建設業は、日本の経済を支える重要な産業ですが、常に資金繰りの課題に直面しています。特に中小建設会社にとっては、資金調達は事業の成長を左右する重要な要素です。この記事では、建設業の資金繰りを助ける補助金・助成金について、2025年最新の情報に基づいて解説します。
建設業における補助金・助成金の概要
国や地方自治体は、建設業の振興や発展を目的とした様々な補助金・助成金制度を設けています。これらの制度は、資金調達を支援するだけでなく、生産性向上や労働環境改善など、企業の経営基盤強化にも役立ちます。

補助金と助成金の違い
補助金と助成金はどちらも返済不要な資金援助ですが、その目的や支給主体が異なります。以下、それぞれの特徴やメリットになります。
補助金
-
- 1. 企業の成長や地域振興を目的としている
-
- 2. 数百万から数億円規模のものが多く、支給額が大きい
-
- 3. 国や自治体の政策目的に合致した提案に限り受給
助成金
-
- 1. 雇用維持や職場環境の支援・改善を目的としている
-
- 2. 給付条件を満たせば原則受給が可能
-
- 3. 競争的な審査がなく申請がしやすい
建設業に特化した補助金・助成金の種類
建設業には、業種特有の補助金・助成金が用意されています。例えば、人材確保等支援助成金は、建設技能者の確保・育成を支援するもので、技能検定の合格者に対する奨励金などが支給されます。
また、地域によっては独自の補助金・助成金制度を設けている場合もありますので、事業所所在地の自治体の情報も確認しておきましょう。
利用可能な補助金・助成金の一覧は、各省庁のウェブサイトや、専用のポータルサイトなどで確認できます。これらのサイトでは、補助金・助成金の概要、申請資格、申請方法などが詳しく説明されています。
参考:厚生労働省『建設事業主等に対する助成金』
建設業で利用できるおすすめの補助金・助成金
建設業で利用できるおすすめの補助金・助成金を具体的に紹介します。
① IT導入補助金
中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する際、その費用の一部を補助する制度です。業務効率化やDX推進を目的としたソフトウェア、クラウドサービス、ハードウェアなどが対象となります。
対象者(製造業の場合)
-
- ◯中小企業・小規模事業者等
-
- ◯資本金3億円以下、または常勤従業員300人以下
支給額
-
- ◯通常枠:補助率1/2、補助上限額450万円
-
- ◯インボイス枠:補助率2/3〜4/5、補助上限額350万円
-
- ◯セキュリティ対策推進枠:補助率1/2、補助上限額100万円
-
- ◯複数社連携IT導入枠:補助率1/2〜4/5、補助上限額3,000万円
参考:サービス等生産性向上IT導入支援事業『IT導入補助金2025』
② ものづくり補助金
中小企業等が生産性向上に資する革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金です。
対象者
-
- ◯中小企業・小規模事業者等
-
- ◯中小企業基本法第2条に定める中小企業者
支給額
-
- ◯一般型:補助上限額1,000万円 (補助率:1/2または2/3)
-
- ◯グローバル展開型:補助上限額4,000万円 (補助率:1/2または2/3)
参考:全国中小企業団体中央会『ものづくり補助金総合サイト』
③ 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者が販路開拓や生産性向上を目的とした取り組みを行う際の経費の一部を補助する制度です。広告宣伝、ECサイト構築、店舗改装、業務効率化のための設備投資などが対象となります。
対象者
-
- ◯小規模事業者
-
- ◯商工会議所または商工会の管轄区域内で事業を営んでいる事業者
-
- ◯常時使用する従業員数が20人以下
支給額
-
- ◯通常枠:補助上限額50万円 (補助率:2/3)
参考:全国商工会連合会『小規模事業者持続化補助金』
④ 事業再構築補助金
新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編、またはこれらの取り組みを通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する補助金です。
対象者
-
- ◯中小企業等
-
- ◯中小企業基本法第2条第1項に規定する中小企業者
支給額
-
- ◯補助上限額:500万円〜1.5億円(事業類型や従業員数により異なる)
-
- ◯補助率:
【成長分野進出枠】中小企業3/4 中堅企業1/3
【コロナ回復加速化枠】中小企業3/4 中堅企業2/3
- ◯補助率:
参考:株式会社パソナ『事業再構築補助金』
⑤ トライアル雇用助成金
企業がハローワーク等を通して紹介された求職者を試行雇用し、常用雇用に移行した場合に助成金が支給される制度です。
対象者
-
- ◯企業
-
- ◯雇用保険適用事業主
支給額
-
- ◯補助上限額:
【一般】1人あたり最大4万円/月(最長3ヶ月)、特定求職者の場合は最大5万円/月(最長3ヶ月)
【精神障害者】最初の3ヶ月8万円/月、4ヶ月目以降4万円/月(最長6ヶ月、計最大36万円)
- ◯補助上限額:
参考:厚生労働省『建設事業主等に対する助成金』
⑥ 業務改善助成金
事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度です。
対象者
-
- ◯中小企業・小規模事業者であること
-
- ◯事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
-
- ◯解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
支給額
-
- ◯ 最大600万円 (補助率: 賃金引上げ額により異なる 1/2〜4/5)
参考:厚生労働省『業務改善助成金』
⑦ 人材確保等支援助成金
魅力ある職場づくりのために労働環境の向上等を図る事業主や事業協同組合等に対して助成するものであり、人材の確保・定着を目的としています。
対象者
-
- ◯事業主、事業協同組合等
-
- ◯法人及び個人事業主
支給額
-
- ◯コースによって異なる
参考:厚生労働省『人材確保等支援助成金のご案内』
これらの情報は2025年5月13日現在のものです。これらの制度は変更される可能性がありますので、最新の情報は各省庁のウェブサイトなどでご確認ください。
補助金・助成金を活用するメリット
補助金・助成金の制度を活用することで、以下のようなメリットが得られます。
資金調達の効率化
補助金・助成金は返済不要な資金であるため、資金繰りの負担を軽減し、財務基盤の強化に繋がります。また、自己資金が少なくても設備投資や事業拡大が可能になるため、企業の成長を促進する効果も期待できます。
事業の成長を促進する効果
補助金・助成金を活用することで、設備投資や人材育成、販路開拓など、様々な取り組みが可能になります。これにより、生産性向上や競争力強化、新たなビジネスチャンスの創出といった効果が期待できます。
補助金・助成金の申請手続きと流れ

補助金・助成金の申請手続きは、一般的に以下の流れで行われます。
申請書のダウンロードと必要書類
まずは、各制度のウェブサイトから申請書をダウンロードし、必要事項を記入します。申請に必要な書類は制度によって異なりますが、事業計画書や決算書、登記簿謄本などが求められることが多いです。
申請書のダウンロード
-
- ◯多くの補助金・助成金は、各省庁や地方自治体のウェブサイトから申請書をダウンロードできます。
-
- ◯ウェブサイト上で必要事項を入力することで、申請書を作成できる場合もあります。
必要書類の例
-
- ◯申請書(記入、押印済みのもの)
-
- ◯事業計画書
-
- ◯収支計画書
-
- ◯登記事項証明書
-
- ◯印鑑証明書
-
- ◯決算書等の財務諸表
-
- ◯従業員数を確認できる書類
-
- ◯その他、補助金・助成金の種類によって必要な書類
申請から受給までの流れ
必要書類が揃ったら、申請窓口に提出します。申請後、審査が行われ、採択されると交付決定通知が届きます。その後、補助事業を実施し、実績報告書を提出することで、補助金・助成金が交付されます。
STEP 1:情報収集・確認
-
- ◯自分に合った補助金・助成金制度を探す
-
- ◯公募要領、要件、申請期間などを確認
STEP 2:申請書類の準備
-
- ◯申請に必要な書類を集める
-
- ◯事業計画書、収支計画書などを作成
STEP 3:申請書の提出
-
- ◯申請窓口へ申請書を提出(郵送、オンラインなど)
STEP 4:審査
-
- ◯提出書類に基づいて審査が行われる
-
- ◯面接やヒアリングがある場合もあります
STEP 5:採択・交付決定の通知
-
- ◯審査結果が通知される
STEP 6:事業の実施
-
- ◯交付決定に基づき、事業計画を実行
STEP 7:実績報告
-
- ◯事業完了後、実績報告書を提出
STEP 8:補助金・助成金の交付
-
- ◯実績報告に基づき、補助金・助成金が交付される
補助金・助成金を利用する際の注意点
補助金・助成金を利用する際には、以下の点に注意しましょう。
申請時のチェックリスト
申請前に、申請資格や必要書類、申請期限などをしっかりと確認しましょう。また、事業計画書は審査の重要なポイントとなるため、実現可能性が高く、効果的な内容にすることが大切です。
よくあるトラブルとその対策
補助金・助成金の申請でよくあるトラブルとしては、申請書類の不備や、事業計画の実現性の低さなどが挙げられます。これらのトラブルを避けるためには、申請前に専門家へ相談するなど、事前の準備を徹底することが重要です。
補助金申請代行の利用も方法の一つ
補助金・助成金の申請は、書類作成や手続きが煩雑で、専門知識も必要となるため、申請代行サービスを利用するのも一つの方法です。
申請代行の主な依頼先
申請代行は、税理士、行政書士、中小企業診断士、社会保険労務士など、専門家へ依頼できます。これらの専門家は、申請書類の作成支援や手続き代行だけでなく、事業計画策定のアドバイスなども行ってくれます。
代行サービスの対応範囲
代行サービスの対応範囲は業者によって異なりますが、一般的には申請書類の作成・提出代行が中心です。業者によっては、事業計画策定のサポートや、審査対応、採択後の手続きなども行ってくれます。
まとめ
建設業において資金調達は常に重要な課題であり、補助金・助成金はその有効な手段です。この記事では、IT導入補助金やものづくり補助金など、中小建設会社でも活用しやすい制度を紹介しました。これらは返済不要で、生産性向上や人材確保など、事業の成長に直結するメリットがあります。
ただし、制度ごとに要件や申請手続きが異なるため、事前の情報収集と準備が成功の鍵となります。
また、補助金で導入したITツールの効果を最大化するには、日々の業務改善も欠かせません。そこで現場の情報共有や進捗管理をスムーズにするツール「現場ポケット」の活用をおすすめします。「現場ポケット」は、現場監督や職人とのコミュニケーションを一元化し、写真・図面・資料などの共有や工程管理をスマホひとつで簡単に行えるため、補助金で導入したITツールの効果を最大限に引き出すことにもつながります。
資金活用と業務効率化を両立させることで、建設現場の生産性は大きく向上します。この機会に、補助金活用とツール導入の両面で、現場力を強化してみてはいかがでしょうか。