されています。そのためには、業務の一元管理など、全社的なシステムの構築に取り組むべきです。
e-施工管理
e-施工管理とは、施工管理の効率化や高度化を図ることを目的に、ITを活用した新しい施工管理のことを指しています。
e-施工管理によって、工事情報はリアルタイムで共有され、コスト削減やコミュニケーションの質が向上し工事品質や顧客満足度の向上へと繋がっていくのです。
経営コックピット
経営コックピットとは、国土交通省が中小建設業の経営者に向けた取り組みです。企業の利益を増加させるためには売上の増加とともに、コスト管理の合理化が必要であるという方針に基づいています。
そのために、各業務の管理レベルにおいてのIT活用レベルのバランスを対比しながら、ムダや採算性の低い業務の課題を洗い出します。そして、最適な方法でITを活用することで、コスト管理を改善するというシステムの構築を図る
建設業界がペーパーレス化するメリット
多くの建設会社がペーパーレス化によって業務上のメリットを享受しています。このメリットを、生産性の向上、コスト削減、セキュリティの強化という3つのポイントで解説します。
生産性の向上
ペーパーレス化によって、何が改善されて生産性の向上につながるのかを説明します。
手入力によるミスの削減
情報を紙ベースの書類に手入力すると、誤字脱字、記入漏れが起きやすいです。それは、記載された文字や数字を集計する立場でも変わりません。
キーボードや画面タッチでの入力は、そのようなミスを大幅に削減でき、訂正や追加も楽です。データ入力なら、よく使う単語や定型文を登録することもできるので作業は大幅に効率化します。
工事情報の共有と一元化
データ入力によるペーパーレス化では、ほとんどのケースでクラウドサービスを利用します。そのため、工事情報の共有のスピード感は格段にアップします。
例えば、現場でスマホを使って作成した日報は、クラウドにアップロードすると同時に、本社のオフィススタッフが確認できるのです。
電子化されたデータは、さまざまなファイルに同期されるので、工事情報の一元管理が簡単に可能です。また、同じ情報を帳簿ごとに転記し直す手間もなくなります。
業務時間の大幅な短縮
電子化によって、情報入力の作業時間は大幅に短縮され、ミスも削減されます。クラウドの活用によって業務の一元管理が可能になり、業務は格段に効率化します。
PCやタブレットだけでなく、さまざまなモバイル端末が活用され、時間や場所を選ばずデータ入力と共有、修正ができるので業務時間の大幅な短縮が可能です。
業務の格段の効率化と作業時間の大幅な短縮によって、生産性は大きく向上することになります。
コスト削減
ペーパーレス化がコスト削減に繋がる理由について解説します。
印刷コストの削減
ペーパーレス化によって、用紙代、インク代などの消耗品費、印刷にかかる労力や時間のコストなど印刷コストを削減することができます。
取引先が了承して電子データでの納品・請求が可能になれば、郵送費用も削減可能です。
保管スペースの縮小
建設業では、工事ごとに多大な書類が発生し、保管期間も書類の種類によって所定年数が決められています。その紙ベース書類の保管スペースは、大きな場所を確保しなければなりません。
しかし、ペーパーレス化が実現すれば、保管スペースを大幅に縮小することができます。
労務費用の圧縮
ペーパーレス化して、電子データによる業務が開始されれば、業務が効率化して作業時間が短縮します。また、データ共有や一元管理が進めば、ここでも業務時間は短縮できます。
このように作業の生産性が向上すると、各担当者の負担が軽減され、時間外労働も減るので労務費用の圧縮ができます
情報のセキュリティ強化
情報の電子化・ペーパーレス化が進むと、それまで物理的な方法で保管・保護するだけだった価値ある情報を、さまざまなセキュリティによって外部の脅威から守ることができます。
一般的なパスワード設定やウイルス対策だけでなく、暗号化やURLの無効化など高度な情報セキュリティで外部からの脅威のシャットアウトが可能です。
ペーパーレス化をするための流れ
電子化のためのアプリを導入し、効果的にペーパーレス化を進めるための手順を見ていきます。
①現状の業務フローの洗い出し
まず、やるべきことは、現状の業務フローを洗い出して可視化するです。建設業の業務は多様ですから、漏れのないように各業務を複数の担当者でチェックして、一覧にして共有することをおすすめします。
②反省点や課題を明確にする
現状の業務フローの洗い出しの過程で、反省点や課題があれば、それも明確にしておくことです。いつも時間のかかる作業やミスや漏れが多い業務など、実際の経験を交えた反省点や課題です。
③電子化の目的や範囲を確定する
ペーパーレス化に関わる担当者全員で電子化の目的を共有し、電子化の業務範囲を確定しましょう。紙ベースのほうが適切だと思われる業務がある場合は、ここで提起します。
④電子化のためのアプリを決める
ここまでの状況を踏まえて、電子化のためのアプリを決めます。まず、気になるアプリを一通りリストアップし、予算や自社の業務内容、ITリテラシーと照らし合わせて、いくつかの候補に絞ります。その中で、無料トライアルなどを利用して最終的な決定をしてください。
⑤試用運用の開始
社内的なコンセンサスと、アプリのメーカーや運営会社との協議の後に試用運用を開始します。試用運用の期間や有償か無償かについては事前に明確にしておきましょう。
⑥本導入前の調整を行う
一定の試用運用期間中か直後に、本導入前の調整を行います。想定と違った点、カスタマイズやオプションは必要か、必要であれば費用はいくらかかるかなどを詰めていきます。
⑦活用ルールの策定と社内研修
本導入が決定した場合は、アプリ側担当者を交えて自社独自の活用ルールを策定し、社内研修をスケジューリングしてください。また、導入後の一定期間はアプリ側のサポートが必要です。
現場ポケットでペーパーレス化

現場管理に特化したアプリ「現場ポケット」は、現場のペーパーレス化に大きく貢献します。
現場ポケットは、トーク機能で、現場単位でのグループチャットができるので素早く情報共有が可能です。重要な情報は掲示板にピン留めもできます。
日報機能を使えば、その日の作業記録も簡単に登録できます。現場別、職人別の個別集計表を出力できるので非常に便利です。
アルバム機能を活用すれば、トークで投稿した写真を自動整理してくれて、あとから探す手間もかかりません。
これらの作業がスマホやタブレットで可能で、ペーパーレスです。
現場ポケットは、初期費用無料でランニングコストは基本11,880円(税込)/月、オプション費用は一切かからず、アカウント数・データ容量、現場登録数が無制限で使用できます。
まとめ
ここまで、建設業の書類が多過ぎる理由とペーパーレス化について、以下の内容で解説してきました。
- ・建設業界ななぜ書類が多いのか
- ・建設業界のペーパーレス化の概要
- ・国がすすめる建設業界のペーパーレス化
- ・建設業界がペーパーレス化するメリット
- ・ペーパーレス化するための流れ
- ・現場ポケットのペーパーレス化
公共的な工事を通して社会のインフラを支える建設業では、安全性や耐久性などの品質について高い基準が規定されています。それをクリアしていることを証明するため、数多くの書類が必要となっています。
この書類の多さが長時間労働の理由の一つであったため、効率化が必要でした。その解決策が電子化によるペーパーレス化です。
適切なペーパーレス化には、有効な機能を備えたアプリの導入が欠かせません。現場管理のペーパーレス化なら「現場ポケット」導入の検討をおすすめします。