工程表は、建設現場の工程管理をする上でなくてはならないもので、各作業の概要や相互関係を時系列でまとめたものです。
工程表を作るには、工事内容や作業項目、工事全体の流れなどを把握する必要があるため、初心者の方には難しいと感じることがあるかもしれません。
しかし初心者の方でも、作り方のポイントを押さえてテンプレートなどを活用すれば、工程表を簡単に作ることができます。
この記事では、工程表作成の準備と手順、作成時によくある失敗と対策、見やすい工程表を作成するポイントなどを解説します。また、工程表作成の作業時間を大幅に短縮するだけでなく、さまざまな工程管理機能を持つアプリ「現場ポケット」についても紹介しています。
ぜひ最後まで読んでいただき、見やすく分かりやすい工程表作成の参考にしてください。
工程表を作る前に必要な準備
工程表をスムースに作成するには、いくつか準備をしておく必要があるため、準備段階の流れをわかりやすく解説します。
まず、当該工事で重要とされる事項を目的や目標として明確化し、次に作業項目の洗い出しと依存関係から必要となる人員や機材を把握します。
工事の目的や目標の明確化
工程表の作成は、設計図書や仕様書をベースに作られた施工計画書などを参考に、工期や工事目的物、施工方法などについて把握することから始めます。
工事によっては、工程表作成者自らが設計図書と現場状況を調査して、工事内容や施工方法を可視化することが必要です。施工条件によっては、品質や安全性の確保のために必要とされることの表記が重要になることもあります。
現場経験や実績の少ない初心者の方にとっては、プレッシャーに感じることも多いかもしれませんが、困ったときは過去の同種工事の工事書類を参考にすることです。
それでも分からないことがあれば、放置せずに他の職員の方にアドバイスを仰ぎましょう。
工事は建設会社にとって会社全体で取り組むべきものであり、質問したり助言を求めたりすることに何ら問題はないはずです。
作業項目の洗い出し
工程表を作成する準備段階では、工事の完成に必要な作業項目の洗い出しが必要になります。どんな大規模な建設工事も、さまざまな作業項目の一つひとつの積み重ねによって完成するからです。
建設工事で一つの建築物や構造物を完成させるためには、多様な工種の専門工事業者たちの連携が必要です。そのため、工程表作成者は、工事を全体工程と部分工程という階層的な視点でも把握しなければなりません。
まず全体工程として、工事を構成する各工種の流れを工期内で収まるよう設定します。それから、部分工程として、一つの工種を完成させるために必要な日程を組みます。
この日程を組むときに必要になるのが、正確な作業項目のリストアップです。この工種ごとのリストアップを繰り返すことが、作業項目の洗い出しということになります。
作業間の依存関係
作業項目の洗い出しが済んだら、次に作業間の依存関係を明確にします。建設工事の作業では、この作業が完了しないと次の作業に進めないということがほとんどです。
たとえば基礎工事で、鉄筋組みが完了していないのに型枠は設置できず、型枠無しではコンクリートの打設はできないというようなことです。
このような作業間の依存関係を調べながら、各作業にかかる日数の概数や、より効率的な作業経路はないかなどを検討します。
このような検討を積み重ねて一つの工種の大まかな必要日数を割り出し、工期内におさまるように工種ごとの工程を調整していかなければなりません。
作業に必要な人員・機材などの把握
工事の工期や目的物の内容、施工方法を明確化して、作業項目の洗い出しと依存関係が把握できたら、実際に作業を行うのに必要な人員・機材などの検討へと進みます。
建設工事の経験が積まれていくと、工事内容や工事量から必要な人員や機材が自然と掴めるようになるものです。しかし、慣れないうちは過去の工事を分析したり、同種工事から想定したりして割り出していくしかありません。
慣れるまでは大変に感じるかもしれませんが、このような努力の積み重ねが、次の工事のための布石となりスキルアップへと繋がります。
工程表の作り方の基本手順
工程表作成のための準備事項をベースに、工程表作成の基本的な手順をステップ形式で説明します。
STEP1|施工プロセスを決める
施工プロセスとは、設計図書や仕様書、特記仕様書に基づいて、工事の着手から竣工までのすべての作業を段階的に区分して整理することです。
公共的な意味合いの強い建設業では、工事の各段階で発注者サイドによる「施工プロセスチェック」が行われることが多いため、前述の作業項目の洗い出しや依存関係の把握が重要になります。
施工プロセスを段階的にまとめていくことで、工事全体の流れが見えてきます。この全体的な工程を土台として、次に行うのが各工種や各作業に必要となる期間の設定です。
STEP2|各作業の期間を決める
このステップでは、準備段階で概数であった各工種や各作業に必要な期間を、より実際的な数字で決めていきます。
適切な期間を設定するためには、もう一度施工手順を確認して、各作業に時間がどれくらいかかるかを可能な限り的確に見積もります。
そのためには過去のデータや経験値とともに、施工を行う現場状況を考慮しながら、専門的な知識や経験を持つ方に相談することが必要になることもあるでしょう。
STEP3|各作業の配分と調整
各作業の期間が算出できたら、契約工期の範囲内に収まるように、配分と調整を繰り返します。現場の立地条件や天候、資材の調達状況などを考慮して、より適切な期間をスケジューリングしていきます。
また、建設現場では想定外のことが日常的に起きるため、遅延やトラブルに備えて余裕のある期間を確保することも重要です。
各期間を設定し終えたら、全体的なスケジュールと各作業のバランスを確認し、最終的な修正を加えます。
STEP4|工程表の種類を決める
このステップでは、ここまでのデータを活用して作成する工程表の種類を決めます。よく使われる工程表としては、バーチャート工程表とガントチャート工程表があります。
バーチャート工程表は各作業の期間を棒グラフで表示し、ガントチャート工程表は、複数の作業を同時進行的に進めるときに活用されることが多い工程表です。
バーチャート工程表とガントチャート工程表の違いについてはこちらの記事をご確認ください。
この他には、作成の難易度は高まりますが、大規模な工事で使用されることが多いネットワーク工程表や工程管理曲線などがあります。
STEP5|最終確認と各担当者への周知
工程表の作成を終えたら、準備したデータと齟齬がないか最終確認します。この最終確認後、本社の管理部門や上長に工程表を提出して承認を受けてください。
提出した時点で指摘事項があれば修正し、その後に各担当者へ工程表の周知を行うのが一般的な流れです。
工程表作成時のよくある失敗と対策
工程表作成時のよくある失敗と対策について解説しますので、実際に作成する際の参考にしてください。
視認性がよくない
工程表は、工事に関係するさまざまな立場の方が見るものなので、誰が見ても理解しやすいものでなければなりません。
専門用語を多用したり、これくらいわかるだろうと省略事項を増やしたりすると視認性が低下します。視認性の低下は、工程に関する理解を限定的にさせてしまう可能性があります。
改善策としては、専門用語は可能な限り具体的に説明し、基本的には現場で働く方たちが分かりやすい表現をつかいましょう。
その他、工種や工区、進捗状況で色分けしたり、罫線の挿入や強調、文字サイズの変更をしたりして視認性を上げる工夫を心がけることも大切です。
簡単に共有できない
工程表は工事関係者全員で共有し、現場の進捗状況の把握や工程管理に関する情報の交換に役立てるものなので、簡単にリアルタイムで情報共有できることが求められます。
しかし、社内ネットワークの利用がメインのエクセルで作成した工程表だけでは、現場での対応や協力会社などとのリアルタイムの情報共有は難しいです。
工程に関するコミュニケーションがスムーズでないと作業の遅延が生じたり、不測の事態の対応が遅れたりすることがあります。
これらの課題の改善策としては、クラウドサービスをベースとした工程管理システムを導入して、スマホやタブレットを活用できるようにデジタル化を推進することが効果的です。
デジタル化が推進されると、図表や写真を貼付した情報のやり取りが可能になり、情報共有のスピード感だけでなく内容が濃くなり精度を上げることができます。また、情報がデータ化されると、現場だけでなく業務全般の効率化に大きく貢献します。
作業間の関連性がわかりにくい
工程表を工事関係者で共有していると、作業間の関連性がわかりにくくて問題が生じることがあります。これは、主にバーチャートやガントチャートなどで工程表を作成したときに起こりやすいです。
これらの工程表は、進捗状況やスケジュールを視覚的に管理するには役立ちますが、作業同士の順序や依存関係がわかりにくいからです。
この改善策としては、作業間の関連性を明確にするため、別途で関連図を作成すると把握しやすくなります。また、PDM(プレシデンスダイアグラム法)の手法を活用したり、ネットワーク工程表を用いたりすることで、作業間の関連性を明確にすることが可能です。
関連記事・工程表の基本と見やすさ
工程表を作る際の準備と基本手順、工程表作成時のよくある失敗と対策について解説してきました。ここでは、工程表の基本である見やすさとわかりやすさにフォーカスして、作成方法のポイントを説明します。
見やすいデザインにする
見やすさを意識するあまり、カラフル過ぎたり奇抜すぎたりする工程表ができ上ることがあるので注意が必要です。
例えば、工種や曜日、段階ごとに色分けするだけでなく、それぞれの区分の中まで色分けしてしまうと使用する色の数が増えて逆に見づらくなってしまいます。
あらかじめ、工程表のディテールについて社内ルールを決めておくと、担当者の違いで工程表の印象が変わってしまうというようなことを回避できます。
誰でもわかる表現をしている
工程表の作成では、誰でもわかる表現をしていることも重要です。
作成者は、工程表は工事関係者が見るものだから、専門用語を使ってもかまわないと考えがちです。しかし、実際は施主や事務担当者、資材の納入先なども見ることがあります。
そのため、専門用語や現場の中だけで使っているような言葉は、できる限り使用しないほうが無難です。もし、どうしても専門用語を使うべき箇所があるようでしたら、「注釈」を付記する配慮が必要でしょう。
作業範囲・内容がわかりやすい
工程表を作成する際は、一見しただけで自然に作業範囲や作業内容がわかるように工夫することも忘れてはいけません。
そのためには、作業範囲(工事場所・区画)、作業内容に分けて、作業の流れを記載していくことが必要です。時系列で工程表を順次眺めていくだけで、現在、どの工種がどのくらい進捗しているかを閲覧者が把握できる工程表がわかりやすい工程表です。
作業範囲や作業内容がまぜこぜになっていると、非常にわかりにくい工程表になってしまいます。
時間の単位を切り替えられる
工程表に日単位で作業内容が詳しく記載されていると、現場の作業者にとっては便利ですが、経営サイドや管理部門の担当者にとってはあまり必要のない情報といえます。
そのため、現場作業者向けの工程表とは別に、週単位や月単位で作業の流れを把握できる工程表を用意しておくことが必要です。用途に応じて時間の単位を切り替えられるように情報を整理しておきましょう。
印刷しても見やすい
作成した工程表は、プリントアウトして現場事務所の掲示板やホワイトボードに貼り付けて周知することがあります。そのため、印刷しても見やすいような構成や配置であることを意識してください。
必要事項が所定の1ページ内におさまっているか、設定した配置はプリントアウト後も視認性が高いかなどを確認しておく必要があります。
現場ポケットの紹介

建設現場の工程管理は、現場業務の効率化にとって非常に重要です。この工程管理の効率化にぜひおすすめしたいのが、現場管理に特化したアプリ、「現場ポケット」です。
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複数のテンプレートを活用して工程表作成ができるので、作成時間を大幅に短縮しながら、見やすく理解しやすい工程表の作成も簡単にできます。
また、工程表の情報共有が簡単・確実なので、電話やメールでの進捗確認を省略できます。急な工程変更が発生した場合は、掲示板への投稿や個別メッセージの送信も行える優れものです。
まとめ
工程表の作り方を初心者の方にもわかりやすいように、以下の内容で詳しく解説しました。
- ・工程表を作るために必要な準備
- ・工程表の作り方の基本手順(ステップガイド)
- ・工程表作成時のよくある失敗と対策
- ・工程表の基本と見やすさ
- ・工程表の作成と管理を効率化するアプリ「現場ポケット」の紹介
工程表の作成は、工程管理の中でも最重要な業務です。特に見やすくわかりやすい工程表が求められます。
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