安全書類作成ガイド|全建統一様式の書き方と記入例

2025-06-29

安全書類作成ガイド|全建統一様式の書き方と記入例

安全書類を作成する目的は、建設現場の安全管理体制や作業内容、作業員の状況を把握して、事故を未然に防ぐことです。また、不測の事態が発生したときに、迅速に適切な対応をするための準備でもあります。 

この安全書類の作成は、現場管理者にとって重要な業務の一つであり、建設現場の円滑な運営に欠かせません。 

この記事では、まず、安全書類の概要や種類、基本情報について解説します。次に、全建統一様式の導入メリット、安全書類の具体的な記入方法や効率的な作成方法などについても説明しますので、ぜひ参考にしてください。

安全書類とは?

安全書類とは、建設現場の安全管理の基礎となる書類の総称です。

建設現場では、ちょっとした気の緩みが重大な労働災害に繋がる可能性があります。そのため、車両系建設機械、移動式クレーン、電気工具、有機溶剤・化学物質、火気など、作業に必要で危険性を伴う機材について事前に把握しておく必要があるのです。 

また、工事の規模にもよりますが、建設現場はさまざまな専門工事を担う協力会社から多くの作業者が入場します。そのすべての作業者について、住所や緊急連絡先から、血液型、資格、社会保険関係まで詳細を把握して、不測の事態に備えなければなりません。 

近年では、現場で働く作業者を守るため、現場に作業者を送りだす会社についても各種保険や公的年金などの加入の有無が厳格にチェックされるようになっています。 

このような内容を速やかに確認できるように、関連書類を取りまとめたものが建設現場の安全書類です。

安全書類の種類と基本情報

建設現場の安全管理に欠かすことができない安全書類は、施工体制台帳関連、労務安全関連、その他の安全書類の3つに分けることができます。 

安全書類は20種類以上あるとされますが、ここでは一般的に使用されることが多い書類について解説します。施工体制台帳関連で6種類、労務安全管理8種類、その他は3種類です。

施工体制台帳関連

建設業法で作成が義務づけられている施工体制台帳は、建設工事で元請会社が作成する台帳です。工事に関わるすべての下請会社、担当する工事の内容などを記載した書類をまとめた台帳です。

体制台帳関連の安全書類は6種類あります。

施工体制台帳作成通知書

元請会社は、下請会社と契約をする場合、一次下請会社に対して、当該工事が施工体制台帳を作成する工事であることを書面で通知する義務があります。このときに用いるのが、施工体制台帳作成通知書です。 

施工体制台帳の作成と通知が義務づけられているのは、それによって、元請会社が建設工事全体の施工体制を適正に把握・管理するためです。

一次下請が二次下請(三次以降も同様)と契約を締結する場合も同様の通知が必要になります。

施工体制台帳

施工体制台帳の作成は、施工管理上のトラブル発生、不適格業者の参入、安易な重層下請による生産性低下を防止するのが目的です。

施工体制台帳は、公共工事では金額に関わらず下請契約を締結した場合に作成義務が生じます。民間工事では下請契約の総額が5,000万円(建築一式工事では8,000万円)以上である場合に作成することが義務づけられています。 

国土交通省では、施工体制台帳のテンプレートを公式サイトで公開しています。作成する際は、このエクセルファイルをダウンロードして参照してください。 

参照
国土交通省|施工体制台帳、施工体系図などhttps://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000191.html

下請負業者編成表

下請負業者編成表とは、一次下請会社が作成して元請会社に提出します。各下請会社の会社名、安全衛生責任者、主任技術者、専門技術者、担当工事内容、工期などを記載します。

再下請通知書(変更届)

一次下請会社は、二次下請以降の会社と契約を締結した場合、元請会社に再下請負通知書(変更届)を提出しなければなりません。元請会社が、工事にかかわるすべての会社を適正に管理できるようにするためです。

施工体系図

施工体系図は、建設工事にかかわる会社の階層的な関係を、視覚的にわかりやすいツリー図にして表記したものです。施工体系図により、すべての工事関係者が施工体制を把握できるとともに、役割分担や責任が明確化されます。

作業員名簿

作業員名簿は建設業法で作成が義務づけられていて、現場に入場する前に作成し、工事期間中は現場に備えておく必要があります。元請会社は、現場入場者とその情報を把握し、安全衛生管理に役立てます。 

作業員名簿には、作業者の氏名、年齢、性別、住所、職種、雇用形態、加入保険、緊急連絡先などが含まれているため個人情報保護書類です。

労務安全関連

労務安全関連の書類は、作業者の安全教育の実施状況や機械や設備の使用状況などに関する情報を記録・管理するためのものです。現場の事故や労働災害の防止、職場環境の改善、法令遵守の確認などに用いられる書類です。 

労務安全関連として、8種類の安全書類について説明します。

工事安全衛生計画書

工事安全衛生計画書は、工事安全衛生方針、工事安全衛生目標などが記載され、建設現場の労働災害防止のために作成します。原則として、下請会社が作成して、元請会社に提出されます。

新規入場時等教育実施報告書

新規入場時等教育実施報告書は、現場に新規で入場する作業者に向けて行われる安全教育の記録です。教育を行った日時、場所、参加者名、教育内容などが記載されます。

安全ミーティング報告書

安全ミーティング報告書は、工事期間中に現場内で定期的に行われる安全ミーティングの内容を記録した書類です。ミーティングで取り上げて話し合われた作業について、作業実施日、作業施工場所、作業内容、作業手順、作業者名などが記載されます。 

現場の安全意識の向上と安全にかかわる情報の共有が目的です。

持込機械等(移動式クレーン/車両系建設機械など)使用届

この使用届は、現場に持ち込まれる大型機械の使用に関する情報を記録するもので、機械の種類、型式、作業能力、使用期間、点検状況などが記載されます。

持込機械等(電気工具/電気溶接機 等)使用届

電気工具や電気溶接機など小型機械の使用に関する使用届には、工具の名称、型番、使用数量、使用期間、点検頻度などが記載されます。 

持込機械等の使用届は、労働安全衛生法に基づき行われ、機械や機器の安全な管理のために必要です。

工事・通勤用車両届

工事・通勤用車両届は、建設現場で使用される車両や作業者の通勤用車両に関する届出です。車両及び運転者の情報、保険加入の有無などが記載されます。現場周辺の安全や駐車スペースの適切な運用のために必要です。

有機溶剤・特定化学物質等持込使用届

健康被害の危険がある有機溶剤や特定化学物質の使用に関する届出で、使用物質名、使用数量、使用する目的、保管の方法や安全管理などが記載されます。使用する作業者の健康や周辺環境保護のために必須の書類です。

火気使用願

溶接作業や切断作業など、火気を使用する場合の届出書類です。作業内容や手順、使用場所、使用日時、使用する火気の種類、安全管理について記載します。周辺への安全配慮や火災防止のために必要な届出で、下請会社が作成して元請会社に提出し承認を得る必要があります。

その他の安全書類

その他の安全書類として、元請会社より提出が求められる書類を3種類紹介します。

新規入場者調査票

新規入場者調査票には、作業員名簿には記載項目のない内容を、補足的に記入することが多いです。作業者と働いている会社との雇用関係、当日の健康状態のチェック、現場ルールの履行にかかわる誓約書に自筆でサインするなどの内容です。

作業間連絡調整書

作業間連絡調整書は、混在作業による労働災害防止のため、作業者が現場の危険箇所を把握するための安全書類です。建設現場では、日々現場が変化するため、当日又は翌日の作業の注意事項を周知するため全体朝礼後や昼礼で配布されます。

外国人建設就労者現場入場届

外国人建設就労者現場入場届とは、建設現場で働く外国人就労者を管理するための安全書類です。この書類は、外国人建設就労者が対象者であり、定住者や現在技能実習生の外国人の方は提出する必要はありません。

全建統一様式の導入メリット

全建統一様式とは、「一般社団法人全国建設業協会」が定めた建設業における安全書類の様式です。建設業での安全書類作成を効率化し、信頼性の高い書類作成に大きく貢献しており、全国で多くの建設会社が利用しています。

全建統一様式は、各地域の建設業界で会員向けに提供されている場合があるので、チェックしてみてください。 

ここでは、全建統一様式の導入メリットについて解説します。

統一規格で安全書類が作成できる

全建統一様式は全国的に広く活用されているため、どの現場でも同じ基準で安全書類を作成でき、元請会社や協力会社など関係者間での認識のズレを防ぐことができます。また、書類の作成担当者が変わっても、同じ内容で作業できるため引継ぎもスムーズです。

汎用的な規格で書類作成できるので、確認作業が効率化され、事務処理の負担を軽減できます。

法律に準拠していて信頼性が高い

全建統一様式では法令の変更に伴う様式の改訂や、問い合わせの多い項目の見直しや補訂が定期的に行われているため、法令や現場に準拠した信頼性の高いものになっています。

独自様式では、法改正への対応が遅れたり漏れたりするリスクが高いですが、全建統一様式では安心して使用することが可能です。

安全書類の具体的な記入方法

安全書類には、さまざまな種類があり、各々の書類で項目や内容は異なります。しかし、全体に共通する記入方法のポイントはあり、それを覚えておくことで作成段階の効率や正確性に差がでてくることがあります。

安全書類の具体的な記入方法のポイントを解説しますので参考にしてください。

事前に必要な情報を準備する

安全書類の作成にあたっては、事前に必要な情報をリスト化して準備しておくと効率的です。

作業者の名前や役職・立場、担当する作業、使用する機械や道具、作業場所などを整理しておきましょう。その他、作業内容ごとのリスクの度合い、安全管理の内容、緊急時の体制なども把握しておくことが大切です。 

実際に記載する際は、わかりやすさを第一として、工事関係者全員が理解できる内容にしなければなりません。

記入は正確性、簡潔性、整合性がポイント

安全書類の記入では、正確性、簡潔性、整合性を意識することも必要です。これらをおろそかにすると、提出後に修正事項の指摘があったり、不測の事態が起きたときの対応に不備が生じたりする恐れがあります。

例えば、資格が必要な作業に資格のない作業者を担当させる、具体的であることに集中するあまり冗長な文章になる、火気の使用届を提出していないのにガス溶接の必要性が生じるなどの不備です。

安全書類を効率的に作成するには?

工事の規模にもよりますが、安全書類の作成には手間と時間がかかります。安全書類を効率的に作成するコツについて説明します。

全建統一様式をテンプレートにする

安全書類は全建統一様式を活用して、テンプレート化することで毎回ゼロからの作成手間を軽減し、特に同種工事での作成時間を大幅に短縮できます。 

また、工事関係者との必要な情報の共有に努め、必要項目に記載すべき内容を事前に確認することを徹底しておけば、後になってからの修正を減らすことが可能です。

ユーザー登録やショートカットキーの活用

安全書類の作成過程で頻出する名前や用語は、使用しているパソコンのユーザー辞書に登録しておくと、全文字入力する手間が省けると同時に誤入力のリスクを減らすことができます。 

パソコンのショートカットキーを活用することでも、安全書類の作業効率をアップさせることができます。ショートカットキーとは、特定のキーを組み合わせることで操作手順を簡潔にできるものです。 

ショートカットキーを多用することでメニュー表示や機能選択が簡略化でき、作業効率は間違いなく上がります。

現場管理アプリ導入のメリット

現場管理アプリを安全書類作成に活用することには、さまざまなメリットがあります。以下に、その内容をまとめました。 

  • ・ヒューマンエラーの防止|自動チェックで記入漏れや記載ミスを大幅削減
  • ・データとして蓄積・保管|データの再利用が容易で保管スペースの削減もできる
  • ・リアルタイムでの情報共有|クラウドサービス活用で情報のリアルタイムの共有が可能 

最近の現場管理アプリは操作が簡単で、作成から提出、保管までできるものが増えています。

安全書類の管理と保管

建設業法第40条の3により、安全書類は保管が義務づけられています。原則5年間保存しますが、施工体系図など一部は10年間保存することが規定されています。 

工事期間中は現場事務所など、いつでも確認できる場所に保管することが必要です。安全書類の保管義務を怠ると罰則が科せられることがあります。 

安全書類をデジタル化すれば、紙での保存に比べて紛失リスクは格段に低減し、竣工後の必要書類の検索も非常に楽です。また、ペーパーレス化により、保管のコスト削減や保管場所の省スペースも可能です。

まとめ

安全書類の記入は、建設現場の安全管理に欠かせない、現場の施工管理における重要な業務の一つです。安全書類の施工体制台帳関連と労務安全関連の書類の内容を把握し、作成・管理することが求められます。

また、安全書類作成には多大な手間と時間がかかり、効率化や省力化が求められる業務でもあります。 

この安全書類作成を効率化す方法としては、全国的に活用されている全建統一様式を導入し、現場管理アプリを活用することが非常に有効な手段です。 

安全書類の作成と管理には、現場管理に特化したアプリ、「現場ポケット」がおすすめです。現場ポケットは、すでに全国で35,465人以上の利用者がいるアプリで、サポート体制も充実しています。 

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