すべての建設業の現場では、何よりも、常に「安全」が優先されます。この安全第一主義を支えているのが、KY活動(危険予知活動)です。
建設現場で何よりも安全が優先される理由の一つに、建設業の労働災害は、他産業に比べると重大事故になりやすい点が挙げられます。
令和5年の労働災害による死傷者数は135,371人で、建設業は全産業中4番目の14,414人(10.6%)でした。しかし、死亡者数では、全産業755人のうち1番多い223人(29.5%)となっています。
この記事では、建設現場の安全管理におけるKY活動の重要性を理解するため、KY活動の概要と目的、KY活動の進め方とコミュニケーションの大切さなどについて解説します。
さらに、現場のコミュニケーションを格段にレベルアップするアプリ「現場ポケット」も紹介していますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
厚生労働省|令和5年労働災害発生状況の分析等
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001099504.pdf
KY活動(危険予知活動)とは?
KY活動(危険予知活動)とは、工事現場で起こりうる危険を事前に予測し、対策を行うことで危険を避け事故を未然に防ぐ活動のことです。
このKY活動の要点を浮き彫りにするため、KY活動の必要性、リスクアセスメントとの相違点、KYサイクルの取り組み方という3つのポイントで解説します。
建設業におけるKY活動の必要性
建設現場は、多くの工事関係者が長期に渡って集中的に働く場所です。同時に、高所での作業や建設機械の運転、さまざまな機械工具や火気の使用が行われる危険な場所でもあります。
このような特徴を持つ建設現場で安全作業を継続するためには、現場で働くすべての人が日常的に現場の安全に対して意識を向けることが重要です。
現場で働く全員が常に安全に意識を向けるように実施されるのが、KY活動(危険予知活動)です。言い換えれば、KY活動なしでは、建設現場の日々の安全管理は維持できないといえるでしょう。
リスクアセスメントとの相違点
KY活動とリスクアセスメントとの主な違いは、KY活動が現場の作業者主体であるのに対して、リスクアセスメントは管理者や経営者サイドが中心である点です。
KY活動は、日々の作業前、または作業中に随時実施されます。そして、主に作業者が作業中起こる可能性がある危険について、作業者自身の経験に基づき危険度を評価し対策を講じます。
リスクアセスメントは、定期的に実施され、管理者が中心となって職場環境全体の危険を把握します。そのあと、定量的なリスク評価法を使用して評価し、より具体的な対策を検討します。
この2つは相補的な関係にあり、両者を組み合わせることで相乗効果が期待できます。
KYサイクルの取り組み方
KYサイクルとは、KY(危険予知)を活用して、安全のための活動を日常業務と一体化する取り組みのことです。具体的には、業務を「作業前」「作業中」「作業後」の3つのサイクルで段階化してKYを行います。
・作業前
作業者全員で現場の危険箇所や注意点を共有し、具体的な対策を立てます。作業手順を再確認し、安全装備の点検なども行います。
・作業中
計画した対策を実行し、定期的に作業環境の確認が必要です。予期せぬ危険が発生した場合はすぐに報告し対策を講じなければなりません。
・作業後
作業が終了したら、その日の作業を客観的に分析し、危険要因とその対策を見つけ出します。次の日の作業に向けた準備も行います。
大人数で行うのではなく、例えば、職長と数人の作業者で1つのチームとしてKYサイクルを行うのが効果的です。
KY活動(危険予知活動)の目的
建設現場の安全作業の継続に欠かせないKY活動(危険予知活動)の具体的な目的とは何かを説明します。
不安全行動の防止
建設業における不安全行動とは、安全規定を無視したり、安全措置を怠ったりなど作業者本人および現場の安全を脅かす行動をいいます。
建設業では、この不安全行動が労働災害を引き起こす大きな原因の一つとして捉えられています。
不安全行動が起きる要因は、慣れや過信、面倒を避ける、ルールや手順の理解不足、危険だとわかっていても作業効率を優先してしまうなどによる安全意識の欠如です。
この不安全行動を防止するためには、KY活動を日常的に継続することが必要です。チーム単位で、作業前に現場の危険を予知し対策を立てることで、安全意識を高め合い安全行動を定着させます。
危険予知能力の向上
KY活動の目的の一つに、作業者が現場環境を観察し、現場に潜む危険を予知する能力を養うということがあります。
危険に対する感性や集中力を高めて早期に危険を発見できれば、災害が起きる前に、安全な作業環境を整えることが可能です。
危険予知能力を向上させるには、作業前あるいは作業中に、危険の兆候を見つけ出すことから始めます。足場の状態や機械の異常音、作業者の健康状態などがチェック事項です。
危険の兆候を捉えたら、危険の度合いや起こり得る災害の状態を想定し、どのような対策を講じるべきかを検討します。このときチームで兆候を共有し、議論することもKY活動の重要な要素です。
危険の兆候を捉えて、被害状況をイメージし対策を検討するという過程を繰り返すことで危険予知能力は向上していきます。
職場環境の適正化
KY活動の最終的な目的は、不安全行動のない安全意識の高い作業者によって、常に現場の危険予知と対策が講じられる職場環境の適正化です。
職場環境の適正化は、以下のような手順で行うことができます。
① 作業前・作業中の危険予知
② 危険の特定(不安全行動・危険箇所)
③ 特定された危険に対する改善策
④ 現場関係者への周知と実施
⑤ KY活動の記録と分析
KY活動を一度行っただけで、職場環境が適正化されるということはあり得ません。KY活動を日々の業務の中に組み込み、継続して取り組むことで初めて定着していくものです。
KY活動(危険予知活動)の進め方
建設業におけるKY活動とは、事前に危険を洗い出し対策を立て、安全作業を継続して実践するという取り組みです。ここでは、より効果的なKY活動の進め方を3つのポイントで解説します。
建設現場の現状を把握する
KY活動の初期段階では、建設現場の現状把握が行なわれます。正確な現状把握なしに有効な対策は立てられないので、この過程は非常に重要です。
まず、作業エリア、作業人数、作業者の作業分担などを含め、当日の作業内容を共有します。そして、作業を開始する前にチーム全員で発生しうる危険について話し合い、その危険を全員が具体的に認識します。
小さな危険も含め潜在的なリスクを洗い出し、多角的な視点で危険要因について掘り下げて話し合うのがポイントです。
そして、この話し合いは、チームのメンバーが自由に発言できるオープンな雰囲気であることが求められます。
危険ポイントを確定する
現場の現状把握が済んだら、具体的に危険ポイントを確定します。
危険ポイントとは一般的に、作業場所であれば、足場での作業、高所での作業、狭い場所などでの作業です。作業内容は、建設機械操作、電気や溶接などの作業になります。
天候では、暴風雨や雷、熱中症など、時間帯としては夜間や早朝の作業が考えられます。また、フルハーネスや安全帯、安全靴などの着用が必要な作業も要チェックです。
実際の現場で、以上のような危険ポイントがあるのか、あれば作業者にとって危険度はどれくらいなのかも合わせて確定することが大切です。
具体的な対策を決めて実践する
現状の把握と危険ポイントの確定後、具体的な対策を決めて実践する段階へと進みます。
建設業の労働災害で最も多い転落事故や墜落事故を例に対策や予防ついて説明します。
・転落防止対策
まず、労働安全衛生規則に基づいて足場などの作業床、囲い・手すりなどが設置されているか、適切な墜落制止用器具が使用されているかをチェックします。それから、必要に応じて照明や表示板、昇降設備の安全性の確認などを行う必要があるでしょう。
・墜落事故防止
高さ2m以上で行う作業では、作業床を設置し、開口部には囲いや手すり、覆いなどが正しく設置されているか確認します。また、ハーネスや安全帯などの使用になれていない作業者がいるときは、墜落制止用器具の使用方法について教育と訓練を行う必要があります。
上記の他、滑りやすい場所や作業の支障になるような障害物の撤去などもKY活動の中での有効な対策です。そして、最も重要なのは、このような対策を継続して実践することです。
KY活動(危険予知活動)を怠るとどうなるか
建設現場でKY活動を怠ると、労働災害の発生リスクが増大し、事故が起こりやすくなります。事故が起きると企業は経済的な損失を受け、社会的な信用も低下するでしょう。
ここでは、KY活動を怠ると、なぜ労働災害の増加に繋がるのかを説明します。
適切な危険予測ができない
KY活動を大きく2つに分けて考える場合があります。それがKYK(危険予知活動)とKYT(危険予知訓練)です。
KYKは、現場作業直前に実施され、KYTは事前に訓練として研修室や事務所で行われることが多いです。つまり、KY活動を身に着けるには、それだけ日々の積み重ねが重要だということです。
KYKやKYTが行われなければ、実践も訓練もなくなるので、適切な危険予測ができなくなります。
ヒューマンエラーの多発
KY活動を怠ると、安全に対する意識が低下して不安全行動を起こしやすくなり、安全作業に関する周囲との連携もなくなるのでヒューマンエラーやヒヤリハットが多発するでしょう。
現場の危険要因をチェックせずに入場するので、思い込みや見当違いが先行して、ヒューマンエラーが起きやすくなります。作業者本人だけでなく、周囲を巻き込んでの危険作業を行う可能性も高いです。
ヒヤリハットとは、作業中に事故やトラブルに繋がる「ヒヤリ」や「ハッと」を感じた体験のことです。KY活動が行われていないと、このヒヤリハットは関係者と共有されないので、同じような体験が繰り返され対策も講じられないということになります。
重大な労働災害の発生
KY活動を怠ったままだと、作業者は的確な危険予測ができず、不安全行動によるヒューマンエラーやヒヤリハットが放置され続けます。その結果、現場の危険要因は見過ごされ、取り返しのつかない重大な労働災害が発生します。
建設業は、ちょっとした気の緩みや、ささやかな怠慢が大きな被害へと繋がってしまいかねない業種です。
KY活動は、建設現場における重要な業務の一つであり、これを怠ることは個人だけでなく、企業にとっても大きなマイナスであると捉えるべきでしょう。
コミュニケーションの重要性
KY活動は、一定人数のチームによって行うのが効果的です。このチームでのKY活動に欠かせないのがコミュニケーションです。
建設業のKY活動におけるコミュニケーションの重要性について解説します。
管理者と現場作業者
現場でのKY活動において、管理者はKY活動の必要性を理解し、率先して実践することが求められます。また、KY活動の主体である作業者が、コミュニケーションを取りやすいように環境を整備することも重要な役割でしょう。
管理者は、KY活動がマンネリ化しないように、定期的にテーマや内容を見直すことも必要です。作業者は管理者の指導や提案に積極的に応じて、コミュニケーションを高めることを目指すべきです。
KY活動は全員参加
KY活動の基本は全員参加ですが、建設会社や現場の規模によっては、工事関係者が常に向き合ってコミュニケーションを取ることが難しい場合もあります。そういうとき便利なのが、コミュニケーションを取るためのアプリやツールです。
クラウド型のアプリを使えば、他の現場の作業者や本部事務所の担当者とコミュニケーションを取るのもリアルタイムで可能になります。
単にメッセージを送るだけでなく、写真や資料のデータ送信もできるので、コミュニケーションの質も向上します。
職場環境の健全化
KY活動でコミュニケーションを充実させることで、現場はもちろん、建設会社の職場全体が「労働災害の撲滅」という目標に向かって一丸となって進むことができます。
この目標を実現するために、職場環境を健全化するためには、チーム内の日々のコミュニケーションの積み重ねが重要です。これによって、関係者の安全意識は高まり、危険の予測や確定、効果的な対策の実践という流れがよりスムーズになっていきます。
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まとめ
建設業のKY活動(危険予知活動)について、以下の内容で解説しました。
- ・KY活動の概要
- ・KY活動の目的と進め方
- ・KY活動を怠るとどうなるか
- ・KY活動におけるコミュニケーションの重要性
- ・現場のコミュニケーションを強力サポートする「現場ポケット」の紹介
建設現場では、常に「安全作業」が優先されます。この安全作業の継続を支えるのがKY活動(危険予知活動)です。
日々のKY活動の積み重ねが、「労働災害の撲滅」という大きな成果のベースとなります。
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