「現場ごとの人件費がはっきりしない」「情報がバラバラで管理しきれない」
──多くの現場が抱えるこうした課題は、管理者に大きな負担とストレスをもたらします。
今回ご紹介するのは、まさにそのような状況に直面しながらも、現場管理アプリ「現場ポケット」の導入によって変革の途上にある、株式会社創和エアテクノの事例です。
数あるツールの中から「現場ポケット」を選んだ決め手や、導入後に見えてきた意外な効果、そして今後の期待について、率直なお考えをうかがいました。
「見えないコスト」が招く現場の混乱と管理者の負担
──現場ポケット導入前の課題を教えてください。

齋藤さん:やはり一番の課題は、「現場ごとの人件費を正確に把握すること」でした。
勤怠管理自体は別のソフトで行っていましたが、それは会社全体の勤怠状況を確認するためのものでした。
個々の従業員の月ごと、日ごとの勤怠は把握できても、「1日のうち、どの現場で何時間作業したのか」あるいは「1週間のうち、どの現場で何日作業したのか」といった、現場単位の詳細な勤務状況までは一切見ることができませんでした。
さらに、日々現場で発生する写真データや工程の進捗、そして協力会社様との日程調整といった、多岐にわたる情報の管理にも頭を悩ませていました。
こうした情報はそれぞれ別々に管理されていたため、全体をどう統合し、どのような形で管理すべきか、まさに途方に暮れていたというのが正直なところです。
──そのような状況で斎藤様のご負担も増えていたのでしょうか。

齋藤さん:はい、おっしゃるとおり、管理にかかる時間は大幅に増えていました。
私が現場への人員配置を担当していたため、その計算や調整に費やす実務的な時間は確実に増えていました。
また、日程調整や協力会社様との連携においても、さまざまな問題が生じていました。連絡を取り合っているつもりでも、他の担当者と情報が重複してしまったり、肝心な調整が抜け落ちていたりして、結果的に2〜3日も日程にズレが生じてしまうことも珍しくありませんでした。
そうした事態になると「この現場はどうするんだ?」「誰が担当するんだ?」「応援は必要ないのか?」といった、非常に切迫した状況が頻繁に発生し、そのたびに頭を抱えていました。
加えて、各現場の担当者自身が、自分の担当現場にどれだけの時間をかけているのかを正確に把握できていない点も課題でした。
私たちは社員に対して「あなたのコストはいくらだ」といった、突きつけるような言い方は極力したくありません。各自が自ら考え、コスト意識を持って業務に取り組んでくれることを期待していました。
しかし実際には、そこまで意識が行き届いていないケースも多く、結果として、私一人がこの状況に気を揉み、ストレスを抱えているような状態でした。
現場ポケット導入の決め手は「総合的なバランス」
──現場ポケットはどこで知りましたか。

齋藤さん:はい、インターネットで見つけました。実は当初、別の現場管理アプリの導入を検討していました。試しにそのアプリを使わせてもらう機会があり、実際に触ってみたのですが、どうにも「何か違うな」という印象が拭えませんでした。
具体的にどこが合わなかったのか、今では細かい部分までは覚えていませんが、「自分たちが本当に求めているものとは違う」と感じたのははっきり覚えています。
そこで、「他に良いものはないか」と、改めて探し直した記憶があります。そうして検索を続けた結果、ようやく「現場ポケット」にたどり着きました。
弊社からお問い合わせをさせていただき、「これはこんなこともできるのか」「あれもできるのか」といった具合に、最初は機能について細かく質問させていただいたと記憶しています。
──他にも複数のツールがある中で、現場ポケットの導入を決めた理由について教えてください。

齋藤さん:一番の決め手は、「総合的なバランスの良さ」です。
世の中には、特定の機能に特化し、細部まで徹底的に効率化を図るような、非常に専門性の高いアプリも多くあります。そういったツールも検討しましたが、私たちが求めていたのは、そうした「尖った」ツールではありませんでした。
日報作成も、写真管理も、工程管理も、一つのソフトで一通りできる。そうした多岐にわたる機能がバランス良く備わっているツールを探していました。
複数のツールを組み合わせてしまうと、最終的にはコストも管理の手間も増えてしまいます。特化型ツールの中には、「日報管理ツールとしては本当に素晴らしい」と感じるものもありました。
しかし、その場合は工程管理用に別のツールが必要になり、結局は二本立ての運用になってしまいます。それではコストパフォーマンスが良いとは言えません。
実際にトライアルをしてみた結果、「現場ポケット」で補いきれない部分については、自社のルールや管理方法を工夫することで十分対応できると分かりました。
「これ一本で業務を完結できる」と納得できたことが、導入を決めた最大の理由です。
現場ポケットがもたらした「見えない改善」と「次への布石」
──現場ポケットを導入した効果を教えてください。

齋藤さん:正直なところ、今期の決算だけを切り取って見ると、はっきりとしたプラスの数字が出ているとはまだ言えません。
もちろんそれは、「導入したのに役に立たなかった」という意味では決してありません。
現場ごとの収支にはさまざまな要因が絡むため、会社全体としての収益をプラスに転じさせるには、もう少し時間がかかるという側面があります。
ただ、最も重要なのは、その「過程」だと考えています。「現場ポケット」を導入したことで、各担当者がどの現場に何時間滞在し、どれだけの時間を費やしたのか、そしてその業務がどれだけ意義のある内容だったのか、といった点を非常に振り返りやすくなりました。
例えば、当社の決算時期である8月末に「今年は収益がマイナスだった」という結果が出た際にも、どこがマイナス要因だったのか、何が原因だったのかを振り返ることが、驚くほどやりやすくなりました。
日報を通じて、各自がどのような業務にどれだけの時間をかけたのかを具体的に入力できるようになり、それが月単位や日単位で金額として算出されるようになりました。
その結果、収益がマイナスだったときの振り返りにおいても、管理側が「これはうまくいっているのではないか」「そうではないのではないか」と感覚だけで判断するのではなく、「あなたの日報を見る限り、この業務にこれだけの時間をかけてしまうと、収益的にはマイナスになるのは当然です」と、具体的な物差しをもって分析できるようになりました。
ですから、現時点では数値として明確な「プラス」が見えているわけではありませんが、全体としては、従業員一人ひとりの意識向上につながっていると強く感じています。
数字だけでは測りきれない部分もありますが、確かな手応えを日々感じています。
──実際に現場の状態が見える化したことで、次のアクションが立てやすくなったでしょうか。

齋藤さん:はい、今後の予定を立てる際や、見積もり段階で人件費の配分を考える際に、大きな影響が出ています。
これまでは正直なところ、感覚的な判断と過去の経験則を掛け合わせる形で、人件費の予算を組んでいる部分がありました。
しかし、この1年間で「現場ポケット」を通じて実績データがしっかり蓄積されてきたことで、改善策や対応策を検討する際の根拠が、以前とは比べものにならないほど明確になりました。これは間違いなく、「導入して本当に良かった」と実感している点です。
導入後の意外な収穫?「見えなかった従業員の努力」が可視化された瞬間
──導入後に嬉しかったエピソードはありましたか。

齋藤さん:全員に当てはまる話ではないので一概には言えませんが、少なくとも1人、2人、あるいはそれ以上の従業員が、たとえ30分や1時間の作業であっても、きちんと現場名と自分の作業内容を「現場ポケット」に入力しようと努力してくれている。
その姿が目に見えて分かるようになったことは、大きな収穫でした。新しいツールを導入すると、「面倒くさい」と感じる人がいるのは当然です。
それでも、「これはエビデンスにもなるのだから、自分なりにきちんとやろう」と真摯に取り組んでくれる人もいます。
そうした「これまで気づくことのできなかった従業員の努力」に光が当たるようになったことは、私にとって本当に嬉しい出来事でした。
きっと以前から、彼らは彼らなりに工夫して業務に取り組んでくれていたのだと思います。ただ、私たち管理側には、その「結果」しか見えていませんでした。
そのため、時には「いったい何をやっているんだ」と、厳しい言葉をかけてしまっていたかもしれません。
しかし、「現場ポケット」を通じて、たとえ30分でも1時間でも、自分の作業をきちんと割り振り、内容を明確にし、少しでも無駄を省こうと努力している姿勢を、具体的に把握できるようになりました。これは組織にとって非常に大きなプラスだと感じています。
──プロセスが可視化できるようになったということですね。

齋藤さん:はい、おっしゃるとおり、その点は非常に大きいと思います。
それから、「嬉しい」という表現が適切かどうかは分かりませんが、本当に現場管理が格段に楽になったという実感があります。打ち合わせや会話がスムーズに進み、準備も滞りなく進み、書類作成もスムーズに行えるようになりました。
「これだ」という目立った数値的な成果ではないかもしれませんが、何事もなく現場が滞りなく回っている状態こそが、私たちにとって一番ありがたいことなのかもしれません。
「現場ポケット」のようなツールは、特定の誰かが劇的に活躍する場面ばかりを生み出すものではありません。
むしろ、組織全体がスムーズに業務を回せるようになることのほうが、私たちにとっては計り知れないメリットです。
特定の機能に特化したツールとは異なり、社員全員の現場管理、ひいては会社の運営の中に自然と溶け込み、派手さこそありませんが、今ではなくてはならない存在になっている。
それこそが、何より大きな成果だと考えています。
──最後に現場ポケットに一言お願いします。
齋藤さん:現状には大変満足しています。
ただ、「これでベストか」と問われれば、正直なところ、まだベストではないと感じています。もっと改善してほしい点や、「こうなったらもっと良いのに」と思う点は、まだたくさんあります。
ですから、これからも一緒に、もっと上を目指していけるのではないでしょうか。現行のシステムを導入したことで、業務が格段に楽になった部分や、これまで見えなかったところが可視化されたという点については、強く実感しています。
その意味では大いに満足していますし、今後の改善とさらなる進化に、心から期待しています。