「作業完了報告書」と似た書類に「作業日報」があります。
作業日報は、日々の作業内容を記録して、現場の進捗状況や問題点を把握することを目的としています。一方、作業完了報告書は作業を行った者が責任を担う、正式な作業完了の報告書です。
そのため、作業完了報告書は、より高いレベルの正確性や整合性が求められます。また、作業を請け負った側の責任者の承認が明確でなければなりません。
この記事では、作業完了報告書の概要や目的、作成方法及び作成のメリットについて解説します。
さらに、作成を効率化するテンプレートや、優れた報告書機能を持つアプリ「現場ポケット」についても説明しています。ぜひ最後までお読みいただき参考にしてください。
作業完了報告書とは
作業完了報告書は、所定の作業が完了したことを、施主や顧客、社内の管理部門などに報告するための書類です。
作業完了報告書について、他の報告書との違い、作成義務、提出の手順と期限という3つのポイントで解説します。
他の報告書との違い
作業完了報告書について理解するため、他の報告書との違いを把握しておきましょう。
・作業報告書
作業者自身が、作業内容、進捗状況、結果などを上司や関係者に報告する書類。
・業務報告書
業務日報、週次・月次報告書などがあり、担当者が業務内容を上司や顧客に報告する書類。
・工事履行報告書
契約に基づき、工事の進捗状況を一定期間ごとに発注者(監理者)に報告する書類。
・工事完了報告書
請負会社が発注者や工事関係者に必要書類とともに工事の完了を報告する書類。
作業完了報告書は、あくまで所定の作業が完了したことを報告しますが、責任の所在が明確である点では工事履行報告書や工事完了報告書と同等である点がポイントです。
作成義務はあるのか
作業完了報告書に法的な作成義務はありませんが、官公庁発注の工事では、所定の作業について作業完了報告書を義務付ける場合があります。
作業完了報告書を作成して提出することで、作業の品質や施工方法が適切であることが証明され、発注者や施主との信頼関係が醸成されます。
自社にとっても、作業完了報告書は工事の貴重な作業実績の記録であり、今後の同種工事の参考資料となるものです。
提出の手順と期限
作業完了報告書は、基本的に作業完了後に施主や元請会社に提出するのが一般的です。
提出期限に法的な規定はなく、提出先との契約や指示の内容によりますが、通常は作業完了後一週間程度で提出されることが多いです。
あらかじめ決められている期限から遅延すると、信頼関係を損ねることになるので期限は必ず守りましょう。
作業完了報告書の目的
作業完了報告書は、作業が設計図書や仕様書に基づいて行われ、期限内に完了したことを証明する目的で作成されます。
具体的には、作業状況の共有や施工品質の確保、トラブルの防止があります。それぞれについて説明します。
作業状況の共有
建設工事の現場は日々の作業により変化しますから、途中経過となる作業状況は、工事写真や図表を付加した報告書で確認するしかありません。
作業状況の情報を記録して工事関係者で共有することで作業の透明性が向上し、作業内容の理解度が増して伝達ミスを防ぐことができます。
また、複数の関係者で情報を共有すれば、さまざまな課題を早期に発見しやすくなります。
そして、どのような対策が効果的であるかをチームで協議すれば、安全管理や品質管理での改善策を短期間で見つけることができるでしょう。
例えば、安全管理におけるヒヤリハット事例を報告書で共有して全員に注意を促したり、報告書を基に品質チェックをして不具合を見つけて改善したりするということです。
施工品質の確保
作業完了報告書は、建設工事の施工品質の確保にも大きく貢献します。報告書に、施工内容、使用材料、施工状況を詳細に記録し、工事写真や図面を添付することで品質を客観的に証明できます。
配管工事を例にすると、使用した配管材や接続方法、漏れがないかなどを試験結果とともに工事写真で記録して報告書を作成することは施工品質の確保の証明となります。
同じように、電気配線工事においても、使用した配線材、接続方法、配線図を添付した工事写真を報告書として記録しておけば、施工品質の確保の証明として有効です。
トラブルの防止
作業完了報告書があれば、作業中に不測の事態が発生したとき、発生状況の経緯を確認できます。
作業完了報告書が作成されていないと、どのような作業を行っていたかが確認できずに、発注者(監理者)と請負会社の間でトラブルが起きるリスクが高まります。
トラブルが起きてしまったとき、工事写真や試験成績書を添付している作業完了報告者は、法的証拠となり得るものです。
作業完了報告書の作成方法
作業完了報告書の作成方法は、一般的に、「テンプレートを活用する」「アプリやシステムを利用する」「元請や自社様式で手書きをする」の3つです。それぞれの概要を解説します。
テンプレートを活用
ネット上には、作業完了報告書の無料のエクセルテンプレートが数多くあります。その中から、自社に合ったテンプレートをダウンロードして、多少のカスタマイズを施して活用する方が増えています。
無料テンプレートといっても、さまざまな用途別に用意されていて、すぐに使えるものが多いです。
当然のことですが、一度ダウンロードしたテンプレートは保存してまた使えるので、ゼロから作成する手間も省けます。
アプリやシステムを利用
ある程度の予算が見込める場合は、アプリやシステムを利用することをおすすめします。作業完了報告書を含む、さまざまな報告書作成機能を備えたアプリやソフトが数多く流通しています。
クラウド型のアプリやシステムを導入すれば、リアルタイムで情報共有できたり、現場にいながらモバイル端末で情報を確認・修正できたりできるものも多いです。
作業完了報告書だけでなく、業務全般の効率化を一定の費用で実現できるので、検討してみる価値は大いにあります。
元請や自社の様式で手書き
作業完了報告書の作成で最もオーソドックスなのが、元請や自社様式で手書きするやり方です。
建設業は重層下請構造であるため、元請の様式を下請がそのまま使用するケースが多いです。自社で作成した様式を使用する場合は、必要な項目を明記して、わかりやすいことが重要です。
どちらも、手書きの場合は、見やすく丁寧に記入するように心がけましょう。
作業完了報告書に必要な項目
ここでは、作業完了報告書に必要な項目について、基本事項、作業内容、特記・連絡事項の順に説明します。
作業の基本事項
作業完了報告書に記載すべき作業の基本事項は、作業者氏名と作業実施日です。
作業者氏名には、作業を行った全員の氏名を記載する場合と、代表者1名の名前を記載する場合があります。
作業実施日には、作業を開始した日と作業が完了した日を記載します。場合によっては、作業時間をプラスしたり、より詳しいタイムテーブルを記載したりすることも必要です。
作業の内容
作業の内容は、作業者が実際に行った作業内容を記載する項目です。作業完了報告書の最も重要な部分であり、ここが着実に書かれていないと作業完了報告書としての評価が得られません。
5W1Hを意識しつつ、簡潔で具体的な文章が求められます。1日で作業が終わらなかった場合は、進捗状況についても詳しく記載し、担当者が代わった場合でも問題なく対応できるような記載が必要です。
一通り書き上げたら、読み手の立場でもう一度読み返してみることを忘れないでください。
特記・連絡事項
特記事項や連絡事項は、当該作業に関して、特別な指示や注意点、連絡事項をまとめて記載するための項目です。
指示内容の急な変更や使用資材の在庫に関することなど、次の作業をスムーズに行うために必要な事項を記載します。
次の作業の内容や時間について記述する場合もありますが、一時的な作業の場合は何も書かないこともあります。
作業完了報告書を作成するメリット
作業完了報告書を作成して記録することは、作業内容の確認を容易にして、作業の透明性が高まって進捗状況は可視化されます。
その結果、生産性の向上という大きなメリットを得ることができますので、その経緯を解説します。
作業内容の確認
作業完了報告書は、作成者だけでなく、作業の請負会社の責任も明確にされる報告書です。そのため、施工方法や使用資材、作業状況などが正確に記録され、設計書や仕様書にある基準を満たしているという品質証明書なども添付されます。
このような高い正確性がある作業完了報告書で作業内容を確認することは、施工管理や作業者の作業の振り返りや改善に役立ち成長を促す効果があります。
企業的には情報資産として捉えることができて、次の同種工事の作業にあたって作業内容を確認できることは大きなメリットです。
作業の透明性
作業完了報告書は、基本的に作業の発注者や取引先、社内の管理部門に提出することを前提とした書類です。
そのため、作業場所や日時、作業担当者、詳細な作業内容、使用された材料や機器、検査結果などが正確に記載されます。特に、作業状況を撮影した工事写真とともに報告される詳細な作業内容は、作業の透明性を格段に高めます。
高い透明性が担保された作業内容を報告することで、発注者や取引先との信頼関係を高いレベルで構築することが可能です。
また、作業の透明性を高めることは、建設会社が予算と実績の比較をする上でも重要となります。予定していた粗利が確保できなかった、想定以上に労務や時間が取られたなどの要因の調査に役立つからです。
生産性の向上
作業完了報告書で作業内容を確認して改善に活かしたり、作業の透明性を高めて取引先との信頼関係を高めたりすることは、現場の生産性を向上させます。
現場で何か問題が発生したとき、過去の作業完了報告書を関係者全体で共有して対策を練ることで、コミュニケーションは円滑になり協力体制を構築しやすくなります。このような現場では、問題の早期発見が可能になり、効果的な対策も立てやすくなるでしょう。
取引先との信頼関係醸成のために透明性を確保する過程で、よりわかりやすい工事写真や図表、資料データが集められるようになり施工品質がレベルアップします。
現場全体の協力体制の構築や施工品質のレベルアップは、建設現場の生産性の向上に直結する要素です。
作業完了報告書のテンプレート
無料ダウンロードで、すぐに使える作業完了報告書のエクセルテンプレートを紹介します。自社に合った内容に変更して使用してください。
作業完了報告書の種類と重要性
作業完了報告書の種類には、簡潔的な報告書、納品書と兼用の作業完了報告書、工事代金を記入できるものなどがあります。
作業完了報告書を作成することで、取引先に作業内容や結果を正確に伝えて信頼関係を築くとともに、作業で起きた問題と改善策を記録することで今後の品質向上に役立てることが可能です。
何かトラブルが発生したときには、発生状況を確認する証拠ともなるもですから、作業完了報告者は重要な書類です。
おすすめのテンプレート3選
おすすめのテンプレートを3つ紹介します。
・簡潔的な作業完了報告書
作業完了報告書や作業報告書だけでなく、各種社内文書にも活用できます。https://www.bizocean.jp/doc/detail/548478/
・納品書兼作業完了報告書
納品書も兼用しているので、請求管理においても非常に便利です。https://www.bizocean.jp/doc/detail/104614/
・工事代金を記入できる作業完了報告書
工事代金記入枠だけでなくお客様と作業責任者の捺印枠もあります。https://www.hinagata-free.com/business/business-g53.htm
現場ポケットの紹介

現場管理に必要な機能に特化しているアプリ「現場ポケット」の報告書機能・日報管理機能は、建設業の作業完了報告書の作成にも有効です。
現場ポケットは、初期費用無料でランニングコストは基本11,880円(税込)/月、オプション費用は一切かかりません。アカウント数・データ容量、現場登録数が無制限で利用できます。
現場ポケットの報告書機能は、報告書テンプレートで作業日報や工事報告書が簡単に作成できます。写真付きの報告書も、アルバムからはめ込んでいくだけで作成可能です。
よく使う文章を定型文として登録することもできるので、さらに作業時間の短縮が可能です。
日報機能では、作業開始/終了時間をトーク画面から簡単に入力できて、入力忘れやミスの修正や追加、代理入力もできます。現場別・職人別の作業人工のファイル出力が可能で、現場の勤怠管理の「見える化」ができます。
まとめ
建設業の作業完了報告書について、以下の内容で解説しました。
- ・作業完了報告書の概要と目的
- ・作業完了報告書の作成方法と必要項目
- ・作業完了報告書を作成するメリット
- ・作業完了報告書のテンプレートの紹介
- ・優れた報告書機能を持つアプリ「現場ポケット」の紹介
作業完了報告書は、作業内容の透明性を向上させるので、発注者や取引先との信頼関係の醸成に役立ちます。また、作業で起きた問題と改善策を記録することで、今後の作業の生産性の向上に役立てることも可能です。
このような作業完了報告書の作成は、建設業にとって日常的な業務であり効率化が求められます。そういうとき、現場管理に特化したアプリ「現場ポケット」は大いに貢献するはずですから、関心がある方はぜひ公式サイトをチェックしてみてください。