配筋検査の写真は、建設現場において鉄筋の配置状況を記録する重要な写真です。この写真により、鉄筋の配置が設計図書通りに正確に行われているかを確認します。
建築物や構造物の配筋状況は、施工が完了すると確認が難しいため、適正な品質管理や発注者への報告は配筋検査の写真という工事写真で行われるのが現状です。
この記事では、配筋検査の概要と写真が必要な理由や写真撮影に求められる要件、写真撮影の流れやコツなどについて解説します。また、工事写真管理を格段に効率化するアプリ、現場ポケットについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
配筋検査とは?
配筋とは鉄筋コンクリート構造物において鉄筋を配置することで、鉄筋の配置によりコンクリートの強度は増し建物の耐久性を高めることができます。
この配筋の検査は、工事の請負会社や検査機関によって、コンクリートを型枠に流し込む前に行われます。基礎、柱、梁などの鉄筋が設計図書通りに正しく配置されているかをチェックする検査です。
このチェックは、構造計算をして作成された「構造図」を基に実施され、指摘事項があった場合は速やかに修正しないと次の工程に進むことができません。
現在では高層階の建物だけでなく、木造建築でも基礎は鉄筋コンクリートを使用するのが主流となっており、建設業における配筋検査の重要性は高まっています。
なぜ配筋検査で写真撮影が必要なのか?
配筋検査の状況を写真撮影で記録することで、鉄筋の配置状況や品質に問題がないことを証明できます。この写真撮影では、所定の要件をすべて満たしていることが重要です。
配筋は工事の進捗とともに、配筋箇所を目視で確認できなくなり、正確性を証明することが難しくなります。そのため、配筋検査で行われた配置状況のチェックを写真で記録しておく必要があるのです。
また、検査とは別に段階的に配筋写真を記録しておくことも、施工の品質管理上重要になります。
配筋検査の写真は、竣工書類の一部として工事完成後の品質確認に利用されるとともに、工事目的物の供用後はメンテナンスなどの参考資料となります。
配筋検査の写真撮影に求められる要件
配筋検査の写真撮影に求められる要件とは、施工状況が正確に記録されていると同時に、設計図書にある品質の水準を満たしていると証明できることです。撮影業務という切り口から、要件を満たすためのプロセスを説明します。
撮影目的
配筋検査の写真撮影の目的は、コンクリート打設後に確認できなくなる鉄筋の施工状況を記録し、竣工後においても施工状況を第三者的な視点で検証できるようにするためです。
そのため、写真と設計図書を比較・照合し、所定の項目ごとに実測数値と設計数値との適合性をチェックします。
撮影対象
配筋検査の写真撮影の撮影対象となるポイントの概要は以下の通りです。
- ・鉄筋の配置|鉄筋の位置、本数、間隔、取り付け方法など
- ・鉄筋の端部|鉄筋の端部の処理が設計図書と適合しているか
- ・鉄筋の接続|鉄筋同士の接続具合を確認
その他、鉄筋周りのコンクリート構造物や関連する構造物なども、品質に影響するため撮影対象となります。
撮影場所と頻度
配筋検査の撮影場所と頻度は、設計図書や仕様書を参考に検討します。
一般的な撮影場所は基礎の各箇所において、鉄筋の配置、本数、間隔、定着長さなどが、それぞれ適切に計測できる位置です。
撮影頻度は、配筋工事の完了後に1回行うことが多いですが、大規模工事や複雑な配筋では、中間検査や段階検査など複数回行うこともあります。
撮影計画書の作成
配筋検査の写真撮影に求められる要件を満たすため、有効な手段の一つとなるのが撮影計画書の作成です。適切な撮影の時機や位置、方法などをまとめた計画書です。
撮影計画書は、5W1Hを意識して作成すると閲覧者が理解しやすいだけでなく、工事黒板の情報を記載するときや後で報告書を作成する際に引用できるので効率的になります。
計画書を作成するときは、以下のような内容で考えると整理しやすいです。
- ・WHO(誰が)|請負業者、検査機関担当員、立会者など
- ・WHEN(いつ)|撮影日時、時間、工程との関連性など
- ・WHERE(どこで)|撮影場所、撮影箇所など
- ・WHAT(何を)|工事名、現場名、工種など
- ・WHY(なぜ)|施工の目的、要求されている基準(規格・寸法)など
- ・HOW(どのように)|施工方法や施工状況など
使用するカメラは、仕様書などで規定されている機能を有していることが求められます。
施工管理アプリを活用すればスマホやタブレットでも撮影できますし、「電子小黒板」機能付きであれば撮影の手間を大幅に省力化することが可能です。
配筋検査の写真撮影の流れ
配筋検査の写真撮影では、配筋全体と重要箇所の撮影が必要です。また、撮影時の工事黒板の効果的な活用、工事台帳のわかりやすい整理も大切です。
以上の要点について、配筋検査の写真撮影の流れとともに解説します。
配筋全体の撮影
配筋検査では、まず広角写真で配筋全体を捉え記録します。
設計書通りに、鉄筋の本数が使用され配置されているか、鉄筋と型枠の間隔はどうかなどを確認します。鉄筋の交差部分は適切に結合されているか、鉄筋に変形はないかなども確認ポイントです。
その他には、防水・防湿シートの破れやシワ、ホールダウン金物やアンカーボルトについても正しい位置に設置されているかもチェックします。
重要箇所の撮影
配筋全体の状況確認の次に、重要箇所を至近距離で確認し記録します。重要箇所とは、鉄筋のかぶり厚さ、継手、および交差部です。
かぶり厚さとは、コンクリートの表面から鉄筋表面までの距離を指します。この距離が不足すると鉄筋の錆びやひび割れが発生しやすく耐久性に問題が生じます。
継手は鉄筋を繋ぐ部分です。強度を確保するために、設計図書で定められた長さや方法で継手が行われているか確認します。
交差部は鉄筋同士が交差する部分で、交差部の強度が確保されている施工であるかのチェックが必要です。
これらの箇所は広角では確認しにくい部分であり、至近距離で確認し撮影することで、より詳細に把握できます。
至近距離の撮影では設計数値との照合が特に重要なので、基礎詳細図・基礎伏図・平面詳細図・立面図などの準備は必須です。
工事黒板の活用
配筋検査の写真撮影を含め、建設工事では工事黒板の活用が欠かせません。工事黒板を効果的に活用できれば、工事写真の情報伝達性は高まり、施工の効率化や記録の正確性向上に繋がります。
工事黒板があれば、写真だけでは伝えきれない工事情報を補足することができます。また、写真に撮影された状況と黒板に記載された情報をセットで記録することで、閲覧者は工事内容を正確に迅速に把握することが可能です。
工事黒板は、撮影対象の邪魔にならない位置に設置し、後日写真で確認しやすいよう視認性を意識した表記が必要になります。
最近では電子黒板アプリを導入して、情報をデジタルで記録する建設会社が増えています。
工事写真台帳にして整理
配筋検査を撮影した工事写真を工事写真台帳にして整理すれば、設計図書通りに施工されたことや適正な品質管理を行ったことの証明として確認しやすくなります。
配筋検査写真を工事写真台帳として整理する手順は以下の通りです。
① 撮影場所や施工箇所がわかるように撮影位置図を作成する
② 施工の進捗状況がわかるように時系列にそって並べる
③ まず全体状況の写真を貼り、次に対応する重要箇所の写真を貼る
写真撮影位置図を作成して、撮影場所や施工箇所を明確にすることは、写真整理を効率化するとともに閲覧者の確認の迅速化にも繋がります。
効果的な写真撮影のコツ
配筋検査の写真撮影では、鉄筋の位置や形状がわかるように適切な角度や距離で撮影することが重要です。また、工事黒板などで設計値と実測値の誤差が許容範囲であることが確認できることも求められます。
効果的な写真撮影のコツを3つのポイントで説明します。
配筋交差部の撮影
配筋では、コンクリートの強度を向上させ、荷重を分散させるために配筋交差の状態にすることが多いです。配筋交差とは、縦筋と横筋を網目状に組み合わせたり、千鳥配筋のように交互に斜めに配置した鉄筋を上下や左右に交差させたりすることです。
この交差部分の鉄筋の結束基準は、構造物の種類や用途、仕様などにより異なります。
一般的に、コンクリート打設時に鉄筋が移動しないように固定すること、結束線は鉄線または亜鉛メッキ鉄線など錆びにくい材質を選ぶこと、太さは鉄筋径の1/3程度あることなどが基準とされています。
これらの基準が満たされていることを確認できる写真を撮影し記録することが必要です。
広角と至近距離の撮影
配筋検査写真では、全体の状況を撮影するときは広角で、重要箇所の細部の撮影は至近距離の設定で撮影します。
工事写真における広角撮影のコツは、水平・垂直ラインを真っすぐ保つこと、特に垂直ラインの歪みには注意してください。広角レンズは被写界深度(ピントがあって見える範囲)が深く、全体にピントが合うように絞りを開けることも可能です。
至近距離撮影では、適切なアングルと距離設定、明るさの調整、被写界深度の把握が重要になります。
いずれにしろ撮影時には常に撮影写真の確認が必要で、計画通りの写真撮影ができるまで取り直すことが必要です。
工事黒板に必要な情報を記載する
配筋検査写真を含む工事写真では、工事黒板に必要な情報を記載して、写真による記録を補足することが重要です。
工事黒板に記載される工事情報には、一般的に、工事名、施工箇所、撮影日時、撮影者、立会者、施工状況、検査項目、設計・実測値などがあります。
手持ち式の黒板が撮影時にブレる場合は、黒板を固定したり三脚を使ったりすることをおすすめします。
工事写真アプリを活用すれば、現場ごとに黒板を準備する手間が省けて、撮影した写真データの管理も非常に楽です。
写真撮影時のよくある失敗
配筋検査写真を撮影する際に、よくある失敗と対策について解説します。
基本的な調整不足
写真撮影時によくある失敗で、一番多いのが基本的な調整不足です。撮影対象が小さすぎる大きすぎる、暗すぎる明るすぎるなどです。
小さすぎて配筋の細部が確認できないときは、ズームやフラッシュを使ったり、露出を調整したりしてください。また、事前にカメラの被写界深度を把握してピンボケを防止することも必要です。
黒板情報が不十分
工事黒板の情報は、配筋検査の記録を確認するときの大切な情報です。きれいな文字や数字で書く必要はありませんが、読みやすく丁寧に書かれていることは必要になります。
黒板の情報に漏れがあったり不十分であったりするのも問題です。黒板に記載する内容は事前に決めておき、正確に記載しましょう。
黒板の情報は、写真に撮影しても見やすいことを前提にしなければなりません。十分な明るさで撮影し、黒板の文字もきれいに映るように配慮してください。
写真のサイズや形式のミス
工事写真におけるサイズや形式のミスも多いです。
例えば、国土交通省の「デジタル写真管理情報基準」では、黒板の文字が判読できる画素数(100万画素程度、1280×960ピクセル程度)が推奨されています。
電子納品の場合、ファイルサイズに制限がある場合があります。例えば、NEXCO総研では、500KB以上のデータは電子納品不可となっています。
国土交通省の電子納品時の記録ファイル形式は、JPEG、TIFF、SVGなどに規定されています。
以上のように、発注者によっては工事写真のサイズや形式に規定があることも多いため、仕様書などでしっかりと確認しておく必要があります。
現場写真管理のトレンド
建設業の現場写真管理のトレンドは、デジタル化による生産性の向上です。
工事写真アプリやクラウドサービスの導入、独自のフォトマネジメントシステムの構築などによるデジタル化によって、写真の一元管理や自動アルバム作成、リアルタイムの情報共有などが可能となります。
建設業の生産性の向上は従前からの課題であり、最近の働き方改革の法制化と相まって、建設DXへのニーズが高まっていることが背景となっています。
建設現場の施工管理業務において、写真管理は大きなウェイトを占めていますから、今後も写真管理のデジタル化による生産性の向上を求める動きは加速していくでしょう。
現場ポケットで写真管理を効率化

建設現場で働く多くの方に高い評価を得ているアプリ、現場ポケットの代表的な機能の一つが「アルバム機能」です。写真管理を無料トークアプリで行い、工事写真をトークに投稿すると自動でアルバムに保存していきます。
クラウド対応なので、すべての工事関係者がアプリでもPCでも、工事写真情報をリアルタイムで共有できます。
扱う工事写真の点数が多くアルバム整理が大変だった方、情報共有のタイムラグに不便を感じていた方などの業務をスマートに効率化することが可能です。
独自のタグ付き機能を使えば、工種などのキーワードを工事写真にタグ付けするとアプリが自動的にタグで写真整理してくれるので、関連キーワードを入力するだけで写真検索できるようになります。
まとめ
ここまで、配筋検査の写真撮影について、以下の内容で解説してきました。
- ・配筋検査の概要と必要性
- ・配筋検査の写真撮影に求められる要件
- ・配筋検査の写真撮影の流れと撮影のコツ
- ・写真撮影時のよくある失敗と対策
- ・現場ポケットのアルバム機能の紹介
配筋検査は、建築物や構造物の安全性や耐久性を支える重要な検査です。
建設会社は、配筋検査を写真撮影して記録に残すことで、適正な施工と要求された基準の品質を証明できることになります。そのためには、正確でわかりやすい写真を提出することが求められます。
しかし、工事写真整理には多くの手間と時間が必要です。現場ポケットのような現場管理に特化したアプリの活用をおすすめします。